「ジャケット」「スラックス」「ベスト」の3アイテムで構成されたスーツ姿をスリーピースといいます。もともと正式なスーツ姿に近いため、ツーピースにくらべ、厳粛でエレガントな雰囲気に仕上がることが魅力です。私がスタイリングを行う、年収1千万を超える保険業界の営業マンたちは、特にスリーピースを好みます。

その存在感は、その他大勢と差別化するときに役立つわけですが、改めて着てみたとき「着こなしの正解が分からない!」という声を耳にします。

たとえば、「ベストから見えるネクタイはそのままでいいのか?」、「いちばん下のボタンは留めるのか?」など、いろいろな疑問が浮かぶのではないでしょうか。

ベストを上手に取り入れる人と残念に見えてしまう人の差について、『真似するだけで印象が劇的によくなる 38歳からのビジネスコーデ図鑑』(日本実業出版社)の著者がお伝えします。

  • スリーピースベストの知られざる着こなしポイント 出典:『真似するだけで印象が劇手によくなる38歳からのビジネスコーデ図鑑』(日本実業出版社)/イラスト片倉航(写真:マイナビニュース)

    スリーピースベストの知られざる着こなしポイント 出典:『真似するだけで印象が劇手によくなる38歳からのビジネスコーデ図鑑』(日本実業出版社)/イラスト片倉航

いちばん下のボタンで失敗する男性の共通点

ジャケットを羽織るとき、いちばん下のボタンは常に開けますよね。「アンボタンマナー」と呼ばれるこのルールはもはや常識ですが、ベスト着用時もこれは当てはまるのでしょうか。

結論からお伝えすると、アンボタンマナーは必ずしもベスト着用時に当てはまりません。その理由は、ジャケットのいちばん下ボタンの役割に関係しています。諸説ありますが、「フロントカット」と呼ばれるジャケット正面のカーブに位置するボタンは飾りとして付けられているからです。

つまり、閉めないことを前提に作られているため、ジャケットの場合、いちばん下のボタンを開けています。一方、ベストの場合、既製服で見掛ける多くは、ボタンの位置が直列で並んでいます。ごくたまに、斜めに切り込んだ箇所にボタンがありますが、この場合のみ、アンボタンマナーが適用されるということです。

  • 直列に並んだベストのボタン。フロントカットにボタンが掛かっていないベストはいちばん下のボタンも留めます

    直列に並んだベストのボタン。フロントカットにボタンが掛かっていないベストはいちばん下のボタンも留めます

ネクタイ剣先のチラ見せは恥ずかしかった?

一般的にネクタイを締めたとき、「ネクタイの剣先はベルト位置に納まることが正解だ」と言われています。ところが、いつもの感覚でネクタイを締めると、スリーピースのベストからネクタイの剣先がチラッと見える長さになります。実は、このチラ見せがNGなのです。

スリーピーススーツとしてベストを着用する場合、「ネクタイの剣先はスラックスの中にしまう」、もしくは、「短めにネクタイを締める」など工夫が必要です。そもそもスーツスラックスは英国ではトラウザーズと呼ばれ、昔は股上が深く、ネクタイの剣先位置も今より上に収まっていたそうです。

ところが、スーツスラックスのカジュアル化に伴い、ウエスト位置は下がりました。その結果、ネクタイの剣先が見えてしまう事態に陥ったようです。だからこそ、現代においては「剣先を隠す」という着こなしの工夫が必要なのです。

『その他大勢とは違う存在感を演出』(本書抜粋)に役立つスリーピースベスト。知られざる留意点に気を付けながら、この秋冬、挑戦してみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール: 森井良行(もりい・よしゆき)

エレガントカジュアル 代表取締役
20代後半から40代の男性のファッションを「エレガントカジュアル」でワンランクアップさせる「服のコンサルタント」。 街のセレクトショップを歩き、顧客に試着を繰り返してもらいながら、その人に最も似合う服を探していく独自の「買い物同行」は9割以上の高い満足度を誇る。

著書『真似するだけで印象が劇的によくなる 38歳からのビジネスコーデ図鑑』 (日本実業出版社)