幼少期から熱血ドラマオタクというライター、エッセイストの小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る“脇役=バイプレイヤー”にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第101回はタレントのアンミカさんについて。連載100回を終えて、新たなスタートになる101回目の人選は非常に考えあぐねた。誰だろう……そこで浮かんだのがアンミカさんである。最近、疲れると彼女のインスタを見て、エネルギー補給をするのが日課になった。あのアグレッシブの塊のようなアンミカさんを見ていると、些細なことで、疲れたなんだと言っている自分がバカらしくなってくる。そこには一体どんなパワーが潜んでいるのか。私の記憶を回顧することにした。

今クール、ドラマに2作出演の快挙

アンミカ

最近、アンミカさんはこの冬、ついにテレビドラマへ進出した。『ワタシってサバサバしてるから』(NHK総合)ではストーリーテーラーとして、レディ版・さかなクンのようなコスチュームで登場している。『三千円の使いかた』(東海テレビ・フジテレビ系)では、主人公が貯蓄するために通い出した、節約セミナーの講師兼ファイナンシャルプランナー。どちらも普段私たちがテレビで見ている彼女のキャラクターそのものが、役に封じ込められているようだ。

私が彼女の存在をテレビで認識したのが数年前のことだった。

「つき合っていた彼がスパイだったんですよ!」

と饒舌にしゃべっていた。素っ頓狂な話の内容もさることながら、やはりパフォーマンスは現在と変わらない。モデルらしく凛とした姿勢で、口角をキュッとあげて、表情豊かに話す。他にも実家は兄弟が多く、経済的に恵まれない状況で育った背景と、パリコレについて。この元カレ、実家、モデル業の3本柱が私の認識したアンミカさん、ファースト鉄板ネタだった。各所で話していた様子を、幾度となくテレビで見かけたけれど、何度聞いても面白かった。

「黒は300色あるんやで」巧みな名言使いで、爪痕もきっちり残す

続く彼女の鉄板ネタというか、お家芸というか。アンミカさんの存在が世に知られたのはテレビショッピングでの敏腕販売員ぶりだった。人気のバラエティ番組でもなく、地上波でもないテレビショッピングでブレイクした人なんて、ジャパネットの高田社長以外、私は知らない。彼女は商品を勧める際にも笑顔を絶やさず、関西弁で突っ込み、いつの間にか視聴者に画面QRコードを読み込ませている。芸能人ではなく、営業マンやBA、生命保険の外交員をしてトップセールスを記録するはずだ。このセールストークぶりによって、彼女の鉄板ネタは更新された。「ああ、テレビショッピングのあの人」そんな認知をされるようになっていた。

不思議なのはこの時期になると、あの濃いキャラクターも見た目も、全く苦にならなくなってきていた。インパクトはなく「馴染み」。しばらく見ないと寂しくなってしまう、そんな気持ち。ここに変換させているのも妙技だ。

そんな逸材をテレビ局が見逃すはずもなく、現在の人気ぶりにつながっている。しかも出演するだけではなく「黒は300色あるんやで」と名言を残す。日本のテレビ番組は彼女の爪痕だらけである。鉄板ネタはアップデートもされているけれど、同時に増量もしている。

活躍がめざましいことは知っていたけれど、舌を巻いたのはご主人と長期バカンスを取られていた年末年始。おそらく二週間近く、仕事からは離れていたはずなのにアンミカさんは毎日、出演告知があった。日本を離れる前にしこたま働いて、自分の存在がテレビから消えないようにしていたのだと納得。見事な戦略である。なぜ彼女に視聴者やメディアが惹かれるかと考えると、やっぱりあのキラースマイルが功を成してような気がしてならない。以前、経営コンサルタントの方に「成功している経営者ほどずっと笑顔だ」と聞いたことがあるけれど、まさにそれ。ホント、天晴れ。

そして2023年は5月公開予定の映画『おとななじみ』も出演しているアンミカさん。今年の船出も絶好調らしい。次はどんな鉄板ネタが追加されるのか。