上司に相談したが、あまり親身になってもらえなかった。アドバイスをもらったけれども、それはすでにやっていることだった。せっかく相談したのに残念な思いをした。あるいは期待した答えが返ってこなかった。そんな経験はありませんか。

良いアドバイスをもらうためには、情報を整理して相談相手にわかりやすく伝える必要があります。上司の方は、その情報から問題解決の糸口を見出したり、物事の進め方を決めるための判断材料としたりします。情報を整理してわかりやすく伝える手段として、ビジネスメールは効果的です。ここでは、ビジネスメールで良いアドバイスをもらうための相談の仕方について、ポイントをお伝えしていきます。

「CC」は"参考までに読んでおいてほしい人"

メールには、「宛先(TO)」「CC」「BCC」と3つの送り先があります。それぞれ、違いやマナーを把握して使い分けることが大切ですが、「CC」のマナーは意外と知られていません。

「CC」は、カーボンコピー(Carbon Copy)の略で、"参考までに読んでおいてほしい人"に送るときに利用します。このため、ビジネスメールのマナーとしては、「CC」で受け取ったメールには、返信をしなくても失礼ではありません。しかし、このマナーを知らず、「CC」でメールを送った人に依頼をするケースがあります。

下記の「提案書提出日の連絡」メールサンプルを見てみましょう。

このメールでは、"参考までに読んでおいてほしい人"という意味合いの「CC」に設定した「加藤さん」に、「〇〇製品対応表を送ってほしい」と依頼をしています。「加藤さん」へのメッセージが矛盾していますね。

「CC」でメールを送った人への「依頼」はNG!

「CC」の人は、"参考までに読んでおいてほしい人"ですから、本来はメールを読んでおくだけでよいわけです。ですから、「CC」の人に「依頼をする」ということは、ビジネスメール上はマナー違反! 依頼をしたいのであれば、「宛先(TO)」でメールを送ります。

では、今回の場合は、どうすればよかったのでしょうか。あなたなら、どうしますか? 方法はいくつかありますが、下記のようにメールを2回に分けて送る方法をオススメします。

1.加藤さんを「CC」に入れた「提案書提出日の連絡」メールを送る
2.加藤さんを「宛先(TO)」にした、「〇〇製品対応表の送付依頼」メールを送る

上記「1」のメールをCCで加藤さんに送るのはなぜだろう? と思いませんでしたか? 製品対応表を送ってもらうのであれば、上記「2」のメールだけでもよさそうですよね。

今回の例の場合、上記「1」の「提案書提出日の連絡」メールを送り、読んでもらうことで、加藤さんは「なぜ製品対応表を送る必要があるのか」という理由がわかるため、話が早く進み、スムーズに製品対応表を送ってもらえるというメリットがあります。

それでは、それぞれについて具体的なメールサンプルを例に、確認してみましょう。

「CC」の人が"スムーズに動ける"メールの送り方

1.加藤さんを「CC」に入れた、「提案書提出日の連絡」メールを送る

このメールの目的は、「TO」の鈴木さんに提案書の提出日をお知らせし、「CC」の加藤さんに、提案書の修正のために「〇〇製品対応表」が必要になることを知っておいてもらうことですので、宛先(TO):鈴木様、CC:加藤様でメールを送ります。

このときの内容は、下記のように提案書の提出日連絡のみを記載します。

2.加藤さんを「宛先(TO)」にした、「〇〇製品対応表の送付依頼」メールを送る

このメールの目的は、加藤さんに「〇〇製品対応表」を送っていただくことですので、宛先(TO):加藤様でメールを送ります。

このように2つのメールに分けることで、加藤さんには明確なメッセージが伝わるようになります。

1通目:「参考までに読んでおいてほしい」
このメールを読むことで、加藤さんは、「提案書の修正には、〇〇製品対応表が必要だ」ということがわかります。

2通目:「依頼事項に対応してほしい」
1通目でなぜ製品対応表が必要か理解できているため、依頼に対して必要な〇〇製品対応表をすぐに送ることができます。

いかがでしたでしょうか。1通のメールでまとめる方法もありますが、今回はあえて「メールを分ける方法」をご紹介しました。

メールを2つに分ける大きなメリットは2つあります。

・「宛先(TO)」で、「誰に伝えたいと思っているのか」が明確になる
・「件名」で、「伝えたいこと」が明確になる

上記の例では、

1通目は鈴木さんに、提案書の提出日を伝えたい
2通目は加藤さんに、〇〇製品対応表を送付してほしい

ということを明確にすることができています。

少し手間に感じるかもしれませんが、加藤さんにとってこの方法がよりわかりやすいメールになります。

メールは、文字だけのコミュニケーション。ちょっと面倒でも、相手にとってわかりやすくお伝えできる方法を選択しましょう。

茨木ち江

一般社団法人日本ビジネスメール協会認定講師
大手企業様や官公庁様等で、WindowsやWord、Excel、Access、VB等の集合研修講師経験を経て、平成11年10月に株式会社グッドフィールドアンドカンパニー入社。外資系企業様で、3年間常駐ヘルプデスクとして勤務後、業務推進部に異動し、業務フローやフォーマットの作成など、社内文書の定型化と業務の可視化に貢献。実施していなかった中途社員研修を体系化し、必要なテキストや資料の整備と講師を担当。現在は中途社員研修を後輩に引き継ぎ、“わかりやすい文章表現"“わかりやすい説明"をモットーに、社員だけでなくお客様にも「ビジネスメールコミュニケーション講座」や「【Excel】ミスや情報漏洩を防ぐフォーマットを作成するコツ講座」などの研修を行いながら、新しい研修サービスの企画、実施に取り組んでいる。お客様から頂いた「説明時の機転の利き方がさすが」という言葉が宝物。

日本ビジネスメール協会

日本で唯一のビジネスメール教育専門の団体。ビジネスメールに特化した講演・研修などの事業を10年以上前から行っており、これまでにメールに関する書籍を中心に28冊出版(内2冊は翻訳され台湾で出版)。メディアには1,000回以上登場し、ビジネスメールについて情報発信してきた。仕事におけるメールの利用状況と実態を調査した「ビジネスメール実態調査」を2007年から毎年行っており、本調査は、日本で唯一のビジネスメールに関する継続した調査として各メディアで紹介されている。ビジネスメールに関する研修(講師派遣)や講演(公開講座)を実施。2時間でビジネスメールを学ぶ、「ビジネスメールコミュニケーション講座」は東京を中心に毎月開催。研修の問い合わせも受け付け中。