ネット社会の現代では、グルメのブームに火が付くのも"SNSがきっかけ"ということも多い。ここでは、流行に乗り遅れないために知っておきたいSNSで話題の"バズるグルメ"をご紹介。トレンドに敏感なクライアントや同僚たちの前で恥をかかないように、しっかり話題のグルメを押さえておこう。第1回は「#シメパフェ」。
おしゃれな大人パフェの写真がズラリ、札幌発「#シメパフェ」
数年前からInstagramで「#シメパフェ」というハッシュタグをつけた投稿が増えている。2019年4月末時点で、約3.7万もの投稿があった。お酒のシメといえばラーメンというのが定番だったが、北海道・札幌では数年前から甘いパフェをシメに食べる「シメパフェ」がブームになっている。
「#シメパフェ」のタグでInstagramを検索すると、色とりどりのパフェの写真がズラリ! 投稿者の多くは女性のようだが、中には男性らしき人も。位置情報はほとんどが札幌のお店で、「#札幌カフェ」「#札幌」などのタグと一緒に投稿するも多いようだ。パフェは午後のティータイムなど昼間に食べられることが一般的だが、「シメパフェ」は夜に食べるため、「#夜パフェ」というタグもよく使われているようだ。
投稿されているのは、ほとんどが実際に注文したパフェの写真。「念願の……」といったコメントと一緒に投稿している人もいれば、「シメはやっぱりパフェ」とすでに何度もシメパフェを楽しんでいる様子の人も。また、本来はお酒を飲んだあとに楽しむのが順番だが、お目当ての店のパフェを確実に食べるためにオープン直後の夕方を狙って訪れている人もいるようだ。
どのパフェの写真もおいしそうで食欲をそそられるが、よく見ると単純な「#パフェ」のタグと少し雰囲気が違うことに気づく。「#パフェ」のタグで検索した投稿は、生クリームやフルーツをふんだんに使った女性好みのかわいいパフェが主流。一方、「#シメパフェ」のタグでは、そうしたかわいいパフェに混じって、ボリュームを控えた大人っぽいパフェの写真も目に付く。
パフェ本体だけでなく、店の雰囲気も違うようだ。位置情報を見ると何軒もお店があるが、一般的なカフェと違い、落ち着いた雰囲気のお店が多い。なかにはパフェ越しにカウンター内のお酒のボトルが見えるバーのような店もある。投稿は客として訪れた人のものだけでなく、店舗の新メニュー紹介もあるのだが、それらも「かわいい」より「おしゃれ」と表現したくなるクールな雰囲気の写真が多い。
男性もクールに楽しむ「#シメパフェ」とは
「どこかで飲んだ後、以前はシメでラーメンに行こうかという感じだったのが、シメでパフェを食べようかという感じになっていますね」と話すのは、「夜パフェ専門店 Parfaiteria PaL(パフェテリア パル)」マネージャーの山本裕美さん。「#シメパフェ」のタグ投稿の位置情報でよく出てくる店のひとつで、男性客も多く、 一人でフラリと訪れる男性も多いという。
札幌ではもともと飲んだあとにスイーツを楽しむ習慣のある人はいたが、同店がオープンした2015年8月にはまだシメパフェという言葉はなかったそう。ちょうど同じ年にシメにパフェを楽しめる店がいくつかオープンし、さらに「札幌パフェ推進委員会」も発足するなどして、少しずつブームが広がっていった。
「当店の場合は、お酒を飲みながらパフェを食べるという提供をイメージしています。生クリームたっぷりの甘いパフェのイメージではなく、お酒をきかせた大人なパフェです。パフェに合わせるお酒も充実しています」と山本さん。
「スイーツ男子」という言葉もあるが、甘いものが好きな男性は意外に多い。実は同店がオープンしたきっかけも、同店の運営会社GAKUの代表取締役・橋本学さんが、飲んだあとに甘いものを食べることが好きだったからなのだとか。
パフェが食べたくても、女性ばかりの昼間のカフェに男性一人で行くのはなんとなく恥ずかしいという人も多いはず。そんな男性にとって、シメパフェ専門店はまさに待望の存在だったことだろう。男性が一人でウイスキーとパフェを楽しむ姿なんて、なかなかおしゃれではないか。
増える専門店、札幌のご当地グルメとして楽しむ旅行者も増加
いまではシメパフェを楽しめる専門店もかなり増えている。スタイルやコンセプトは店によって違うが、営業時間が夕方から深夜で、お酒も一緒に味わえるところが多いのが特徴だ。ほかにもレストランがデザートメニューを「シメパフェ」として提供するなど、シメパフェという言葉はかなり浸透し、広く使われるようになっている。
現在ではGAKUも札幌で3軒の夜パフェ専門店を展開。2017年5月にオープンした「夜パフェ専門店 ななかま堂」では和テイストを意識したパフェを提供。2018年3月オープンの「夜パフェ専門店 Parfaiteria miL(パフェテリア ミル)」では選りすぐりのカカオを使ったパフェを提供している。どちらもInstagramの投稿にもよく登場する人気店だ。
マネージャーの山本さんによれば、早い時間帯は若者が多いが、2次会くらいの時間になると会社関係のグループなども目立ち、なかには50代くらいの男性もいるそうだ。また地元の人だけでなく、最近は旅行雑誌を片手にやってくる観光客も増えているとのこと。ちなみに札幌の旅行ガイドブックのグルメコーナーには、すでにシメカフェがしっかり紹介されており、ブームを超えてご当地グルメにまで進化していることがうかがえる。
札幌以外にも広がるシメパフェ文化
最近は都内のデパートの北海道物産展などでも、シメパフェの専門店が出店しており、札幌以外での知名度もアップしている。Instagramの投稿はまだ圧倒的に札幌が多いが、東京・大阪・名古屋などの投稿も増えてきている。
2017年10月に東京・渋谷にオープンした「夜パフェ専門店 Parfaiteria beL(パフェテリア ベル)」もGAKUが運営している。当初は一部の人が「札幌でシメパフェというものが流行している」ということを知っていた程度だが、徐々に認知が高まり、いまでは札幌同様のスタイルで楽しまれているという。ちなみに札幌は意外に終電あとが混むそうだ。札幌はコンパクトな街なのでタクシー代もそこまでかからないからだろう。
札幌発のブームだが、札幌以外にもシメパフェを楽しませてくれる店が増えていることから、人気は全国に広がりつつあり、これからますます増えていきそうな注目キーワードといえるだろう。夜中に甘いものを食べる心地よい罪悪感。たまには誘惑に負ける夜も楽しそうだ。