ビジネスメールにおける失敗の代表格。それが「添付ファイルの付け忘れ」です。一般社団法人日本ビジネスメール協会が毎年実施している「ビジネスメール実態調査」の結果を見ても、自分がしてしまった失敗の内容として「添付ファイルの付け忘れ」が10年以上に渡り第1位となっています。2021年6月に発表した最新の調査結果によれば、その割合は実に50.41%。二人に一人がその失敗を経験していることになります。

「ビジネスメール実態調査」は、対象期間を過去一年間に限定しているにも関わらずこの数字。二年、三年と対象期間を拡大すれば、その割合はさらに増えることが予想されます。これだけ多くの人が失敗している「添付ファイルの付け忘れ」。裏を返せば、「添付ファイルの付け忘れ」がない人は、失敗をしない少数派の人と言えるかもしれません。今日からあなたも失敗しない人を目指しましょう。たった一つの習慣を身につけることが、実現に向けての第一歩です。

「添付ファイルの付け忘れ」によるデメリット

「添付ファイルの付け忘れ」には、大きく二つのデメリットがあります。それは「コミュニケーション効率の低下」と「信用度の低下」です。

「添付ファイルの付け忘れ」に気が付けば、再度送り直す必要があり、当然、メールが一通増えることになります。対面コミュニケーションの抑制、テレワークの普及によって、ただでさえメールの通数は増加傾向。相手がその対応に追われているとしたら、立て続けに届くメールに不快感をおぼえるかもしれません。

「添付ファイルの付け忘れ」に、相手が気付き指摘を受けたのであれば、メールの通数はさらに増えることになります。その上、相手のミスを指摘するのは意外と気が引けるもの。添付を忘れたことによって、相手に余計な気を使わせてしまっている可能性もあります。

いずれにしても、ファイルを送り直す際にはお詫びの言葉も添えることになります。本来であれば必要のなかったやり取りが増えることも、コミュニケーション効率が低下する一因。メールの通数が増えることと相まって、円滑なコミュニケーションを阻害する大きな要因となるのです。

相手に与える印象にも影響を及ぼします。「添付ファイルの付け忘れ」によって「そそっかしい人」という印象を持たれるかもしれませんし、それ以上に「注意力がない人」と思われてしまえば、信用度の低下も免れません。

「添付ファイルの付け忘れ」は多くの人が経験しているせいか、お互いさまといった感覚で、寛容に受け止めてくれるケースも多い印象です。しかしながら、相手や状況によってはそうはいきません。仕事をする上では、さまざまな書類を添付する機会があります。見積書や提案書、時には契約書など。新規の取引を検討する過程で見積書や提案書が漏れていたり、大きな契約を控えた中で必要な書類が漏れていたりしたら、相手はどう感じるでしょう。「信用できない」と思われてしまえば、契約の見直しや破談といった悲劇につながる可能性もゼロではありません。

「重大な局面では、送信前にしっかり確認するから大丈夫」という人もいますが、不思議とそうした状況に限ってミスは起こるものです。重大な局面であればあるほど、送信前の確認事項も多いもの。誤字や脱字はないか、文章の構成は適切か、失礼な言い回しはないか。多くのことに気を取られるうちに、ついうっかり……。このようなことにならないためにも、日ごろから「添付ファイルの付け忘れ」をなくす習慣を身につけておきましょう。

身につけておきたい、たった一つの習慣とは

「添付ファイルの付け忘れ」をなくすために身につけてほしい習慣。それは、メールの本文にファイルを添付していることとファイル名を書くことです。以下の例をご覧ください。

提案書を、添付にてお送りいたします。
■添付:エコ商品提案書202109.pdf

「これで添付ファイルの付け忘れがなくなるの?」と思われるかもしれませんね。重要なのはタイミングの創出です。ミスをなくすためには、必要な手順をパターン化することが効果的。本文にファイルを添付していることとファイル名を書き、そのタイミングで対象のファイルを添付する。これをマイルールとして設定するのです。一連の動作として、意識せずともこの手順を踏むことが習慣化されれば、その後「添付ファイルの付け忘れ」はなくすことができます。

コミュニケーションを円滑に進めるためには、メールの本文に「添付にて」と書くこともポイントです。これは相手に正しく伝えるための重要なキーワード。「提案書をお送りいたします」としか書かれていなければ、相手は「後で送られてくるのだろうか」あるいは「郵送で届くのかもしれない」と考える可能性があります。届くと思っていた書類が届かなければ、約束が守られなかったと受け止められ、信用度は著しく低下します。「送ったつもり」による行き違いを発生させないためにも、添付していることは明確に伝えましょう。万一、添付を忘れてしまった場合でも、相手が指摘してくれる可能性が高まります。

最近では、添付ファイルの付け忘れを警告してくれる機能を持ったメールソフトもあります。これも本文中にファイルを添付していることを書いてあればこそ活用できる機能ですね。

相手の意識を添付ファイルに向ける

実は、本文にファイルを添付していることとファイル名を書く本来の目的は、相手の意識を添付ファイルに向けることです。受信者は、ファイル名が書かれている前後の文脈から、何のファイルが添付されているのか、その中身や目的を判断します。

仮に複数のファイルが添付されている場合でも、本文の適切な箇所にファイル名が記載されていれば、受信者は、どのファイルを確認すればよいのか、どのファイルについての説明なのかなどが容易に判断できます。

今回は「添付ファイルの付け忘れ」をなくすことに焦点を当てましたが、それは同時に、相手に分かりやすく伝える技術を磨くことにもなります。たった一つの習慣を身につけることが、失敗をなくし、伝える力を向上させることにつながるのです。