痩せているのは良いこと?

私は、ノートの使い方をSNSなどで解説するために使用サンプルを作ることがある。なにも書き込みがないと実感がわかないので、架空の内容を書き込んで使い方の例を示すのだ。

そのサンプルだが、最近、やらないように決めたことが一つある。体重など、ダイエットのログを作らないようにしたのだ。

読書や勉強の記録などをログとして書き込んだノートを作るのは近年の流行りなのだが、ダイエットログをつける人もいる。もちろん、本人が痩せたくて痩せるのは自由だし、健康のために減量している人もいるだろうが、巷のダイエット情報はほとんどが美容目的になっている。

毎日のように見かける電車やネットの痩身・ダイエット関連の広告では、「痩せていることが美しい」というメッセージが、あの手この手で繰り返し発信されている。だが、果たしてそうだろうか?

  • 痩せていることは美しいことなのだろうか?

たしかに、太りすぎだと健康面で様々なリスクがあることがわかっている。しかし、痩せようとしている人の相当数は、健康面には問題がないのではないだろうか。厚生労働省の令和元年「国民健康・栄養調査報告」で若い女性の肥満率を調べると、肥満に相当するのは

  • 15~19歳で2.5%
  • 20~29歳で8.9%
  • 30~39歳で15%

しかいない。

この数字に含まれないのにダイエットをしているなら、それはメディアに溢れる「痩せていることは美しいことだ」という価値観の刷り込みの結果だ。

押し付けからの脱却

体型に限らず、特定の価値観の押し付けをやめようとする動きは世界的に起きている。よく話題になるのが性差だ。古典的な「男性らしさ」「女性らしさ」から脱却しようともがく人は多い。

話をノートのサンプルに戻すと、私がサンプルでダイエットログを作るのを止めようと思ったのは、文房具が身近だからでもある。多くの人が毎日のように触れるのが文房具だから、そこにステレオタイプ特定の価値観の押し付けが存在するのは怖いことだ。

だから、以前も書いたが、「肌色」を「ペールオレンジ」とか「うすだいだい」に呼び変えるような動きも重要だと思う。肌の色は、ひとつだけではないからだ。

影響力を自覚しよう

ただ私は、文房具業界は社会に与える影響力の大きさの割に、古い価値観の押し付けに無自覚な面もある印象を持っている。自覚的なメーカーもあるが、そうでないところも多い。

だが、自覚しなければいけない。文房具ほど身近なものは少ないし、文房具は老若男女が毎日使うものだ。その影響力は、もしかしたらTVや新聞並みに強いかもしれない。だから、目先の売り上げだけではなく、長期的な視点に立つべきなのだ。