インフレで円安傾向が強まるなか、現金で日本円を持っていると…
リーマン・ショック発生後のアメリカは積極的な金融緩和政策をとったことから相対的に日本円が買われ、長い間円高推移となっていました。また、バブル崩壊後の日本は長いデフレに陥っていたこともあり、資産を日本円かつ現金で保有していれば相対的に価値が高まるという状況でした。ただ、足元では安倍政権による経済・財政政策によってデフレからの脱却を果たしつつあります。そして、アメリカが金融緩和を縮小する一方、日本銀行は金融緩和を継続する方針を打ち出していることで為替は円安に振れつつあります。
つまり、インフレで円安傾向が強まるなか、現金で日本円を持っていると徐々にその価値が下がってしまうわけです。円安、インフレなのに、資産の全額を日本円、かつ現金で保有しているだけではせっかくの資産を増やせるチャンスを逸してしまいます。そこでインフレに強いと言われている株式投資や、ドル預金などに一部資産を振り分けることが必要となってくるわけです。この連載ではこれまで株式投資を中心にお話してきました。今回が最後ということで総括の意味をこめてまとめてみたいと思います。
"株主"になるメリットって何?
株式投資をするということはその企業の株主になるということです。では株主になるメリットとは何でしょうか。お金の損得に限っていえば以下の4つに集約されると思います。
株価が上昇すること
株価が上昇すれば売却して差額を利益として享受することができます。キャピタルゲイン(売買益)を得ることは投資家の醍醐味だと言えるしょう。
株主配当が受けられること
株式を保有していれば企業の利益の分配である配当金を受け取ることができます。インカムゲインを狙う投資家も多くこちらも投資家の醍醐味と言えるでしょう。
株式分割で株数が増えること
保有している株式が分割して株数が増えても株価は半分になるのでその時点ではメリットはないのですが、最低投資金額が下がることで流動性が高まり、株価が上昇するケースがみられます。
株主優待が受けられること
企業の株主になると株主優待でその企業の割引券や優待券、食品などがもらえます。これはあながち軽視できない特典で、NISAがスタートしてから最近注目されていますね。使用する可能性が高い優待制度を設けている企業を狙うのがポイントです。
また株式市場は世界の情勢や政治の動向などあらゆる事象に影響を受けます。そのため株式運用を始めると、世界中の政治や経済、社会など、いろいろなニュースが気になって調べる習慣がついて、いまの世の中がどう動いているのかという知識が増え、教養が深まるというメリットもあります。
"株主"になるデメリットって何?
一方デメリットは何でしょうか?
一番はやはり、企業の業績悪化などで株価が下がる可能性があることでしょう。株式投資にのめり込み、生活が破綻するまでお金をつぎ込んでしまっては危険です。みなさんそれぞれのできる範囲の金額で投資をしてくださいね。またリスクを回避するためには分散投資も必要です。「卵は1つのカゴに盛るな」という格言をご存じですか? 卵を1つのカゴに盛ると、そのカゴを落としてしまったら全部の卵が割れてしまうかもしれませんが、複数のカゴに分けて卵を盛っておけば、1つのカゴを落として卵が割れてしまっても、他のカゴの卵は影響を受けずにすむということです。
株式投資に当てはめると、特定の銘柄だけに投資をするとその銘柄が下落した場合のリスクが高まるので、複数の銘柄に投資をおこない、リスクを分散させたほうがよいということです。これを「銘柄分散投資」といいます。このほか、毎月決まった金額で同じ銘柄を購入することで株式の購入単価を平均化する方法もあります。「ドルコスト平均法」といったパターンです。ハイリターンは狙いにくいですが、長期投資を考えている方にはいい方法かもしれませんね。
株式投資には、大型株、小型株、そして業種もいろいろあります。内需企業、外需企業、さまざまな分野の株に分けて投資することで、リスクを分散することができますよね。
為替に置き換えてみても、同じ円売り戦略でもドル買い円売りだけでなく、ユーロやポンド、オーストラリアドルなどを買って円を売ると、ドルが暴落した場合でもリスクを軽減できるのです。
この連載を読んでくださった方は、もう最低限の知識は備わっているはずです。
さあ、ご自分の資産管理の一環として、株式投資を始めてみませんか?
執筆者プロフィール : フィスコ リサーチレポーター 三井 智映子
共立女子中学校・高校を経て、早稲田大学政治経済学部へ。2001年から芸能活動を開始し、現在テレビ、CM、舞台などに出演。また、いち消費者とアナリストの中間的な存在であるフィスコのリサーチレポーターとしても、株式やFXの現場を取材レポートしています。