ネット社会の現代では、グルメのブームに火が付くのも"SNSがきっかけ"ということも多い。ここでは、流行に乗り遅れないために知っておきたいSNSで話題の"バズるグルメ"をご紹介。トレンドに敏感なクライアントや同僚たちの前で恥をかかないように、しっかり話題のグルメを押さえておこう。第4回は「#パネチキン」。
チーズダッカルビの次の韓国グルメ「パネチキン」
2018年に大ブームとなった韓国グルメ「チーズタッカルビ」。人気はいまだ継続中だが、次なる韓国トレンドグルメとして、今じわじわ注目が集まっているのが「パネチキン」だ。パネチキンは、今年1月にぐるなびによる「この春注目の2019年トレンドメニュー」にも選ばれている。ぐるなびはパネチキンを選んだ背景として、SNS映えするチーズ料理の人気が定着したこと、栄養面から健康志向の人にもチーズが好まれるようになったことを挙げている。Instagramで「#パネチキン」というハッシュタグを付けた投稿は、2019年7月現在で約1.2万件に上っている。
「パネチキン」とは、くりぬいたバゲットを器にして中に熱々のチーズをたっぷり入れ、チキンやパンを付けて食べる韓国料理だ。
Instagramのパネチキンの投稿の多くは、飲食店で提供している料理の写真となっている。店によってレシピや盛り付けに差はあるが、基本的にはパンの器にチーズが入っていて、トマトクリームソースに浸ったチキンやパンが添えられている。チキンは骨なしのフライドチキンや唐揚げだ。また、一般的に韓国料理というと辛いイメージがあるが、パネチキンは辛さが苦手な人でも食べやすい。店によっては肉の下味にコチュジャン(唐辛子味噌)を使ったり、トマトクリームソースに辛みを加えたりしているが、チーズのまろやかさであまり辛さは気にならないようだ。
投稿されている写真は、フォークにチキンを刺してチーズを持ち上げるなどして、とろ~りとチーズが伸びた様子を強調したものがほとんど。写真以外に動画投稿が多いのも特徴だ。見ているだけで食欲を誘うフォトジェニックかつ、"ムービージェニック"な料理なのだ。
注文する人の多くはとろとろのチーズに惹かれているようで、投稿には「チーズ好きには堪らない」「唐揚げとチーズ合わせたら最強」といったチーズに関する感想が目立つ。また、チーズゆえに満腹感もしっかり得られるようで、「思った以上にボリューミー」という声も。
このほか投稿数は多くないが、パネチキンのレシピを紹介する投稿や実際に自宅で作った人の投稿もあった。
本場・韓国ではパネパスタも人気
"パネ"は韓国語でバゲットという意味だ。韓国語(ハングル文字)表記で「パネ」を検索すると約13.9万投稿が見つかる。しかし、投稿はパネチキンの写真ばかりではない。とくに目に付くのがバゲットの中にクリームパスタを入れたもの。調べてみると、韓国ではチキンだけでなく、バゲットにパスタを入れた「パネパスタ」も人気があるようだ。なお、「パネチキン」の韓国語で検索をすると約1.3万投稿で、日本とほぼ同じ数だった。
投稿数が多い渋谷のおしゃれな肉バル
パネチキンは韓国料理店以外にもカフェやバル、居酒屋など店のジャンルを問わず提供されている。むしろInstagramに投稿されているのは韓国料理店以外がほとんどだ。
なかでもInstagram投稿の位置情報で圧倒的に多いのが「Meatbank」。正式名称は、「CHEESE & MEAT BANK(チーズ&ミートバンク)」。東京・渋谷にある肉料理がウリの肉バルである。
同店では2019年2月から「パネチキン」を提供している。導入の背景としては、すでにSNSで検索が急上昇していたことや2019年春のトレンドフードになったことなどに加えて、「チーズと肉という当社の業態とマッチし、渋谷という立地からニーズもあると考えました」と同店を運営するDREAM ON広報の戸塚慈斗さんは説明する。
チーズが滝のようにとろ~りと流れる様子は、加熱すると糸を引いたように伸びるモッツァレラチーズを使用することで実現。辛味を加えたトマトクリームベースのソースがまろやかなモッツァレラチーズとよく合う。サクッと揚げた味つけチキンは、しょうが・にんにくの風味が効いていて、クセになる味わいだ。
パネチキンへの反響は大きく、「お客様がSNSに投稿し、それを見た方がまた来てくださるという流れがあります。人気は高く、一番売れている商品です」と戸塚さん。
客層は20代前半の女性が一番多いが、テレビで紹介されたこともあり、全体としては10~50代と幅広い。実際Instagramに「テレビで見て食べたくなって」と投稿している人もいた。
名古屋では北海道名物ザンギを使ったパネチキンも
パネチキン人気は全国に広がっている。愛知・名古屋にある北海道バル「ほろほろ」では、2018年4月に店舗をリニューアルして以降、「壺漬けザンギのパネチキン」をメニューにラインアップした。ちなみにザンギとは、北海道での鶏の唐揚げの呼び名だ。同店では北海道産の日高昆布醤油を使用してしっかり漬け込み、下味をつけたジューシーな唐揚げを使用。チーズはモッツァレラチーズを中心に数種をブレンドしており、甘みと酸味のバランスがよいトマトソースとも好相性だ。
提供開始当時はまだ今ほどパネチキンは注目されていなかったが、「お客様に楽しんでいただけるようなムービージェニックな商品を考えていた際に、当時、韓国で話題になっていたパネチキンを知りました。北海道はチーズも有名ですし、ザンギと呼ばれる唐揚げもあります。北海道バルという業態とパネチキンの親和性も高く、看板商品として取り入れやすいと感じました」と同店を運営するジェイグループホールディングス広報PR課の水野香織さんは話す。
この店のパネチキンも、やはりSNSでの口コミが人気を後押ししている。「お客様にInstagramにたくさん投稿していただいたおかげで、連日多くのお客様がパネチキンを目当てにご来店くださっています」と水野さん。オープン当初は若い女性が中心だったが、いまでは客層も広がりをみせているという。ちなみに店の公式Instagramアカウントもあり、お客さんが投稿したパネチキンの写真をリポスト(シェア)するなど、SNSの活用に積極的だ。
パネチキンというとトマトクリームソースに浸かっているのが一般的だが、同店では近日中にホワイトソースとデミグラスソースのパネチキンも提供を開始するとのこと。ひと味違うパネチキンとして人気を集めそうだ。
SNS映え抜群で、まさにバズるべくしてバズっているパネチキン。提供店はいまなお増えているので、ブームはしばらく続きそうだ。