本を読もう、と思い立ったその日が記念日。『今日はナニヨム?』は、あるキーワードをもとに関連本を紹介していくコーナーです。文学界にまつわる出来事だったり、いまメディアを騒がせる出来事だったり、本を読むきっかけはなんでもアリ。いままで触れたことのない本たち──そんな本との出会いを作れたらと思います。
2月24日は小説家・直木三十五の忌日。直木三十五って誰? という人でも「直木賞」という言葉には聞き覚えがあるはず。大衆小説作品に与えられる文学賞の、あの直木賞です。正式には「直木三十五賞」という名称で、直木が亡くなった翌年の1935年に、「芥川賞」と共に設立されたそうです。歴代の直木賞作家といえば、井伏鱒二、司馬遼太郎、山崎豊子などなど日本の文学史に残る人々が数多く名を連ねています。芥川賞は芥川龍之介を記念したものだとすぐに想像できる一方で、直木賞は誰にちなんでいるのか長らくの疑問でしたが、これでスッキリです。
さて、直木三十五の作品は直木賞の対象作品にも反映されているように、いわゆる大衆小説でした。代表作の『南国太平記』は、幕末に起きた島津藩のお家騒動をテーマにしていますが、主要な登場人物は博士王仁(百済から渡来した賢者)がもたらした秘法で呪術対決を繰り広げ、一方で実行部隊が苛烈な大殺陣を見せるという、今ならライトノベルのネタになりそうな設定。文体は異なれど、剣と呪術は日本の大衆文学史上、永遠のテーマというわけですね。
『南国太平記』(上/ 下)
[内容紹介]
調所笑左衛門の改革策断行で、薩摩藩は財政立て直しに成功した。だが藩主斉興は世子斉彬に家督を譲ろうとしない。洋学好みの斉彬の浪費による財政再崩壊を恐れたのだ。一方、斉興の愛妾お由羅の方は、実子久光への家督継承を画策。その意を受けた兵道家牧仲太郎は、斉彬の子どもたちの呪殺を謀り、斉彬派の軽輩武士は陰謀暴露に奔命する――。藩情一触即発の風雲をはらむ南国藩「お由羅騒動」の顛末。 (「電子文庫パブリ」解説より引用)
『南国太平記』(上/ 下)直木三十五 著
●【電子文庫パブリで電子版を購入】『南国太平記』(上)、1,103円
●【電子文庫パブリで電子版を購入】『南国太平記』(下)、1,103円
『直木三十五伝』(文春文庫)
[内容紹介]
小心にして傲岸、寡黙にして雄弁、稀代の浪費家にして借金王、女好きのプランメイカー、直木三十五。「藝術は短く、貧乏は長し」とばかりに、莫大な借金に追われながら、700篇におよぶ小説・雑文を書き、昭和初期の文壇に異彩を放ち、悠然と人生を駆け抜けた人気作家の全貌をあますところなく描いた評伝決定版。(文藝春秋HPより引用)
『直木三十五伝』 植村鞆音 著
『漂砂のうたう』
[内容紹介]
明治10年。根津遊廓に生きた人々を描く長編
ご一新から十年。御家人の次男坊だった定九郎は、出自を隠し根津遊郭で働いている。花魁、遣手、男衆たち…変わりゆく時代に翻弄されながら、谷底で生きる男と女を描く長編小説。(集英社「BOOK NAVI」より引用)
『漂砂のうたう』 木内昇 著
『月と蟹』
[内容紹介]
「ヤドカミ様に、お願いしてみようか」「叶えてくれると思うで。何でも」やり場のない心を抱えた子供たちが始めた、ヤドカリを神様に見立てるささやかな儀式。やがてねじれた祈りは大人たちに、そして少年たち自身に、不穏なハサミを振り上げる―やさしくも哀しい祈りが胸を衝く、俊英の最新長篇小説。第144回直木賞受賞作。(「BOOK」データベースより引用)
『月と蟹』 道尾秀介 著