「育児文具」が増えている。
昨年には、学研ステイフルの「kazokutte」やクツワの「metete」(ミテテ、と読む)など、いくつか育児のための文具ブランドが生まれた。どのブランドも、知育を意識した製品を送り出している。
お父さんは無視?
そういうブランドのひとつから開発の様子を伺ったことがあるのだが、いわく、部署をまたいで子持ちのお母さん社員たちによるチームを作り、その意見を参考に製品を作っているという。
なるほど、今なお育児や家事をするのはお母さんであるケースが多いらしいので、適切な人選ではある。総務省の2017年の調査によると、6歳未満の子がいる共働き夫婦における妻の週あたり家事関連時間は6時間5分だが、夫のそれは1時間22分しかない。共働き夫婦でさえこの格差なのだから、専業主婦の家庭では、育児はほぼ完全に妻の仕事になるだろう。
だが、「お父さん」はどこに行ったのか?
主に育児・家事を担う専業主婦だって休日は必要だから、子供を夫に預けて出かけることはあるはずだ。そんなとき、お父さんの手元に残るアイテムが、お母さんだけを意識して作ったものだったら? お母さんから意見を聞いて作った育児文具が、お父さんにとって使いやすいとは限らないはずだ。デザインだって、共用できるものであるかは分からない。
きっとお父さんは困惑するに違いない。育児に苦手意識を持ってしまうかもしれない。
現に、育児グッズの使い方が分からないお父さんが、いちいちお母さんに電話をして質問するケースも見聞きした。これではお互い気が休まらないだろう。
育児文具は素晴らしいものだが、お母さんだけを意識して作ってしまうと、結果的にお父さんを育児から遠ざけ、いわゆる「ワンオペ育児」に拍車をかけてしまわないか、懸念している。
育児文具は、親も育てる
ところで、育児文具とはどんなものかというと、子供が将来身に着けなければいけないこと、たとえば片付け、作文、時間管理などについて、文房具を通して身に着けるものが多い。子供たちは、育児文具を通して能力を身に着けていくのだ。
ならば、「親を育てる文房具」があってはいけない理由はない。育児に苦手意識がある親が、気楽に子育てができるようスキルアップを身に着ける文房具。そんな「育児文具」があってもいいだろう。