みなさん、こんにちは。上杉さくらです。ラジオ聴いていますか? まずはお便りを紹介します。福島県在住のあづまさんからです。いらっしゃ~い。

私も上杉さんと同様にICF-6700を使っていました。最初は小5の頃にTPR-101という3バンドラジカセで聞いていました。その後高校生になってからバイトでお金をためてFR-101DDの中古を購入したりして、就職してからもBCLは細々と続けて、最近は復活組も多く賑やかになってきました。これからも頑張って下さい。

お便りありがとうございます。愛機が同じだと親近感がわくのはなぜでしょう。ICF-6700同志ですよね。

「同志諸君、赤い手帳を持って交信だ!」

いやいや、悪のりはいけませんね。ゴダールの『中国女』ではあるまいし。

さて、今もなお、わたしのICF-6700は現役です。E-スポを聞いたり、日本シリーズの中継ではらはらしたり、NHKラジオの「夜はぷちぷちケータイ短歌」を楽しんでたりしています。

最近、関川夏央さんの『現代短歌 そのこころみ』(集英社文庫)を読み直したばかりなので、「ケータイ短歌」、新鮮です。11月9日放送のゲストは歌人の穂村弘さん。そのシュールな選評がたまりません。まじめな顔して、どきりというコメントを淡々と述べる有様が目に浮かびます。そういえば、穂村弘さんの本にもラジオに関する句がありますね。

「札幌局ラジオバイトの辻君を映し続ける銀盆を抱く」
(『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』2001年 小学館より)

いや、光景が浮かびますよね。いいなぁ、若いって。恋心。……あれれ。

え、短波の話はどこにいったんだ!

短波放送聞いていないじゃないかって。もちろん聞いてますよ。

今日原稿を書いているのは、日曜日の夜なのですが、楽しんでいるのは、ヴォイス・オブ・アメリカ(VOA)。と言っても、ニュースを聞いている訳ではありません。アメリカ合衆国といえばジャズ。某BCL有名掲示板でも、話題になっていましたが、VOAの「Jazz America」という番組は昔から有名で、演奏あり、ミュージシャンとのインタビューあり、と、日常を忘れさせてくれるとても楽しい番組です。愛機とともに過ごす日曜の夜。ブランデーを片手にもった……つもりで、発泡酒を飲みながら、ゆるやかな夜がすぎてきます。

VOAの1952年のQSL。アメリカ合衆国の地図のデザインが力強い

原稿やゲラのチェック山ほどたまっていますけど……神よ許してください。

サイト情報

■ヴォイス・オブ・アメリカ(VOA)
http://www.voanews.com/
「Jazz America」は日曜日22時すぎ~23時。ニュースのあとです。短波ならば9345KHzがお薦めです。ストリーミング放送も聞けます。サイト左上の「News NowLive」をクリックしてください。
■VOA Music Mix
http://www.voanews.com/english/Entertainment/musicmixold.cfm
ジャズのほかに、ポップス、ロック、カントリー、ワールドなどの番組があります。オンデマンドで最新の放送が聞けますので、番組を聞きのがした人にもお薦めです。
■夜はぷちぷちケータイ短歌
http://www.nhk.or.jp/tanka/
NHK第1の番組。短歌がこんなにおもしろいとは! NHKラジオ第1 日曜21時5分~21時55分
お笑いタレントだいたひかるの、無気力っぽいはなしや、ゲストの語りも魅力。先週の番組がオンデマンドで聞けるのも画期的です。

アメリカのリベラルと保守とは?

話が変わりますが、今年は、アメリカ合衆国関連の新書が元気でした。飯山雅史さんの『アメリカ宗教右派』(中公新書ラクレ)や堤未果さんの『ルポ貧困大国アメリカ』(岩波新書)が注目されました。改めて、『アメリカ宗教右派』を読んでみると、リベラルと保守の流れがとてもわかりやすく書かれていました。

それによると、

  1. リベラルが意図するところは、「政府への信頼と積極主義」(「大きな政府」)で、これは、主に民主党の主張につながる。
  2. 保守が意図するところは、自由主義の伝統を守り、「小さな政府」を目指すこと。こちらは、主に共和党の主張につながる。
  3. 「20世紀のアメリカはおおむね3分の1ずつに時代を画することができ」、「初めの3分の1世紀は、自由放任主義と「小さな政府」の時代」であったこと。
  4. そして、大恐慌のあと保守主義は解決策を提示できなくて、解決策を出した「民主党」すなわちリベラルにとって替わられたこと。
  5. 「1970年代半ばから、リベラルの行き過ぎに反発した保守勢力の反乱が生まれ、次第に「保守の時代」に移っていく」ということ。

そういえば、オバマさん、大統領になりましたね。オバマさんは民主党ですが、ここ約30年間の自由放任主義と「小さな政府」の政策は変わるのでしょうか? そうなると、またリベラルの時代に変わり、オバマさんの合衆国大統領当選は、時代の転換点になったとも言えるでしょう。一方で、日本の戦後はアメリカ化といえましょうが、日本の今も米国と同じく時代の転換点なのでしょうか?

アメリカの公共性の強さと、宗教局あとさき

The International Radio Club of Americaが発行した、URBONOの対するQSL。裏面(右)を見ると、数多くのラジオ局が協力して放送を行ったことがわかる

さて、『ルポ貧困大国アメリカ』でも紹介されている2005年8月のハリケーン「カトリーナ」の被害。この本では民営化による人災であると報告がされています。

「カトリーナ」で思い出したのですが、被災地のニューオリンズでは、多くのラジオ局が被害を受けました。この時同地のラジオ局WWL局の呼びかけで、ラジオ局が協力してUnited Radio Broadcasters of New Orleansという連合体を結成し、公共性の高い同一の情報番組を流しました。また、宗教局WHRIが全米各地に避難した被災者のために、短波でこの番組を中継しました。

※参考 : 「月刊短波、今月のQSL、2006年2月、<United Radio Broadcasters of New Orleans(URBONO)>、http://www5a.biglobe.ne.jp/~BCLSWL/QSL0602.html」

この放送は当時日本でも聞こえたのですが、アメリカ合衆国の人々のパブリック(公共性)の意識に強く感動したのを覚えています。

こちらは、WHRI(World Harvest Radio International)が発行したQSL。裏面(右)を見ると、ハリケーンの被害者のための放送を受信したことが記載されている。サイトはこちら

WYFR(上)とFamily Radio(下)のQSL。2枚を合わせて地球の絵柄が完成する。上は、ドバイ中継の放送を受信して入手。下は台湾中継の中波のFamily Radioを受信して入手

カトリック系放送局、WEWN(Eternal Word Television Network <EWTN>)のQSL。毎時にIDが出るので確認は容易。スペイン語放送もある

『アメリカ宗教右派』で思い出したのですが、アメリカ合衆国からの宗教放送も短波で日本でも聞こえます。今、注目はFamily Radio(本拠地 : 米国サンフランシスコ)。フロリダから短波放送(WYFR)が放送されており、18~19時台、日本でも7455KHz、6890KHzで聞こえます。そのほかWEWNが7555KHzで聞こえるようですが、私の自宅からはノイズがひどくて確認できませんでした。以前はKAIJ、KTBNという局の放送が聞こえましたが、最近はどうなったのでしょうか。KAIJは放送を取りやめたと言われていますし、KTBNのサイトを見てもどうやら短波放送は行っていないようです……。WWCRも以前に比べて日本では聞こえにくいようですね。

TBN(Trinity Broadcasting Network)の短波放送局、KTBN(ユタ州)のQSL。現在は放送をしているのかは、不明。サイトはこちら

70年代FEBCは、マニラのFEBC、済州島のHLDA、サンフランシスコのKGEIの3局から日本語海外向け放送を行っていた。これはKGEIのQSLカード

WTJC(Fundamental Broadcasting Network)のQSL。2004年に4月末に受信したもの。サイトを見ると短波放送は行われているものの、最近は日本では聞こえないようだ。サイトはこちら

Caribbean BeaconのQSL。同局はカリブ海のアンギラにあり、1997年開局。Gene Scott博士の宗教演説が中心である「Universal Network」を中継していた。Universal Networkは、かつてロシア中継やレバノンの放送局からの中継放送も行われていた。米国からはWWCR(テネシー州)やKAIJ(テキサス州)も中継を行っていた。KAIJは放送を中止している。Universal Networkのサイトはこちら

サイト情報

■Family Radio
http://www.familyradio.com/
http://worldwide.familyradio.org/ja/
日本語放送も行われている。
■WEWN(Eternal Word Television Network <EWTN>)
http://www.ewtn.com/radio/
■WWCR Shortwave
http://www.wwcr.com//

最後にセント・ヘレナからの放送を

今月11月16日朝(日本時間)に、アフリカ沖の孤島、セント・ヘレナ島から1年に1回の短波放送が行われます。わたしは一昨年聞いたのですが、はっきりと聞こえたのにびっくりしました。今年はどうでしょうか? 楽しみですね。

それでは。

サイト情報

■ラジオ・セント・ヘレナ
http://www.sthelena.se/radiosth.htm

アフリカの孤島セント・ヘレナ島は、ナポレオンの流刑地であるが、1990年代、この島より短波放送が1年に1日だけ行われた。99年を最後に廃止されていたが、リスナーの呼びかけにより2006年11月4日の1日だけ復活された。これはそのQSL。右はオランダのリスナークラブDSXCIが発行したラジオ・セント・ヘレナのQSL