スマートフォンのカメラを利用したスキャニングアプリは、以前紹介したEvernoteをはじめとしていろいろあります。今回は、Adobe Scanの機能を見てみましょう。

  • Adobe Scanの起動直後の画面

Adobe Scanとは?

Adobe Scanは昨年7月に発表になったスキャニングアプリで、iPhoneアプリのAdobe Acrobat Readerや、クラウドサービス「Adobe Creative Cloud」とも連携可能です。

そのメイン機能は、カメラで撮影した書類が簡単にPDFファイルになることです。ビジネスシーンでも入手した資料や、手書きのアイデア図などを再利用できるように保存するために使えます。

では順番にキャプチャーと各種操作を見てみましょう。

操作の方法

Adobe Scanを利用するには、Adobe IDが必要になります。これはAdobeの各種クラウド対応サービスを利用するためのIDで、通常はメールアドレスで登録します。

メインの機能たる書類のスキャニングはとても簡単に実行できます。書類を用意してアプリを起動すると、カメラモードで自動的にシャッターを切ってくれます。

  • 自動キャプチャー機能がオンになっていると自動で書類を認識してシャッターが切れる

撮影したイメージは、トリミングや回転、コントラスト補正(元の写真、カラー、グレースケール、ホワイトボードの各モード)などの機能が利用可能です。

  • キャプチャー直後の画面。右上がPDF保存のボタン。画面下のボタンはそれぞれ、別の写真読み込み/撮影、並べ替え、トリミング、回転、コントラスト設定(自動カラー、グレースケール、ホワイトボード)、削除

キャプチャーした書類をこれらの機能で補正したら、PDFファイルとして保存できます。

  • ファイル名の初期設定は日時。横のボタンをタップして変更可能

Adobe Scanが便利なのは、やはり同じAdobeのAcrobat(iPhone用アプリ)との連携、OCR機能の利用やAdobe Creative Cloudでの利用でしょう。順に解説します。

Adobe Acrobat Readerとの連携

Adobe Acrobat Readerは、PDFの表示や注釈付けなどを行えるアプリです。

  • Adobe Acrobat Readerの各種機能。注釈や署名などの各種機能が利用できる

  • 署名を入れたところ。移動や削除、色の変更も可能

  • 署名を移動して色を変更したところ。完了をタップするとこのまま保存。Adobe Document Cloudにも保存が反映される

iPhoneにインストールされていれば、「Acrobatで開く」のボタンが表示されます。タップすると起動し、コメントやテキスト校正、レタッチ、署名などの各種機能が利用できるようになります。

  • 保存したものはAdobe Document Cloudにアップされたのち、Adobe Acrobat Readerで開くことができる。コメントや追記もできる

「共有」をタップするとメール送信、ファイル共有、リンク共有の3つの機能が利用できます。

  • ファイル/リンクを共有の各機能は、Evernoteやメモなどの各種アプリに送信ができる

特にメール送信は、前回触れた「ファイル」をインストールしていない場合は、スキャンしたPDFをメール送信できるので便利です。またファイルとリンクの共有も、送信先を各種指定することができます。

  • 共有ボタンでは直接メール送信も可能

Adobe Creative Cloudとの連携 

Adobe Scanが最も便利なのは、Adobe Creative Cloudとの連携でしょう。

Adobe IDでログインしていれば、スキャンしたものは自動的にアップされます。パソコンからでも同じAdobe IDでログインしていれば、iPhoneでキャプチャーしたものがすぐに参照できます。OCR機能もありキャプチャーした書類内部のテキストが認識対象になります。

Adobe Scanが最も便利なのは、iPhoneで撮影した画像がすぐにPDFファイルにできることです。これまでも画像をキャプチャーしてPDFファイルにするアプリはありましたが、撮影もすばやく、またクラウド経由でパソコンでも利用できます。いくつかのステップでこれらの機能を実現するアプリはあっても、ユーザーがその手間を意識することなく、利用できる点は他のアプリにはないものだといえます。

Adobe Scanの活用ポイント

Adobe Scanを活用するためのポイントは、2つあります。ひとつは、Adobe IDを取得しておくこと。もうひとつはAdobe Acrobat Readerのアプリをインストールしておくことです。

Adobe Scanは単体で使うというよりも、上記の2つを前提としてフル活用できるようになります。外出先で書類をスキャンして送信するだけでなく、キャプチャーの履歴をパソコンの大きなディスプレイで確認したり、またはパソコン上のAcrobatでじっくり編集したりすることが簡単にできるようになるわけです。これは、他のスキャンアプリにはない特徴です。

  • パソコンから確認したところ。iPhoneで入れた署名も反映されている

またファイルの管理という点でも大きなメリットです。書類をiPhoneのカメラで撮影してメモ代わりにするのは、多くの方がやっていると思います。そしてこの方法の難点はカメラロールに含まれた膨大な写真の中に肝心のメモの写真が紛れてしまうことです。これを回避する方法は以前触れましたが、再利用はiPhone本体やiCloudでの参照に限られます。

そしてAdobe Scanを利用すれば、クリエイティブクラウド上に専用のフォルダが作られ、そこにタイムスタンプも含めて履歴が蓄積されます。これは後からファイルを探すときにもとても便利です。

  • DocumentCloudにパソコンからAdobeIDでログインしてスキャンしたPDFファイルを一覧したところ。表示日順に上から並ぶ

  • 「すべてのスキャン」はサムネイル表示。サムネイルの右下の「・・・」をタップしても各種機能を利用できる

Adobe Scanはこのように、IDさえ用意すればとても便利に使えます。まずIDを用意し、次にAdobe ScanとAdobe Acrobat Readerをインストール。これで準備完了です。外出先で仕事の書類を確実に保存したい人は是非とも使いたいアプリのひとつです。

舘神龍彦

舘神龍彦

手帳評論家、ふせん大王。最新刊は『iPhone手帳術』(エイ出版社)。主な著書に『ふせんの技100』(エイ出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『意外と誰も教えてくれなかった手帳の基本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『手帳カスタマイズ術』(ダイヤモンド社)など。また「マツコの知らない世界」(TBS)、「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)などテレビ出演多数。手帳の種類を問わずにユーザーが集まって活用方法をシェアするリアルイベント「手帳オフ」を2007年から開催するなど、トレンドセッターでもある。手帳活用の基本をまとめた歌「手帳音頭」を作詞作曲、YouTubeで発表するなど意外と幅広い活動をしている。

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