着ているスーツが同じであっても、髪型で人の印象は変わります。たとえば、茶髪のダークスーツはビジネスマンというよりホスト風に見えますし、ピタッと髪をまとめ、額と耳を出したダークスーツはホテルマンのような雰囲気です。実は、ビジネスファッションに合う髪型は限定されます。
そして、30代という年齢もポイントです。年齢を重ねるにつれ、髪の張りやボリュームは少しずつ減ります。だからこそ、20代のように流行のヘアスタイルを再現することも疲れますし、整髪料をつけない髪型が爽やかに見えるとも限りません。
では、30代サラリーマンは「似合う髪型」について、どう考えれば良いのでしょうか?
職種的にヒゲNGという方も多いかもしれませんが、ヒゲ・眉毛など顔回りの毛も含め、「ビジネスファッションに合う髪型」について、服のコンサルタントがお伝えします。
スーツ・ジャケットに合う髪型の条件
学生時代の頭髪検査からわかるように、制服・スーツ・ジャケットなど、カッチリした服であればあるほど、耳と額を出した方が似合います。私が通っていた学校では「襟足を長くしてはいけない!」、「髪が耳に掛かってはいけない!」など厳しいルールがありました。
当時は、ルールの意味を理解できませんでしたが、服のコンサルタントとして仕事をしていくうえで分かったことがあります。フォーマルに近いカッチリした服装にナチュラルな髪型はバランスが悪いのです。
そういう意味では、もはや定番ともいえる「ツーブロックこそスーツに合う髪型だ!」と私は考えています。耳上を刈り上げているあらこそ耳上のボリュームは抑えやすく、何より整髪料をつけることを前提とした髪型だからです。そして、この整髪料を付けるという行為が、30代の髪型にとって重要です。
30代サラリーマンが陥るNGな髪型
ヘアメイクとサロンワークを30年以上続けるベテランの美容師さんに確認したところ、「整髪料を前提とした髪型」と「整髪料を前提としない髪型」があるということ。10~20代前半までは整髪料を付けない髪型もナチュラルで爽やかでした。あどけなさが残る顔つき・肌質にくわえ、髪質にもコシ・ハリがあったからです。
ところが、30代頃から髪質の状況は変わり、整髪料を付けない髪型は合わせづらくなります。そういう意味では、どんな髪型であったとしても、整髪料を付けないこと自体がNGだと考えています。
年齢以上に老け込んで見える30代の多くは、前から後ろに掛けて頭の中心を通るモヒカンラインのボリュームが減っています。さらに、耳上のボリュームが出ることで横に張り出した状況こそ、老け込んで見える原因です。整髪料を付けることで、モヒカンラインのボリュームを取り戻し、横のボリュームを抑えましょう。
ポイントは、整髪料を付けるとき「髪を完全に乾かすこと!」。朝、寝ぐせを直す際、水で軽く髪を濡らした後、ドライヤーで完全に髪を乾しましょう。この状態でワックスを付けたとき、まんべんなく髪に馴染ませられます。一方、半渇きの髪に付けた整髪料はムラになってしまうので、髪が乾いたころカタチが崩れます。
ヒゲを不潔に見せないジャンルの服
一方、スーツにヒゲは合うのでしょうか。カジュアル要素が強い服よりカッチリしたスーツ・ジャケットにヒゲを合わせたほうが難しくない気がしています。着こなし次第ですが、カジュアル姿のヒゲは服にハマりすぎてくたびれて見える可能性が高いのではないでしょうか。
特に、ワークテイストの服では、人によってはガチの労働者に見えかねません。
とはいえ、無精ひげはスーツ・ジャケットスタイルであっても小汚く見えます。カタチと長さを整えることは必要です。ただし、ヒゲはそもそも万人ウケするものではないからこそ、自身の職種・業種を考慮したうえで挑戦したいところ。そして、ヒゲより眉毛・鼻毛を整えることが重要です。
見落としがちな眉毛・鼻毛の手入れ
本来、鼻毛・眉毛はある一定の長さ以上伸びた段階で成長を止め、自然と抜けるというサイクルで成り立っています。毛周期と呼ばれるこのサイクルのお陰で、鼻毛や眉毛を処理せずともみっともなく見える心配はありませんでした。
ところが、年齢とともにこのサイクルに乱れが生じ、処理しないことで伸び続けてしまうというのです。
特に、30代後半くらいから、この傾向は強く、野暮ったく見えないよう毛足の長い毛のカットをおすすめします。と言っても、細すぎる眉はキツい印象になりがちです。ムダ毛を整える程度で十分です。自分で眉カットする自信がない方は、美容室の眉カットサービスや眉サロンを利用してでも整えたい身だしなみです。
さいごに、30代後半の方にお薦めする「もみあげの白髪対策」の話です。私自身、もみあげに白髪が年々増えています。この白髪が老け込んで見える原因です。
貫禄というより老け込みです。溶剤を小分けして使えるプッシュタイプの白髪染めをドラッグストアで購入し、2週間に1度くらいのペースでもみあげ白髪をカバーすれば完璧です。まずは、整髪料を付けることから始めてみてはいかがでしょうか?
著者プロフィール: 森井良行(もりい・よしゆき)
エレガントカジュアル 代表取締役
20代後半から40代の男性のファッションを「エレガントカジュアル」でワンランクアップさせる「服のコンサルタント」。 街のセレクトショップを歩き、顧客に試着を繰り返してもらいながら、その人に最も似合う服を探していく独自の「買い物同行」は9割以上の高い満足度を誇る。著書『毎朝、迷わない! ユニクロ&ツープライススーツの上手な使い方』 (WAVE出版)