マレー系のほか、中国系やインド系、先住民などが互いを尊重しあう多民族国家・マレーシアでは、多種多様な文化を反映した料理が根付いている。マレーシアで最もポピュラーなあいさつが「スダ マカン?(ご飯食べた?)」と言うところにも、いかに食を大切にしているかが分かるだろう。そんなマレーシアの朝食をちょっとのぞいてみよう。
料理は民族のアイデンティティーの源
移民の多いマレーシアでは、祖先から引き継いだ味がアイデンティティーの源となっており、その味が異なる民族とのコミュニケーションとしての役割も担っている。そもそもマレーシアには、ココナツミルクとスパイスが決め手の「マレー料理」、中国からの移住者がマレーシアで育んできた「中国系料理」、北インドから南インドまでの料理がそろう「インド系料理」、マレー系のスパイスと中国系の食材がミックスした「ニョニャ料理」という"4大料理"が存在している。
このように民族ごとに食文化が異なるマレーシアの中で、民俗の垣根を越えて親しまれているのが「ナシレマ」である。昔は朝食の定番だったようだが、今では1日中食べられており、街ではビジネスパーソンが通勤途中やランチ休憩に「ナシレマ」を買い求める姿はよくある風景のようだ。
「ナシ」はご飯、「レマ」は油(ココナツオイル)の意味で、ココナツオイルで炊いたご飯のほか、揚げた小魚、ピーナツ、卵、キュウリなどを添え、味の決め手となる甘辛のサンバルソースを混ぜていただく料理。
サンバルソースは各家庭で秘伝の味があるようで、ピリッとした辛さの中にペースト状になるまで炒められた玉ねぎの甘さが生き、日本人にも合う味わいに仕上げられている。専門屋台に行くと、基本の4種の具材のほか、鶏の唐揚げや羊のココナツミルク煮などをトッピングしてくれるところもあるので、ぜひ各屋台の味を食べ歩きしてみよう。
そのほかにも、インド系料理の「ロティ・チャナイ」も朝食でよく見かける顔だ。インド料理のナンのようなフワフワな薄いパンにカレーをディップして食べる料理で、レストランなどではパンの生地を職人技で薄く伸ばしていく様子を見ることもできる。「ビーフンゴレン」「ミーゴレン」と並んで愛されている「ナシゴレン」は、日本で言う焼きそばのようなもの。モチモチの麺の食感はもちろん、ピリッとした刺激が楽しめるスパイシーな味が特徴の一品である。
甘くてフワフワなミルクティー
食後にはミルクティー「テ・タレ」を。「テ」はお茶、「タレ」は引っ張るという意味で、その名の通り、高いところからコップめがけて注いで作るため、紅茶の上には厚いクリームがのっている。注ぐ姿はパフォーマンスのように見えるのだが、こうして注ぐことで熱いお茶を適温になるように冷まし、味をマイルドにする役割もあるようだ。
とあるマレーシアの人に、「マレーシアでは、まず食事に困ることは絶対ない。マレーシアに来たら、朝2回、昼2回、夜2回と1日6回食べてほしい」とアドバイスをいただいたことある。日本に比べて物価が安く、手軽に料理が楽しめる屋台も多いマレーシアでは、朝からはりきってグルメ歩きを楽しんでみよう。
※企画協力:マレーシア政府観光局