ネット社会の現代では、グルメのブームに火が付くのも"SNSがきっかけ"ということも多い。ここでは、流行に乗り遅れないために知っておきたいSNSで話題の"バズるグルメ"をご紹介。トレンドに敏感なクライアントや同僚たちの前で恥をかかないように、しっかり話題のグルメを押さえておこう。第8回は「#ロールアイス」。
タイ屋台発祥、NYでブーム、そして日本へ
数年前からInstagramで「#ロールアイス」というハッシュタグを付けた投稿が増えており、2019年8月末現在で約8.6万投稿に上る。
ロールアイスとは、マイナス10度以下の冷えたプレート上に、アイスクリームのベースとなるクリームを乗せて、"ミックスイン"と呼ばれるクッキーやフルーツを混ぜ、固まったところをヘラでくるくると巻いてロール状にしたもの。さらにそこへトッピングやソースをかけて食べるボリュームたっぷりのスイーツだ。もともとはタイの屋台発祥で、ニューヨークでブームになり、いまでは日本をはじめとするアジア各国やヨーロッパにも人気が広がっている。
店によってメニューは違うが、アイスクリームベースやミックスイン、トッピングなどは自分で選んで好みの味にカスタマイズできるのが特徴。一から選ぶのは悩んでしまうという人は、あらかじめおすすめが組み合わせられたメニューもあるので、それを頼めば簡単だ。
Instagramの投稿写真はカラフルな商品写真が大半で、「とっても可愛い見た目」「可愛さがたまらない」などのコメントと共に投稿されている。味に関しても「めちゃ美味しかった」「なめらか食感」など好印象を抱いている様子。アイスクリームはロール状にすることで花束のようなかわいい見た目になるのと同時に、通常の塊のアイスクリームと比べて薄くて食感も軽く、食べやすいと感じる人が多いようだ。
さらに特徴的なのが、写真と動画をセットで投稿している人が多いこと。写真は購入した商品写真、動画は目の前で店のスタッフが作る様子を撮影したもの。Instagramの投稿でも「作っているところが見られて楽しかった」「神業過ぎて見入ってしまった」といった声が目立ち、エンターテインメント感覚で楽しまれているようだ。
日本のロールアイスブームは原宿からスタート
日本でのブームの先駆けとなったのは、「ROLL ICE CREAM FACTORY(ロールアイスクリームファクトリー)」。日本初のロールアイス専門店として2017年6月に東京・原宿にオープンした。
「ロールアイス専門店をオープンさせようと思ったのは、ニューヨーカーのInstagramでロールアイスを知ったのがきっかけです。目の前でアイスクリームが作られていく工程を見られるというのは新しいし、とても楽しくて、エンターテインメント性の強さに魅せられていきました」とROLL ICE CREAM FACTORY代表の浅野まりさん。やると決めてから出店までのスピードは非常に早く、2017年4月にニューヨークを視察し、5月には会社を設立、6月には店舗をオープンさせた。
オープン前から求人広告をきっかけに「ついに日本にロールアイスの店ができるらしい」と話題になった。オープン当日から行列ができ、昨年夏には最長7時間の行列ができたこともある。最近は店舗数が増えたこともあり、オープン当初より行列はゆるやかであるものの、土日は2~3時間待ちになることが多い。また未出店エリアの百貨店催事となると話は別で、今年も5時間待ちが発生した催事もあるそうだ。
ここまで人気の理由はどこにあるのか。「一番は"動画映え"だと思います。ほとんどの方が動画を撮られます。またカスタマイズでアイスの見た目をデザインすることも楽しんでもらえる要素です」と浅野さん。
クッキーやフルーツなどのトッピングも含めるとかなりのボリュームに見えるが、甘すぎず濃厚すぎない味つけにして、最後まで飽きずに食べられるように工夫をしているそうだ。
現在全国に8店舗を展開。原宿店は中高生やファミリーをメインに夜は若いカップルや外国人旅行者の姿も。7月には初の海外店として、台湾・台北にも店舗をオープン。また今年は6月1日を「ロールアイスクリームの日」として日本記念日協会へ申請して正式に認定もされるなど、ロールアイスの普及にも力を注いでいる。
沖縄では升に入った日本流ロールアイスも登場
「MANHATTANROLL ICE CREAM(マンハッタンロールアイスクリーム)」もInstagramの投稿が多いロールアイス専門店のひとつ。2017年8月に東京・原宿にオープンしたのを皮切りに、現在は全国に11店舗を展開、国内一の店舗数を誇る。
アイスクリームの味にもこだわり、一般的に使われている卵は不使用。牛乳・生クリーム・シロップを独自の配合で混ぜ合わせ、なめらかで濃厚ながら甘すぎない味わいを実現している。アイスクリームの乳脂肪分は一般的な10~15%に比べて高めの20%で、これにより濃厚なコクが増している。トッピングやアイスのベースには、冷凍ではなくフレッシュフルーツを使用しているそうだ。
2019年7月からは外国人観光客の多い沖縄2店舗にて、オリジナルの升入りの日本をイメージしたロールアイスメニューがお目見え。京都の老舗日本茶メーカー祇園辻利の抹茶を贅沢に使った「辻利抹茶ティラミス」と、ほうじ茶のアイスベースにわらび餅やあんこ、きな粉と黒蜜をかけた「ほうじ茶わらび餅」の2種類を提供している。
「お客様とのコミュニケーションを大切にしています。数分という短い時間ですが、楽しく会話をしたり、アイスに絵や文字を書いたり。そういった光景がSNSを通じて自然と拡散しているのが人気の理由かと思います」(マンハッタンロールPRの三上成文さん)。現在、全国各地への出展に向けて積極的に展開しており、年内も複数出店予定があるそうだ。
京都発のロールアイス専門店も
原宿でブームの兆しが見えた頃、同時期に京都でもロールアイス店がオープンしている。2017年8月に1号店をオープンさせた「ROLLY'S ROLL ICE CREAM KYOTO(ローリーズ ロール アイスクリーム 京都)」だ(※当初は「ICE ROLL FACTORY」の名前でスタート)。可愛いモノに敏感な京都の女の子が抱く「かわいい」イメージをコンセプトに、京都発ならではの上品で洗練された味わいを目指したという。
「味と見た目もさることながら、ひとつひとつお客様の目の前でアイスを作らせていただくライブ感も人気の理由のひとつかと思います。その時間をいかに楽しんでいただくかを常に考えております」と同店を運営するASPの奥山正人さん。やはりアイスを作る様子を動画に撮る人が多いそうで、"動画映え"はSNSでバズる重要な要素の一つといえそうだ。
カラフルな見た目が気分もアップさせてくれるロールアイス。Instagramの投稿がとくに多いのは今回紹介した3軒だが、最近はこれら以外にもロールアイスを提供する店が増えている。疲れて甘いものが食べたいとき、ほっと一息つくときのお供として候補に入れてみては。