「今日もまた残業か……」。しっかりとスケジュール管理をしているつもりでも、なかなかその通りに進まない。そんなお悩みを抱えるビジネスパーソンが後を絶ちません。このコラムでは、そんなお悩みの解消に役立つヒントを、ビジネスメールの観点からお伝えします。
メール業務の棚卸し
「メールは隙間時間に対応しています」という方は、危険信号かもしれません。はじめに、日本ビジネスメール協会が行った「ビジネスメール実態調査2019」の結果も踏まえながら、メール業務の棚卸しをしてみましょう。
皆さんは、仕事で一日にどのくらいのメールをやり取りされているでしょうか。「ビジネスメール実態調査2019」によると、一日に送受信しているメールの平均通数は以下の通りです。
送信数:11.59
受信数:38.07
あくまでも平均通数ですので、ここにご自身の数字を当てはめてみてください。
次に、メール1通にかかる時間を見ていきます。まずは送信メールです。例えば、交流会で名刺交換した方に、お礼のメールを送る場合を考えてみましょう。
はじめに宛名や挨拶、ご自身の名乗りを書いていきます。ただお礼を述べるだけではなく、交流会の場でお話しした内容なども書き添えておくと、相手の方に思い出していただきやすいかもしれません。さらに関係性を深めるために面会を申し入れるのも良いでしょう。
いかがでしょう。相手に伝わるメールを書くためには、5分程度の時間は必要ではないでしょうか。より丁寧に書きたいと思えば、かかる時間はそれ以上かもしれません。
「ビジネスメール実態調査2019」では、1通のメールを書くのにかかる平均時間は「5分」と答えた方が最も多く33.81%、全体の平均時間では5分27秒という結果が出ています。
受信メールについても考えてみましょう。社内の企画スタッフから、打ち合わせ日時の確認が来ているとします。メールを読んで、ご自身の都合の良い日程を確認。これだけでも、ざっと2分程度は必要かもしれません。
仮に平均程度の通数、所要時間で当てはめてみると、次のような結果となります。
送信メール 11通×5分=55分
受信メール 38通×2分=76分
131分。実に2時間以上をメールに費やしている計算になります。
メールこそがその日最大の業務!?
一日のスケジュールの中には、お客さまとの商談や社内での打ち合わせ、資料作成、会議など、さまざまな予定があるかと思います。その中で2時間以上を費やしている業務がどれほどあるでしょうか。こと所要時間だけで考えると、メールこそが「その日最大の業務」となっている可能性もあるのです。
そうなってくると、隙間時間だけではとても対応しきれません。スケジュール通りに進まない原因は、ここにあるかもしれません。メールの通数が多い方であれば、メール対応をひとつのタスクとして、あらかじめスケジュールに組み込んでいただくことをお勧めします。
私も、朝や夕方などに、あらかじめメール対応の時間を確保しています。そのうえで隙間時間があれば、そこでさらに1~2通の対応をするという感じです。たまに、メールを受信したら、その都度対応をしている方も見受けますが、決まった時間でまとめて対応する方が、より業務効率は高まります。
メールのタスク化で商談もリードする
メールをタスク化することのメリットは、業務の効率化だけにとどまりません。メールのタスク化は商談をリードすることにもつながります。なぜならば、適切なタイミングを逃さず、仕事の流れをつくるからです。
例えば、新規のお客さまと初めての商談ができたのであれば、その後にお礼のメールを送ると思います。このお礼メールをいつ送るのか? 実はそのタイミングこそが重要な鍵となります。
こと営業、販売活動に関して言うならば、商談内容も重要ではありますが、それ以上に大切な要素がタイミングです。適切なタイミングで次の一手を打つことが、その先の成果に直結します。
当日のうち、あるいは翌日の朝にはお礼メールを送ることによって、相手の方により好印象を与えることができるでしょう。反対に1日、2日と間が空いてしまえば、それだけ相手の記憶から遠ざかってしまいます。良い商談ができたのであれば、なおさら相手の方の熱が冷めないうちに送りたいものです。
隙間時間でのみメール対応をしている方は、このタイミングを逸してしまう可能性があるのです。スケジュールに「新規商談」と入れるのであれば、当日または翌朝に「お礼メール」の予定も同時に入れてしまいましょう。
ひとつの行動だけではなく、次の一手となるメール送信までをタスク化し、スケジュールに落とし込んでみてください。適切なタイミングで送られた1通のメールが、あなたの仕事の成果をより高めてくれるはずです。
井上賢治
一般社団法人日本ビジネスメール協会認定講師
1974年生まれ。宮城県出身。大学卒業後、大手製紙メーカーグループの印刷会社に勤務。入社3年目で営業成績1位を獲得。翌年にはその経験を活かし、新たな印刷会社の立ち上げに参画。新規開拓において数多くの実績を残し、出版物の制作や大手企業のセールスプロモーションを手がける。その後、ヘッドハンティングにより移籍した会社では東京支社長に就任、20名の部下を統括する。テレアポや飛び込み訪問による営業スタイルを確立していたが、さらなる受注拡大の実現、そして組織全体の営業力強化、人材育成など、幅広い業務を担うなかでビジネスメールの有用性を実感。1通のメールがコミュニケーションを円滑にし、業績向上にも結びつくとの想いから、認定講師としての活動を開始。営業経験、管理職経験を活かした実践的なビジネスメールの指導を得意とする。
日本ビジネスメール協会
日本で唯一のビジネスメール教育専門の団体。ビジネスメールに特化した講演・研修などの事業を10年以上前から行っており、これまでにメールに関する書籍を中心に28冊出版(内2冊は翻訳され台湾で出版)。メディアには1,000回以上登場し、ビジネスメールについて情報発信してきた。仕事におけるメールの利用状況と実態を調査した「ビジネスメール実態調査」を2007年から毎年行っており、本調査は、日本で唯一のビジネスメールに関する継続した調査として各メディアで紹介されている。ビジネスメールに関する研修(講師派遣)や講演(公開講座)を実施。2時間でビジネスメールを学ぶ、「ビジネスメールコミュニケーション講座」は東京を中心に毎月開催。研修の問い合わせも受け付け中。