幼少期から熱血ドラマオタクというエッセイスト、編集者の小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る“脇役=バイプレイヤー”にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第107回は俳優の高杉真宙(たかすぎ・まひろ)さんについて。先日、彼が出演している『わたしのお嫁くん』(フジテレビ系列)で、主演の波瑠さんとキスシーンがありました。その瞬間、彼の耳が真っ赤になっていたことを私も、女性視聴者も見逃していませんでした。このニュースを見たときは、有益な情報を共有したようで嬉しかったです。でもきっと彼は美青年のヴェールを纏いながら、意志の強い人のはず。そんな期待を込めながら、書いていこうと思います。

  • 高杉真宙

先輩と山本くんの恋が実ると信じて

まずは最終章に突入して、俄然、女性視聴者側が盛り上がってきた『わたしのお嫁くん』のあらすじを。

家事がまったくできない究極のズボラ・速水穂香(波瑠)に恋していたのは、6歳年下の後輩、山本知博(高杉)。恋心を隠して、家事全般を山本くんが請け負うということで、同居生活がスタートする。そしてついに速水先輩の気持ちも、山本くんへ……! 二人はガッチリと結ばれるのだろうか?

このドラマの一報を聞いたときは、タイトルだけで悶絶をした。高杉真宙が嫁に来てくれるなんて、生涯の徳をすべて使い果たしたようではないかと。

そしてドラマは終盤へ。純度100%のような山本くんが自分のために家事をしてくれて、速水先輩は性別問わずモッテモテ。けして出力が強いわけではないのに、雰囲気だけで周囲をいつの間にか虜にしてしまう先輩。ドラマでも時折「私、こんなこと思っていないのに、なんで言っちゃうのかなあ」というムードを、好タイミングで押し出してくる。どこからどう切っても女性の敵でありながら、波瑠さんが演じると気にならなくなるのは、演技力なのか、魔法なのか。

とにもかくにも。年下男性好きとしては、彼氏に敬語を使われながら、時々タメ語が混ざってくるのはたまらん、とドラマを最後まで見守るのである。

ここ数年間の快進撃の向こうに見えた、九州の香り

実は数年前に彼をインタビューしたことがある。酒も飲まない、漫画しか趣味がないとあの顔で言われても、こちらとしては疑うよりほかなかった。そんなことを言いながら、めくるめく夜を謳歌している芸能人をたくさん知っている。

と、時間はやや過ぎて、彼が所属事務所を独立するとニュースで知る。(事実はいざ知らず)それも朝ドラ出演を蹴ってまでの決断というから、相当の覚悟があったはずだ。ふと、インタビュー時に地元の九州の話をしたことを思い出した。熱かった印象がある。天使のような容姿だけど、九州男児。線が細いと見せかけて、実は骨密度はいつも100%、普通の人よりも三倍くらい背骨が太い気がする。

その(勝手に)骨太さを持って、高杉さんの快進撃は続いている。『婚姻届に判を捺しただけですが』(TBS系 2021年)では、ヒロインと恋愛関係を匂わせる、牧原唯斗役。私が一番ハマったのは『おいハンサム!!』(フジテレビ・東海テレビ系 2022年)の、ひねくれたエリートサラリーマン・大倉学役。彼が新境地を開いたように見えた。その後『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系 2022年)の医師役で感動を振りまき、朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK総合 2022年)へ。1年間の出演歴だけを見ても、もう完璧だ。

と、一連を見てふと気づいたことがある。最近の高杉さん、九州に関わる演出が多くないだろうか。朝ドラの刈谷先輩役は、九州出身の気骨な青年だった。そして『わたしのお嫁くん』では、福岡支店から転勤をしてきた古賀一織(中村蒼)が、どうにも違和感のある福岡弁を披露している。第7話で山本くんは福岡へ出張に出掛けていた。なんだか最近の彼の周囲にはいつも九州の香りが漂っている。そんな些細な発見を終えて、本日の執筆終了。