悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、仕事の生産性はどうすれば上がるだろうかと悩んでいる人のためのビジネス書です。
■今回のお悩み
「異性の同僚とうまくコミュニケーションがとれなくて困っています。適度な距離感で仕事ができる方法を教えて欲しいです」(38歳男性/IT関連技術職)
結婚して28年経ちますが、僕はいまだに妻から「女の人の気持ちがわかっていない」と言われます(トホホ)。
「そんなことないぞ」と否定したいところですが、残念ながら返すことばはなく、結局は「だって男だからさー」とあまり意味のない反論をするのみ。なぜって、たしかにそのとおりですからね。
もちろん女性特有の繊細な感性などを理解できていれば、いろいろな場面でいろいろなことがうまくいくのかもしれません。でも現実問題として、男にそれはなかなか難しいことでもあるのです。いや、決して開きなおっているわけではなく。
しかも、配偶者との家庭生活においてもそうなのですから、相手が会社の人となるとさらに難しいことは多くなってくる可能性があるでしょう。
配偶者は基本的に(多少なりとも)心の通じ合った存在ですが、仕事上の同僚や上司、部下であったとしたら、事情が大きく変わってしまっても無理はないということ。
ですから、今回のご相談にも納得できるのです。そして、同じような悩みを抱えている方は少なくないはずだからこそ、今回はそうした悩みを解消するために役立ちそうな3冊をご紹介したいと思います。
「ほめの基本4原則」を実践しよう
個人的な話に戻りますが、『察しない男 説明しない女 男に通じる話し方 女に伝わる話し方』(五百田達成 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、僕が妻から「絶対に読んでおいたほうがいい」と強く勧められた一冊でもあります。
「男と女のいろいろな違いをわかりやすく解説しているので、女心がわからない人にはきっと役立つ」とのこと。そこで読んでみたところ、たしかに参考になる内容だったのでした。
さまざまなシチュエーションやテーマについて、男と女の考え方の違いを比較しているので、非常に理解しやすいのです。しかも「仕事/職場編」という章も用意されているため、仕事についての男女の考え方の違いも容易に理解できると思います。
たとえば、こんな感じです。
男はほめてほしい
女はわかってほしい
(208ページより)
誰にでも「ほめられたい」という願望はあるものですが、男性と女性では、「褒めのツボ」というべきポイントが違うというのです。そのため、ほめ上手になれば、人間関係もよりスムーズになるはずだと著者。
そして、ほめ上手になるためにぜひとも覚えておくべき「ほめの基本4原則」というものがあるのだそうです。
1 今までと変化した部分に注目してほめる
2 その人が自分で気に入っているポイントをほめる
3 本当に自分がいいと思っている部分だけをほめる
4 気づいたらその都度ほめる
(209~210ページより抜粋)
1は「髪切った?」「メイク変えた?」など、変わった部分を指摘するほめ方で、女性たちの得意技なのだとか。いつも相手のことをよく見ているから変化を敏感に察知できるわけで、男性もそんな習慣を身につけたいと著者は記しています。
2は、本人がほめてほしい、気づいてほしいと思っている部分を攻めるほめ方。その人のこだわりや大切にしていることを意識すれば、うまくいくそうです。
3は正直に、自分が共感できる部分をほめる方法。「いいな」と思う部分をそのまま口にすればいいだけで、お世辞をいう必要もないので、心理的にも楽だといいます。そして4は、言うまでもなく、そもそもの基本ルール。
最初はうまくいかないかもしれませんが、これらを習慣化できれば、それだけでもコミュニケーションを改善できるかもしれません。
相手の心に届く"コトバ"には何が大切?
いっぽう『職場の女子のトリセツ』(有川真由美 著、PHP研究所)の著者は、男女間のやりとりの難しさを認めたうえで、次のように述べています。
残念ながら男性も女性も、相手の心に届く"コトバ"がわかっていないのです。 ここで言う"コトバ"とは、話す言葉だけではありません。表情やとっさのリアクション、メールの送信、ちょっとした気遣い、日頃やっている行動など、相手に対するすべての表現のことを言います。(「はじめに――女性の性質を理解すれば、人生は劇的に変わる!」より)
つまり単なる情報のやりとりではなく、"気持ち"の交換が重要だということ。男性側が女性の心まで届くことばを持つことで、閉ざされていた相手の心が開き、風通しのいい人間関係が生まれるというわけです。
そのような考え方に基づいて書かれた本書には、「モテる男が言う こんなひと言」という項目があります。モテる男になれるかどうかは別としても、女性に心地よさを与えることのできる「ひと言」が紹介されているのです。
著者がそこで力説しているのは、会話するときの"共感"の重要性。共感できるようになれば、「この人はわかってくれる!」「一緒にいて楽しい」と女性から支持を得られるようになるという考え方です。
しかも「共感コミュニケーション」は、コツさえつかめば簡単なもの。アドバイスや結論のために頭を働かせなくても、「そうだよね」と共感のひと言を挟むだけで、女性は「話を聞いてもらえた」と満足するそうなのです。
(1)5語の合いの手「うんうん」「そうだね」「わかる」「たしかに」「なるほど」
この5つの共感ワードを使えば、初歩的な会話はほぼ成立。
(2)感情のオウム返し「それはうれしかったね」「ワクワクするね」「残念だよね」
"感情"を共有することで、共感度はアップ。
(3)共通点、共感ポイントを見つける「僕もそう」「一緒ですね」「同じだ」
女性同士が共通点を見つけて「私も~!」と手を取り合う感覚。
(176~177ページより抜粋)
たとえば、このように共感を示すことが大切だということ。難しそうにも思えるかもしれませんが、慣れてくれば自然に「共感力」は身につくものだそうです。
マンガで学ぶ「女性マネジメント」法
最後にご紹介する『女の人を怒らせない技術 マンガでよくわかる女性とのコミュニケーションの鉄則』(近藤俊太郎 著、ダイヤモンド社)の著者は、大手家電メーカーやベンチャー企業などを経て、女性向けサービスを運営している会社に入社したという経歴の持ち主。
20代で役員に就任したものの、女性比率の高い職場環境において「女性マネジメント」の重要性を実感したのだそうです。
つまり本書ではそのような経験に基づき、失敗例も交えつつ、女性を怒らせないために、あるいは不快な気分にさせないために必要なノウハウを伝授しているのです。
マンガなので読みやすく、しかも具体的かつ実践的なので、すぐに役立てることができるはず。巻末に収録されている「『言ってはいけないNGフレーズ』まとめました」のなかから、いくつかをピックアップしてみましょう。
「で、何が言いたいの?」
→それがわからないから話しているんです! もっと聞きましょう
「つまり、どういうこと?」
→結論を焦ってはいけません。まずは解きほぐしていきましょう
「ねぇ、なんで怒ってるの?」
→その理由をぜひ、考えてみてください。体調の問題などもあります
(相手の話をさえぎって)
「それでさぁ」
→会話ドロボーはいけません。話したくてもグッとこらえて話を聞きましょう
「将来、何かしたいことないの?」/「どうなりたいの?」など
→このような一言は相手にプレッシャーを与えて追い込みます。「仕事は仕事」で粛々とやることを好む人もいるのです
「いいからやってよ!」/「会社のためだから」/「常識でしょ」など
→権力や正論をふりかざしても人は動きません。理由を丁寧に伝えていきましょう
(201~202ページより抜粋)
たとえばこれらを頭に入れておくだけでも、女性の気持ちを理解することに役立ちそうです。
男性からすると、女性の気持ちは読みづらいもの。でも、だからこそ、女性ならではの感じ方や考え方などを解説したこれらの書籍はきっと役立ってくれるはず。より理解を深めるために、ぜひ活用したいところです。