メールを開くと、まず目にするのが宛名です。ここで失敗をしてしまうと、メールの第一印象が大きく損なわれます。自分に届いたはずのメールなのに、名前が間違っていたとしたら……。少なくても気持ちの良いものではありませんよね。
相手の名前や会社名を間違えるのはあってはならないこと。それ以外にもビジネスメールの宛名の書き方については、さまざまな疑問が寄せられます。どこまで丁寧に書くべきか? 敬称は平仮名で「山田さま」と書いても問題ない? 多くの方が頭を悩ませています。ここで手が止まってしまうようでは、仕事を前に進めるどころではありません。まずは、宛名の基本をしっかりと押さえておきましょう。
宛名のポイントは正確さ
社外の方にメールを送る際には、相手の会社名、部署名、役職、氏名(フルネーム)、敬称を正確に書くと丁寧な印象を与えることができます。記載する項目はもちろんのこと、"正確に"というのがポイントです。株式会社を(株)と省略することはせず、前株、後株にも十分注意します。最近は、片仮名の長い会社名や部署名なども数多く存在しますが、略称や通称を用いるのも避けるべき。「・」(中黒/中点)などの記号も含め、正確に記載しましょう。
株式会社アイ・コミュニケーション
プロモーション本部
統括エリアマネージャー
田中一郎様
特に初めての方や関係性が構築できていない相手にメールを送る場合には、上記のような基本に倣って書くことが重要。そこには丁寧な印象を与えること以外の効果もあります。
メールを送った相手が、必ずしも送信者との関係性を想起してくれるとは限りません。それが初めてのメールともなればなおさら。心当たりのない人からのメールだと思えば、警戒心も生まれます。
しかし、宛名に現在の正式な部署名や役職が書かれていたらどうでしょう。こちらのことを知っているということは、送信者は名刺交換をした人だと認識されるので、そのまま読み進められる可能性が高まります。受信者は宛名を見ることで、送信者が自分のことをどれだけ知っているか、自分とはどのような関係性かを判断することもあるのです。
宛名を変化させる必要性
常に基本に倣って丁寧に書くのが最適とは限りません。ビジネスメールの宛名については、状況や相手との関係性によって変化させることも必要です。
例えば、久しぶりの相手にメールを送るケース。もしかすると異動になって部署が変わっていたり、昇進、降格によって役職が変わっていたりすることも考えられます。部署名や役職を書くことは、相手の情報を正しく把握できていればこそ。丁寧に書こうとした結果、誤った内容を記載するくらいであれば、むしろ書かない方が無難です。
基本に倣った丁寧な宛名は、時に他人行儀に感じることもあります。何度もやり取りするようになった、相手との関係性が構築されてきた、このようなときが、宛名の書き方を変化させるタイミングと言えます。
(1)部署名、役職を省略する
株式会社アイ・コミュニケーション
田中一郎様
(2)フルネームではなく、名字だけにする
株式会社アイ・コミュニケーション
田中様
(3)会社名を省略し、フルネームだけにする
田中一郎様
(4)名字だけにする
田中様
代表的な4例を挙げてみました。宛名の書き方を簡略化するほど相手との距離感は近く、親しい間柄と感じられます。正解・不正解はありません。ただし、相手との距離を縮めたければ名字だけを書けばいいということでもありません。相手との関係性に応じて適切に使い分けることが大切です。
相手との適切な距離感を見極める
ここまで読んで「相手との適切な距離感に悩む」という方もいるかもしれません。そんなときは、相手から届いたメールを見てみましょう。宛名に自分のことが書かれているはずです。不快だと感じられない、あるいは心地よいと感じられるならば、それがお互いにとって適切な宛名の書き方なのかもしれません。悩んだときは、相手に合わせるというのも一つの考え方です。
仮に「田中様」のように名字+敬称だけの宛名で届いたメールに、会社名、部署名、役職、フルネーム、敬称をすべてそろえた宛名で返信したら、相手はどういう印象を抱くでしょう。もちろん丁寧な人という印象を持たれるかもしれませんが、一方で堅い人と思われる可能性もあります。メールはコミュニケーション手段の一つです。コミュニケーションという観点で考えれば、相手とスタンスを合わせることも大きな意味を持ちます。それが円滑なコミュニケーションのきかっけにもなり得るのです。
型にはまらず柔軟に
「田中さま」のように、平仮名で書かれた敬称もよく見られます。漢字よりも柔らかい印象で、より親しみが感じられる表現かもしれません。一方、ビジネスよりもプライベートに近い印象に感じられる側面もあります。「さま」という敬称の是非を問われることもありますが、これについても正解・不正解はありません。お互いにそれが適切だと感じるならば問題はないですし、違和感を覚えるならば使うべきではありません。
相手に合わせるのは、あくまでも考え方の一つ。もし自分に届いたメールの「〇〇さま」という宛名に違和感を覚えるのであれば、無理に相手に合わせる必要はありません。「〇〇さま」で届いたメールに「〇〇様」で返しても、決して失礼にはあたりません。
「宛名はこう書くべき」といった正解にとらわれるのではなく、状況やお互いの関係性によって書き分ける柔軟さが必要。型に当てはめるだけがすべてではありません。宛名を書くところからコミュニケーションは始まっているのです。