ワニブックスは、このほど『めんどくさがりの自分を予定通りに動かす科学的方法』(1,650円/竹内康二著)を発売した。本書は、85年間の研究成果から導き出された「行動の技術」で、「後回し」「手に付かない」「気が乗らない」を解決する一冊。
著者は、明星大学心理学部心理学科・教授の竹内康二氏。学校や企業において、一般的な対応では改善が難しい行動上の問題に対して、応用行動分析学に基づいた方法で解決を試みている。
今回は同書の中から、やってのける人がやっている応用行動分析学的アプローチ法について紹介していこう。
■やってのける人は"即時結果"をちりばめる
思い通りにいかない行動の根底にあるのは、「行動の直後の即時的な結果がその行動の生起に影響を及ぼしており、将来の遅延した結果はその行動に大きな影響を及ぼしていない」という原則です。
この「即時結果>遅延結果」の原則に対して、強い意志を持って立ち向かうのは得策ではありません。行動とその結果の影響を整備することで、対処するほうがいいでしょう。行動を繰り返しながら、得られるまでに時間のかかるポジティブな結果を待っていてもうまくいきません。
望んでいる結果が生じるまでの間に、中間結果のような強化子を得られるように環境を整備するのです。
長距離走を例に考えてみましょう。マラソンなどの長距離を走るのに、42キロ先のゴールを目指して走るのではなく、まずは1キロ地点にある給水所を目指して走って、次に10キロ先を目指してみましょう。最終ゴールを目標にしてしまうと、体力を温存しようとして走り続けるのが難しいので、途中に何度も細かく強化子(結果)が得られる機会を設定するのです。
私も何度かフルマラソンに挑戦したことがありますが、30キロを越えたあたりで足が痛くて痛くて、体もヘロヘロになりました。走るのをやめて歩きたくなったり、リタイヤしたくなったり、「なんでこんなことやろうとしたんだろう」と思ったりしたものです。しかし、そんなときは先のことを考えずに1キロ先まで走ることを目標にして、到達したら自分を褒めて励まして、次の1キロ先を目指すことでなんとか最後まで走り切ることができました。
これは気持ちが楽になるといった精神論ではなく、即時結果の強い影響力を活用した応用行動分析学的アプローチの活用です。
勉強の場合、合格を目標にするとやり続けるのが難しくなります。つらいと感じたら、たとえば、問題を1問解くだけで良しとする。それができたら自分を褒め、次の問題を解く。これを繰り返していくことでゴールまで走り続けることができます。
遅延結果までの長い道のりに、たくさんの即時結果が得られる機会を設定することは、多くの人が日常の中で自然にやっていることだと思いますが、原理を理解した上で意図的、意識的に設定できるようになれば、自分を思い通りに動かしやすくなります。
様々な行動の思い通りにいかない問題に、活路を見出すことができるようになるのです。「即時結果>遅延結果」の原則のために、思い通りに動けない行動に対して、自分で工夫して遅延結果まで行動をつないでいく即時結果を配置することが、応用行動分析学で言うところのセルフマネジメントです。
自分の行動を管理するために、意志をコントロールするのではなく、環境を整備して強化子を管理しましょう。
書籍『めんどくさがりの自分を予定通りに動かす科学的方法』(1,650円/ワニブックス刊)
同書では、本稿で紹介した以外にも「すぐやる人」「後回ししない人」に変われるヒントを行動分析学に基づいて解説。気になる方はチェックしてみてはいかがだろうか。