皆様こんにちは、マネックス証券の益嶋です。「目指せ黒帯! 益嶋裕の日本株道場」第20回をお届けいたします。本コラムでは、「これから投資を始めたい」「投資を始めてみたけれどなかなかうまくいかない」といった方向けに、投資家としてレベルアップするためのいろいろな知識をお伝えしていきます。今月もまずは最近のマーケット動向を簡単にご紹介します。
景気減速の不安が後退し日経平均は2万2,000円を回復
この連載でも以前からお伝えしてきましたが、昨年から米中の貿易戦争が深刻化した影響で中国経済が大きく減速してしまいました。今や中国は世界第2位の経済大国であり、その中国の景気が悪くなれば世界経済全体に影響が出ます。
特に日本経済と中国経済は地理的に近いこともあって非常に密接にリンクしています。中国への輸出依存度の高い日本企業の多くは、昨年秋頃から業績が大きく悪化しました。
例えば、モーターの製造で知られる日本電産(6594)は中国での需要鈍化が原因となり業績が大幅に落ち込みました。名経営者として知られる日本電産の永守会長は「リーマン・ショック以来の落ち込みだ」と事態の深刻さを表現しました。マーケットには不安が広がり株は売られ、昨年末に日経平均は1万9,000円まで下落してしまいました。
年明け以降、株価は反発したもののなかなか不安は払拭されず、日経平均は2万1,000円台で足踏みしていました。ところが米中の貿易交渉がある程度順調に進んでいるとの報道に加えて、中国政府が実施した金融緩和や財政拡大といった景気刺激策が奏功し、足元で発表された中国の経済指標が改善してきました。
これを受けてようやくマーケットにも安堵感が広がり株価は一段高となり、日経平均は4月15日に約4カ月ぶりに2万2,000円を回復しました。といっても米国のS&P500やナスダック総合指数といった株価指数は4月に入って史上最高値を更新していますから、それに比べると日本株の上昇は物足りないのですが。日本株にも一段高を期待したいところです。
いよいよ始まる決算発表 今回特に注目の理由とは
さて、4月末から5月中旬にかけて3月決算の日本企業の決算発表が行われます。3カ月に1度の決算発表はその好調不調によって株価に与える影響が非常に大きいことからいつも注目を集めます。そして、2つの理由から今回の決算発表は普段よりも一層マーケットの注目を集めています。
1つ目の理由は、上述した中国経済鈍化の影響がどの程度出ているか見極めたいということです。徐々に改善してきたとはいえ、1-3月をならしてみると中国景気は芳しくなかったと言えますし、日本企業の業績にネガティブに作用しているとみられます。その影響がどの程度出ているのかが今回の決算発表で明らかになります。
もう1つの理由は、今回の決算発表が「本決算」の発表にあたるためです。本決算の発表時に企業は原則として4月からスタートしている新しい期の「業績予想」を発表します。
「原則として」と書いたのは、例えば証券会社のように市況の影響が大きく期初時点で合理的な業績予想が困難な場合は業績予想を発表しなくても良いとされているためですが、ほとんどの企業が予想を発表すると考えて大丈夫です。
企業の業績動向について1番よく知っているのは当然企業自身ですから、企業の業績予想にマーケットは常に注目しています。
実は、もともと日本企業は業績予想を控えめに出す傾向があります。強気な予想を出しておいて達成できないよりも、慎重な予想を出しておいて後で予想を上回る業績を達成したほうが見栄えが良いとの思いがあるのかもしれません。
今回の決算では米中貿易戦争の影響もあり、企業の業績予想が通常よりもさらに控えめになるのではとの可能性が指摘されています。そうすると「日本企業の業績は良くないんだな、であれば他の国の株を買おう」というような思考が働いて日本株への投資意欲が弱まり、株価の下落圧力につながるのではないかと不安視されています。
まもなく日本は10連休を迎えます。連休明けには怒涛のように多くの企業が決算発表を行いますので、連休中にお目当ての銘柄をチェックしておくなどしてぜひ投資成果につなげていただければと思います。
今月も最後までお読みいただきありがとうございました。それではまた次回!
執筆者プロフィール : 益嶋 裕
マネックス証券 マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザー
早稲田大学政治経済学部政治学科卒。2008年4月にマネックス証券に入社。2013年からアナリスト業務に従事。2017年8月より現職。現在は「日本株銘柄フォーカス」レポートや日々の国内市況の執筆、各種ウェブコンテンツの作成に携わりながら、オンラインセミナーにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員。
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