ネット社会の現代では、グルメのブームに火が付くのも"SNSがきっかけ"ということも多い。ここでは、流行に乗り遅れないために知っておきたいSNSで話題の"バズるグルメ"をご紹介。トレンドに敏感なクライアントや同僚たちの前で恥をかかないように、しっかり話題のグルメを押さえておこう。第31回は「#アマビエ」。

  • ころんとした形が可愛らしい、御菓子司まんさくの「≪疫病退散祈願≫アマビエ様まんじゅう」(写真:マイナビニュース)

    ころんとした形が可愛らしい、御菓子司まんさくの「≪疫病退散祈願≫アマビエ様まんじゅう」

新型コロナウイルスの感染拡大をうけて、「#stayhome」「#おうち時間」「#コロナに負けるな」といったワードとともに流行したのが「#アマビエ」のハッシュタグ。アマビエとは、江戸時代に肥後国(現在の熊本県)に現れたと伝えられる妖怪のこと。長い髪と鳥のようなくちばしを持ち、下半身は鱗に覆われ、三本足という見た目をしている。人間の前に現れ、「もし疫病が流行することがあれば、私の姿を描いた絵を人々に早々に見せよ」と言って海へ消えていったという話が伝えらえていることから、疫病退散のご利益があると信じられてきた。

新型コロナウイルスが早く終息するようにと、2020年2月下旬にとあるアカウントがTwitterでアマビエの絵を描いて投稿したことを発端に、アマビエはSNS上で大きなブームに。一般人をはじめ、著名な漫画家やイラストレーターなども続々とアマビエの絵を描いて投稿しており、現在までその流行が続いている。

2020年8月時点で「#アマビエ」のInstagram投稿数は約13.7万件。アマビエの絵を描いたり、工作をしたり、お菓子作りなどをした投稿には「#アマビエチャレンジ」のハッシュタグも付けられ、こちらは約3.8万件投稿されている。食品メーカーや飲食店も工夫を凝らしたさまざまなアマビエグルメを商品化しており、「#アマビエ和菓子」「#アマビエクッキー」など、関連するハッシュタグも多数。思わず手に取りたくなるような、可愛らしくデフォルメされたものが特に人気だ。

『もやしもん』作者とコラボで話題 サンクトガーレン「アマビエIPA」

数あるアマビエグルメの中でも、特にSNS上で反響の大きかったものの一つが、神奈川県厚木市にある地ビールメーカーのサンクトガーレンが2020年4月に発売した「アマビエIPA」。商品化のきっかけもSNSだ。

  • サンクトガーレンの「アマビエIPA」(330ml/460円・送料別)

「新型コロナウイルス終息の願いを込め、アマビエの絵を貼った架空の瓶ビールの写真をSNSにアップしたところ『本当に発売してほしい』という反響をいただきました」と、同社代表取締役の岩本伸久さんは話す。この反響をうけて、夏のビールイベント用に準備をしながらもイベント中止で行き場を失っていたビールを瓶に詰め、「アマビエIPA」が完成した。柑橘系アロマが特徴の7種類のホップを使用しており、柑橘のような爽やかな香りとジューシーな飲み口が味わえる。

「アマビエIPA」が話題になった大きな要因は、アマビエの顔のアップが描かれた瓶のラベル。イラストを手掛けたのは、『もやしもん』などの作品で知られる漫画家の石川雅之氏だ。「アマビエIPA」の趣旨に賛同した石川氏が特別に描き下ろしたイラストで、アマビエの両脇には『もやしもん』のキャラクターも登場。ビール好きだけでなく、作品のファンも「#アマビエIPA」のハッシュタグを付けて、瓶の写真をSNS上に投稿している。

同商品の販売利益は「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金」に寄付されており、「現在(2020年8月)までに8万本を超える出荷数です。7月末で寄付額は500万円になりました」(岩本さん)と、好調なようだ。新型コロナウイルス流行の終息まで販売を続けるといい、現在は関東圏を中心にスーパー、百貨店、酒販店などで取り扱いがあるほか、同社オンラインショップでも販売中。

思わず笑顔になる愛らしさ 御菓子司まんさく「≪疫病退散祈願≫アマビエ様まんじゅう」

練り切り、どら焼き、せんべいなど、和菓子はアマビエグルメの人気ジャンルの一つ。長野県飯田市にある和菓子屋の御菓子司まんさくでも、「≪疫病退散祈願≫アマビエ様まんじゅう」の販売を2020年4月から始め、「可愛いすぎる! 」とSNSで反響を呼んでいる。

  • 御菓子司まんさく「≪疫病退散祈願≫アマビエ様まんじゅう」(8個入り/3,000円税・送料込み)

同店の和菓子は動物やキャラクターをモチーフにした可愛らしいデザインが特徴で、「アマビエ様まんじゅう」も、アマビエの特徴をとらえつつ、やさしいパステルカラーとまんまるとした愛らしいフォルムに仕上がっている。パーツの色の組み合わせで2種類のアマビエを表現しており、中身はいずれも上品な甘さのこしあん。一つ一つ丁寧に手作りしているため、表情が少しずつ違うのも味わい深い。プレゼントとしても喜ばれそうだ。

SNS上でアマビエブームを知り、一日も早い新型コロナウイルスの終息を願って「アマビエ様まんじゅう」を制作したという同店。まんさく商品開発担当の宮澤友佳里さんは「動物やキャラクターをデフォルメすることはわりと得意ですので、アマビエ様の特徴を考慮し、全てのパーツのカラーの組み合わせをいろいろ考え、楽しくデザインしました」と話す。

反響も大きく、「見た目の可愛らしさだけではなく、味もおいしい」「皮はもちもち、餡は上品な甘さ」「可愛らしいアマビエ様に心が和みました」といった感想がSNSに投稿されている。「アマビエ様まんじゅう」は、まんさくのオンラインショップで購入可能。販売は期間限定だが、新型コロナウイルスの終息が見えるまでは販売を継続するという。「可愛らしい妖怪まんじゅうでほっこり和む、楽しいひと時をお届けできたら幸いです」(宮澤さん)

沖縄から疫病退散を願って BOULANGERIE CAFE Yamashita「アマビエパン」

形を自由に成型しやすいパンも、アマビエ作りには持って来いのグルメだ。なかでも、沖縄県うるま市にある平安座島(へんざじま)で開業10年目を迎えるBOULANGERIE CAFE Yamashita(ブロンジェリーカフェ・ヤマシタ)の「アマビエパン」は、沖縄の素材を活かして見事にアマビエを表現し、地元の人々を中心に人気を集めている。

  • BOULANGERIE CAFE Yamashitaの「アマビエパン」(8個入り/2,800円・送料別)

やさしい黄色の髪とくちばし、鮮やかな紫色の鱗が目を惹く「アマビエパン」は、緊急事態宣言により店舗を休業している最中に生まれた。同店代表の幸地美恵子さんが、SNSで話題になっているアマビエの画像を見た瞬間に、パンにするイメージが浮かんだという。

「髪の毛部分は立体感を出すために一本一本伸ばしていくので、結構時間がかかります。鱗の部分はどうやって鱗っぽく可愛らしくできるか、これまで3~4度改良を重ねました」(幸地さん)と、試行錯誤の末に完成した「アマビエパン」。髪の毛は地元うるま市伊計島の黄金芋、体の鱗は宮城島の紅芋を使用。着色料は使用せず、素材そのものの自然な色を活かしたという。SNS上では「食べるのがもったいない! 」と、そのキュートな見た目が評判を呼んでいる。中には沖縄の黒糖を使用したあんこが入っており、黄金芋・紅芋・あんこの3つの味が楽しめる点も好評だそうだ。

「アマビエは、『己が姿を絵に描いて見せよ! そうすれば良いことが起きる』と言って海に去ったそうです。良いこととは疫病退散だけではないはず。そう思い、コロナに限らずこのアマビエパンを食べて良いことが起きますようにと、お客様にそう伝えながらお渡ししています」と、アマビエパンに込めた思いを教えてくれた幸地さん。誰もが安心して暮らせる日が戻ってくるよう願いを込めて、沖縄で毎日パン作りを続けている。アマビエパンは、同店のオンラインショップからの注文で全国配送が可能だ。

新型コロナウイルスの感染拡大や外出自粛といった暗いニュースが続く中で、アマビエという小さな希望が大きなブームとなった。アマビエを描いたグルメの数々には、一日でも早い終息への願いと、少しでも明るい気分で乗り切ろうという人々の思いが込められている。困ったときの神頼みならぬ“妖怪頼み”で、疫病退散を願いながら個性豊かなアマビエグルメを味わってみては。

※価格は特記がない限り税別