自転車に乗る人の年齢や自転車に乗る目的が変われば、自転車事故への備え方ももちろん変わります。そこで最終回の今回は、お子さんがいる場合、趣味で自転車に乗る場合、シニアの場合と3つのケース別に、より自分に合った保険選びをするためのポイントをご紹介します。
まずはしっかりとルールを守ることから
警察庁交通局が発表した「平成29年における交通死亡事故の特徴等について」によると、2017年における自転車関連事故件数は90,407件(自転車乗用者が第一当事者・第二当事者となった事故を計上)で、全交通事故の19.1%にあたります。
自転車事故のなかでは、とくに対自動車の事故の割合が84%と非常に高いのが特徴です。「自転車対自動車」事故のうち、出会い頭衝突による事故が54%で、最も多く発生しています。
このような事故では、自転車側の
- 安全不確認
- 一時不停止
- 信号無視
- 交差点安全進行義務違反
などの違反も多く見受けられます。
保険でもしもの場合に備えることも大切ですが、便利な自転車がときに凶器になることを理解し、交通ルールをしっかりと守ることも忘れないようにしたいものです。
ケース1 子どもがいる家庭は損害賠償にしっかり備えよう
「自転車対歩行者」の事故は、割合としてはそれほど多くはありません。ただ、「自転車対歩行者」の事故は、とくに自転車のスピードが出ていた場合、高額な損害賠償が発生する大事故になる可能性もあります。
先述の警視庁交通局のデータによると、「自転車対歩行者」の事故当事者を年齢層別で比較したとき、自転車を運転していた人は24歳以下が52%を占めます。これは人口割合が22%であることを考えると、高い数字だと言えます。
子どもが自転車に乗って猛スピードで通り過ぎるのを見て、ヒヤッとした経験がある方も多いのではないでしょうか。
第1回でも触れましたが、小学生が運転する自転車が女性に衝突し、女性が意識不明となってしまい、9,521万円もの高額な賠償金を命じられた事例もあります。
また自転車事故に限らず、子どもは思いがけず他人のモノを壊してしまったり、ケガをさせてしまったりすることもあります。
お子さんのいる家庭は、「個人賠償責任保険」が安心を得るためには大きなポイントになります。まずは、すでに加入している損害保険の特約として加入済みかどうかを確認してみましょう。
ケース2 趣味で自転車に乗るなら+αが必要かを検討しよう
最近では、自転車を趣味として楽しむ人も多くいます。日常生活のなかで自転車を使う場合とは、必要に感じる備えも少し変わってくるのではないでしょうか。
事故への備えももちろんですが、自転車そのものが高額になることが多いため、盗難への備えも気になります。盗難に対しては、盗難補償の付いた自転車保険や盗難・自転車破壊に備える車両専用保険で備えることができます。また、火災保険の家財保険に加入している場合、一定の条件を満たせば補償対象となることもあるので、加入済みの火災保険の補償内容を確認してみましょう。
遠方へ出掛けることが多い場合は、故障した自転車を運んでくれる自転車ロードサービス付きの自転車保険もあります。
ケース3 加入年齢を引き上げたシニア向け自転車保険も
シニア層が自転車保険に加入する場合、保険によっては加入年齢を制限しているものもあるので、注意が必要です。最近では、シニア向けに補償対象年齢を70歳~89歳に設定したものや、加入年齢無制限にしたものも出てきています。ただし、個人賠償責任補償の補償額が低く抑えられている場合などもあるので、補償内容をしっかりと確認する必要があります。
また、第3回でご紹介した「TSマーク付帯保険」は、人ではなく自転車に適用される保険なので、自転車に乗る人の年齢に左右されません。こちらも、補償内容が限定的なところもあるので注意が必要ですが、年に1度自転車を整備することで、安心して自転車に乗れるというメリットもあります。
いかがだったでしょうか。自転車保険について連載でお届けしてきましたが、自転車保険が必要かどうか? 必要なら、どんな補償が必要なのか? を具体的にイメージできたでしょうか。
どんなに評判のいい保険があったとしても、自身のニーズに合っていなければ、それはあなたにとってはいい保険とは言えません。もちろん、逆も同じこと。
“加入義務化”と聞くと「何でもいいから入らなくては!」という気持ちになってしまいがちですが、いろいろな情報に振り回されずに、まずは自分にとって何が必要なのかを明確にすることからはじめてみましょう。
筆者プロフィール: 長谷部敦子
ラーゴムデザイン代表 長谷部敦子 ファイナンシャルプランナー、マスターライフオーガナイザー、メンタルオーガナイザー。父親の看取り介護、自身の結婚を通して、「心」と「お金」の整え方を知ることの必要性を感じ、学びを深める。2012年・2014年の出産を経て、2015年に「しなやかな生き方をデザインする」をコンセプトに起業。家計・起業・扶養などに関わるお金の悩みや、働きたい女性のメンタルについての相談・講師業を中心に活動。働く母の目線で、日々のくらしを快適にする仕組みづくりについての執筆も行っている。「生き方デザイン.com」