仕事をする上では、さまざまな依頼がクライアントから舞い込みます。とはいえ、一人でできることには限りがありますよね。さまざまな依頼に応えるためには、多くの人の協力が不可欠です。社内であれば先輩や同僚、あるいは他部署のスタッフ、業種によっては外部パートナーの協力が必要なこともあるでしょう。
多くの協力を得られることで、対応スピードを上げたり、質を向上させたりすることができ、大きな仕事にも取り組むことができます。それが自身の評価を高めることにもつながります。
ところで、こんなことを感じた経験はありませんか。
「あの人の仕事はやりたくない」
不思議なもので、同じ依頼を受けたとしても「あの人の仕事は何とかしてあげたい」と思うこともあれば、「あの人の仕事はやりたくない」と感じることもあります。その違いはどこから生まれるのでしょうか。そして、クライアントの依頼に応えるべく周囲に協力を求めるあなたは、果たしてどちらに見られているでしょうか。
頼み上手な人は、仕事をうまくこなしているように見えます。ビジネスメールを有効活用して、あなたも頼み上手を目指しましょう。
メールは情報整理の最適ツール
それでは、どういう頼み方をすると「あの人の仕事はやりたくない」と嫌われてしまうのでしょうか。その特徴は次の一言に集約されます。「情報の後出し」です。
仕事の依頼を引き受けたものの、後からいろいろと注文がついてくる、方向性が変わってしまう、このような仕事の頼み方は間違いなく嫌われます。
そうならないためにも、メールを活用します。メールは情報を整理して伝えることに長けているツールです。依頼をする際には、口頭でお願いするケースも多々あると思います。そんな場合でも、あらためて依頼内容をまとめてメールで送ることによって、お互いに誤解なく仕事を進めることができるのです。
依頼に当たっては、最低限、以下の3点は伝えてください。
・期限
・内容
・目的や仕上がりイメージ
仕事をする上で欠かせない要素は「期限」と「品質」です。仕事に期限が付き物なのは言うまでもありません。期限を設定しないまま適当に依頼し、「まだできないの?」と言えば、当然相手は面食らいます。
依頼内容はもちろんのこと、その目的や仕上がりのイメージもしっかりと共有しましょう。例えば、集計資料を作るにしても、社内報告のために使用するものとクライアントに提示するものとでは、求める品質、仕上がりのイメージが変わってくるはずです。
完成した後に「こんなはずではなかった」ということにならないよう、必要な情報を整理し、しっかりと相手に伝えましょう。依頼の期限・内容・目的が明確になれば、受け手も仕事が進めやすくなります。
依頼後のフォローが何よりも大切
依頼の程度にも大小さまざまあります。時間のない急なお願い、高い完成度を求められる難しいお願い。時には助けを求めなければ乗り切れないような状況が訪れることもあるでしょう。
多少無理なお願いであっても、おそらく一度や二度であれば引き受けてもらえると思います。なぜならばそれも仕事だからです。しかし、それが三度、四度となってくると話は変わってきます。冒頭で書いたように「あの人の仕事は何とかしてあげたい」と動いてくれることもあれば、「あの人の仕事はやりたくない」という感情が湧き上がってくることも考えられます。
何度でもお願いを聞いてもらえるようになるためには、きちんとお礼を伝えることが大切です。そんなこと当然だと感じるかもしれませんが、ポイントは「お礼を伝えるタイミングは二度ある」ということです。
以下の2つのケースから考えてみましょう。
1つ目は難易度の高い仕事を引き受けてもらったケースです。例えば、急な仕事の依頼などがそれに当てはまります。通常であれば2、3日かかるものを、どうしても翌日に届けてほしい。時間のない中で依頼を引き受けてもらった際には、もちろんそこでお礼を伝えているはずです。しかし、こういったケースでありがちなのが、依頼をするときだけ丁寧にお願いし、翌日、製品が届いても知らん顔という状況です。
難しい依頼は、その依頼を引き受けてもらったタイミングに加え、依頼した作業が完了したタイミングでもう一度お礼を伝えましょう。翌日あらためて感謝の言葉があれば、引き受けた方も「対応した甲斐があった」と思い、清々しい気持ちにもなれます。
2つ目は、依頼後の成果が見えるようなケースです。例えば、クライアント向けのプレゼン資料の作成を依頼したとすれば、その資料が完成したときが最初のお礼のタイミング。そのプレゼンの結果が出たときが2回目のお礼のタイミングです。
先日の企画が通りました。
〇〇さんがまとめてくれた導入後の効果予測が分かりやすいと、
クライアントからも大好評でした。
おかげで今期の予算も達成できそうです。
こうした言葉がどれほど嬉しいことでしょう。依頼を受けた側は、自分がやったことがどのような結果につながったのか、声には出さなくても興味があるはずです。結果や成果をしっかりと伝えることで「また次も頑張ろう」「次も期待に応えよう」と思えるのです。
もちろん具体的な成果につながらなかったとしても、再度お礼は伝えるべきです。成果を上げられなくても成長を感じることができれば、それがやはり次の意欲につながります。
頼み上手になるためには、小手先のテクニックでどうにかなるものではありません。テクニックで人を動かすことはできないのです。一番大切なことは、仕事を引き受けてくれる相手に、敬意と感謝の気持ちを持って接することです。お互いの信頼関係や助け合いの気持ち、感謝の気持ちがあれば何度でも助けてくれるはずです。
井上賢治
一般社団法人日本ビジネスメール協会認定講師
1974年生まれ。宮城県出身。大学卒業後、大手製紙メーカーグループの印刷会社に勤務。入社3年目で営業成績1位を獲得。翌年にはその経験を活かし、新たな印刷会社の立ち上げに参画。新規開拓において数多くの実績を残し、出版物の制作や大手企業のセールスプロモーションを手がける。その後、ヘッドハンティングにより移籍した会社では東京支社長に就任、20名の部下を統括する。テレアポや飛び込み訪問による営業スタイルを確立していたが、さらなる受注拡大の実現、そして組織全体の営業力強化、人材育成など、幅広い業務を担うなかでビジネスメールの有用性を実感。1通のメールがコミュニケーションを円滑にし、業績向上にも結びつくとの想いから、認定講師としての活動を開始。営業経験、管理職経験を活かした実践的なビジネスメールの指導を得意とする。
日本ビジネスメール協会
日本で唯一のビジネスメール教育専門の団体。ビジネスメールに特化した講演・研修などの事業を10年以上前から行っており、メールに関する書籍を中心に30冊出版(内3冊は翻訳され台湾で出版)。メディアには1,000回以上登場し、ビジネスメールについて情報発信してきた。仕事におけるメールの利用状況と実態を調査した「ビジネスメール実態調査」を2007年から毎年行い、日本で唯一のビジネスメールに関する継続した調査として各メディアで紹介されている。ビジネスメールやビジネス文章、ビジネスマナーなど集合研修(講師派遣)や講演(公開講座)を会場とオンラインの両方で実施中。