幼少期から熱血ドラマオタクというエッセイスト、編集者の小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る“脇役=バイプレイヤー”にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。
第106回は女優の八木莉可子(やぎ・りかこ)さんについて。あくまで私の見地でありますが、太陽の周期のようなペースで「おっ……!」と息を飲む女優さんが登場して参ります。少し前ですと清原果那さんがそれ、でした。あまり抑揚のない、なだらかそうな性格、長くて艶のある髪の毛、凛々しい眉。そして見た目とは裏腹に持ち合わせている静かな強さ。最近、そんな人を見かけないと思っていたら、NHKの夜ドラであらためて発見したのです。八木莉可子さん、全身に透明感を背負っている……?
『First Love 初恋』での鮮烈な存在感も記憶に新しく
まずは今、八木さんが出演されている『おとなりに銀河』(NHK総合)のあらすじを。
売れない、と言われている漫画家・久我一郎(佐野勇斗)の前にある日突然現れたのは、五色しおり(八木莉可子)。出版社からアシスタントだと紹介されたものの、島の王族だと名乗るしおり。どうにも普通の女性の香りがしてこない。さらに一郎と触れただけで婚姻関係が結ばれたという。幼い弟、妹と一緒に彼らの共同生活、そして交際が始まった。
寝る前に見るにがちょうどいい温度のファンタジーと、恋愛要素が詰まった『おとなりに銀河』。一郎もしおりも恋愛に関しては経験もなく、初心者同士である。現在、二人の関係はキスまで進展。ここまでたどり着くにも、まどろっこしく、見ながらジリジリしているのが楽しかった。初恋とはなんと甘酸っぱいものよ……と思うと、八木さんの(勝手に)代表作とも言える『First Love 初恋』(Netflix配信中)の野口也英役を思い出してしまう。満島ひかりさんが大人になってから、八木さんは中学生から大学生までを演じていた。それまでモデルのイメージがあったけれど、彼女のパーソナルな部分までは知識になく「うわ~、透明感、来た……!」とワクワクしたことを覚えている。
今、初恋に思い惑う少女が日本一フィットする
八木さんには瑞々しい役がよく似合う。
前述の也英も北海道に住む、恋を知らない美しい少女だった。並木晴道(木戸大聖)と出会い、新しい愛を知って少しずつ心が満たれていく。ゆっくりと進む二人の描写に心をすっかりと掴まれてしまい、この作品は一気に2回も見て大号泣したことを覚えている。
朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK総合)の後半で登場した、秋月史子役も歌人の梅津貴司(赤楚衛二)もそうだった。貴司を歌人として崇拝していただけのつもりが、そばにいるうちに恋心を抱いていく。計らずも恋敵になってしまった岩倉舞(福原遥)にも、つい牽制するような態度を取ってしまう。これは意地悪ではなく、愛情が知らず知らずのうちに呼び寄せてしまった行動。結果的に秋月さんは恋の当て馬となってしまったけれど「これぞ初恋の醍醐味」と作品を見ながら、秋月さんの行く末を祈った。
そして放送中の『おとなりに銀河』のしおり役で魅せる、恋心。こうして並べてみると、見ているだけでうっとりとしてしまう。ふと気づくと、彼女は新人と呼ばれるキャリアでありながら、NHKでの露出が多い。これ以外にも大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022年)や、NHK大津放送局での主演作もあるらしい。放送局では優等生のような存在の放送局。ここに愛されるなんて、これはひょっとして未来の朝ドラ主演女優デビューも遠くない将来なのかもしれない。