ネット社会の現代では、グルメのブームに火が付くのも"SNSがきっかけ"ということも多い。ここでは、流行に乗り遅れないために知っておきたいSNSで話題の"バズるグルメ"をご紹介。トレンドに敏感なクライアントや同僚たちの前で恥をかかないように、しっかり話題のグルメを押さえておこう。第35回は「#和栗モンブラン」。
こだわりの和栗モンブランが続々
秋のスイーツの代表格であるモンブランに、和栗を使ったものが増えている。スイーツ店やカフェのメニューに見かけるほか、和栗モンブランの専門店もいくつか登場している。
洋菓子であるモンブランには、以前はフランス産のマロンペーストがよく使われていた。和栗が使われることもあったが、甘露煮から作ることが多く、ペーストは黄色だった。甘露煮をくちなしで黄色く染めるためだ。
一方、最近増えている和栗モンブランは、蒸し栗や焼き栗から作る茶色いペーストのもの。一般的に和栗は味や香りが繊細だといわれ、フランス産やイタリア産の洋栗に比べると大粒で水分が多い。
「#和栗のモンブラン」のタグを付けたInstagram投稿は約2.5万件、「#和栗モンブラン」では約1.1万件見つかる(2020年10月下旬時点)。ひとくちに和栗モンブランといっても、味わいもペーストの絞り方もさまざま。店によって見た目も違うのでおもしろい。
国産和栗モンブラン専門店がオープン
今年7月に東京・自由が丘に第1号店をオープンした国産和栗モンブラン専門店「栗歩 -KURIHO-」。現在は東京や北陸など全国各地に8店舗を展開し、モンブランや和栗スイーツを提供している。
看板メニューは数量限定の「熟成無糖モンブラン」(冒頭の写真)。たっぷりかかったペーストには、石川県・松尾栗園の高級和栗"能登栗"を使用。中にはスポンジ、マロンクリーム、メレンゲ、生クリーム、クランチチョコが入っている。
能登栗を使ったペーストは無糖にも関わらず、糖度30度以上もある。シャインマスカットの糖度が20度前後だから、かなり甘いことがわかるだろう。収穫後にマイナス1度で45日間熟成させることで糖度を20度以上まで引き出し、さらにそれを加圧量や加熱温度等にこだわって焼くことで、糖分を一切加えることなく、糖度30度を超える焼き栗を完成させている。蒸し栗ではなく焼き栗をペーストにすることで、より香りが引き立つそうだ。
和栗の特製ペーストは、オーダーが入ってからシェフが客の目の前で絞り出す。食べる直前に作業することにより、和栗がもつ繊細な香りや甘さを引き立たせ、とろける食感を実現。同時に、その場でモンブランが完成するライブ感や見た目の楽しさも提供している。
国産和栗モンブランの専門店をオープンした理由を聞くと、「きっかけは農家さんとの出会いです。コロナ禍で催事やイベントが中止になり、栗を販売する機会が激減したと聞き、このおいしい栗を使ってなにかできないかと考えたとき、思いついたのがモンブランでした」と同店を運営するライデンペール広報の石橋卓也さんは話す。
同店ではほかにもブレンドの国産和栗を使った「国産和栗モンブラン」(1980円)や、今年10月に東京・広尾にオープンしたばかりの系列店「大人の栗歩 広尾店」では店舗限定のカシスリキュール入りのモンブラン「大人のモンブラン」などを提供。客層は20代後半から30代半ばを中心に、老若男女幅広い。Instagramでは「#栗歩」のタグが付いた投稿が約3,000件以上あり、「ライブ感のある演出が最高」「想像の3倍くらい大きかった」などのコメントがある。
1個3,300円、通常の約3倍の「スーパーモンブラン」
ホテルニューオータニの直営3ホテル(東京、幕張、大阪)では、館内の「パティスリーSATSUKI」にて、和栗を使った和スイーツ「スーパーモンブラン」を、来年1月末(予定)までの期間限定で販売中だ。今年で販売開始から13年目となるこちらのモンブランは、スイーツファンに秋の風物詩として知られる人気商品。2019年シーズンは約2万個を売り上げた。
1個3,300円(税・サ別)とスペシャル感のある価格だが、直径は約7cmで、通常のモンブランの約3倍の大きさがある。素材にも徹底的にこだわり、マロンペーストには"奇跡の栗"と称される「利平(りへい)」や"栗の王様"と呼ばれる「銀寄(ぎんよせ)」といった高級品種の中から、もっとも食べ頃を迎えているものをシェフパティシエが厳選。生クリームの使用量を最小限に抑え、和栗の味を引き立てている。
中に入っているのは、熊本県産和栗の甘露煮や黒蜜あんこ、豆乳ホワイトガナッシュなどの和素材。さらに今年はくず餅で知られる都内の老舗和菓子店「船橋屋」とのコラボにより、くず餅由来の乳酸菌と京都都宇治抹茶を合わせた"抹茶豆乳葛"や和三盆糖のキャラメルソースを追加。上質な和素材のおいしさを幾重にも重ねることで食べ応えのある1品に仕上げた。
「もともとは2004年の日本・フランス・イタリアのモンブランの味比べフェア『三栗物語』の中で第1弾を完成させ、2007年よりスーパーモンブランとして販売を開始しました。性別・年齢問わず、幅広い世代のお客さまにご好評いただいており、毎年楽しみにしてくださるリピーターの方も多いです」とニュー・オータニ マーケティング課の小布施萌さん。
Instagramでは「#スーパーモンブラン」のタグが付いた投稿が4,500件以上あり、「多層になっていて味の変化も楽しい」「毎年食べたくなる」などさまざまな感想が投稿されている。
通年食べられる!発売20年以上のロングセラー
都内に5店舗を展開する洋菓子店「パティスリー キハチ」の各店舗(※羽田空港第2ターミナル店をのぞく)では、通年楽しめる栗スイーツとして「和栗のモンブラン」を販売している。「#キハチ」のタグが付いたInstagram投稿は約1.6万件あるが、その中にはモンブランの写真も多い。
こちらは1990年代から販売されているロングセラー商品。当初は秋の新栗が出回る時期の限定商品だったが、「定番商品にしてほしい」という客の声が多かったことや、品質のよい和栗に出会えたことから通年販売になった。「モンブランはパティスリー キハチじゃないと」とこれを目当てにくるお客さんも多いそうだ。現在はパティスリー キハチのシグネチャースイーツ「キハチトライフルロール」に次ぐ人気商品になっている。
さっくりとしたアーモンドタルト台には、国産の蒸し栗をペーストにしたモンブランクリームがたっぷり。マロンペーストは裏漉しする際、摩擦熱をできる限り抑えながら粗い目に漉すことで風味をキープ。上にのっている大きな渋皮付甘露煮は産地で手剥きし茹で上げているそうで、食感もよく栗本来の味を楽しめる。渋皮付甘露煮もマロンペーストも和栗を使用。時期によってベストな産地のものを使っているという。
「発売当時は和栗といえば和菓子というのが一般のイメージで、モンブランクリームにはフランス産のマロンペーストが主流だったところ、『旬のよいものであれば和の素材も取り入れる』という、キハチらしい発想で生まれました。和栗本来の香りや風味、そして優しい甘みが感じられる、素材のおいしさを活かしたモンブランを作りたいという想いで開発しました」と同店を運営するサザビーリーグ アイビーカンパニー宣伝部 広報課の河田由美子さん。
秋スイーツの主役ともいえるモンブラン。各店こだわりの和栗の香りや味を存分に楽しんでみてはいかがだろうか。
※価格は特記がない限り税込