無印良品を展開する良品計画では、"「いつも」の品で「もしも」の備え"として、普段使いできる品で災害に備えることを提唱している。今回は、担当者である企画デザイン室 高橋さんにお話を伺った。
考えるスイッチを入れること
――他に気をつけるところはありますか?
災害っていろいろなパターンがあると思うんです。東日本大震災では実際に津波で亡くなった方も多いですが、阪神大震災のときは家の倒壊と家具転倒で多くの方が亡くなっています。南海トラフでは津波が来るといわれていますが、東京で首都直下型の地震がきたら最大のリスクは建物の倒壊や家具の転倒ではないでしょうか。自分の住んでいる環境、居住エリア、主に暮らす場所にどういうリスクがあるか把握しないと、備えられないと思うようになりました。
やっぱり一度自分のなかで飲み込まないと、受け身で「これを備えていれば大丈夫」は成立しないと思います。こういう話をすると難しい印象になってしまうのですが(笑)。
――いろいろな方にもお話をきいているんですか?
活動に参加すると、消防局の方、防災専門の先生の方、いろんな立場の方と話します。先日知った情報で、小さな子供のいるお母さん方が防災チームをつくっていて、試してみたら乾パンがかたくて子供が食べないと(笑)。考えようとスイッチが入った結果、おかしいことに気づいたんですね。受け身になっていると絶対だめだと思います。
東日本大震災までは「3日間の食糧備蓄でよい」と言われていたのですが、その提言も「食糧備蓄は1週間」に変わって。状況によっては避難所に物資が届かない、避難所にも入れないということが起こりうるわけですね。そこで、自助として1週間備えようというのが、いまひとつの指標になっているんです。津波のリスクさえなければ、家で籠城するのが最先端として考え直されています。
どうやって安心安全にすごせるか、例えば携帯トイレとか、電化製品でなくカセットこんろ(※無印良品での取り扱いあり)を持った方がいいとか。上下水道が復旧しないことを考えると、トイレ問題は深刻です。また、電気やガスが復旧しない場合はカセットこんろが非常に役に立ちます。
――考えるきっかけがないと
「1.17、3.11、9.1など、震災のあった日に、ものを少しずつ買い足す」という方の意見をきいて、とてもいいなと思いました。一気に揃えると結構な金額になりますので、少しずつ備えるのは賢いですよね。そのときにチェックもできるのはとても良いです。
5年ほど防災についてやってきて、どうしても2011年の震災が風化してきている状況を感じます。それと比例して、防災のための商品がスポットをあびなくなっている。だからこそ、いつもの品での備えをもっと考えたほうがいいと思いますね。
※次回は5月6日(水)更新予定です