DCコミックスを代表するヒーロー・バットマンは、1939年に初登場して以来、80年以上の長きにわたり愛されてきました。ブルース・ウェインという大富豪の青年が、夜な夜な黒いバットスーツに身を包み、私財を投げ打ってゴッサムシティを守るヴィジランテ・バットマンになるという設定は、アメリカで大きな支持を得ました。

人気は世界に広がり、現在では、ダークヒーローとして世界中で親しまれるキャラクターとなりました。孤独を抱えながらも正義のために戦うその姿は、多くのファンに感動を与えてきました。

そしてこの「バットマン」をモチーフに、多くの映画が制作され、時代ごとにさまざまな俳優が「バットマン」を演じてきました。

本記事では、歴代のバットマン俳優とその特徴、さらには彼らがどのようなバットマン像を作り上げたかを解説していきます。この記事を読むことで、歴代バットマン俳優の魅力を深く知り、改めて映画シリーズを楽しむきっかけになるでしょう。

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歴代の「バットマン」役俳優一覧

映画の中でバットマンことブルース・ウェインを演じた歴代の俳優を紹介します。

初代バットマン:マイケル・キートン

登場作品:『バットマン』 / 『バットマン・リターンズ』

1989年に、ティム・バートン監督の映画『バットマン』で、マイケル・キートンは初めてバットマンを演じました。

ブルース・ウェインとしては控えめで落ち着いた印象を持つ一方、バットマンとしては陰のあるヒーロー像を作り上げ、冷静でミステリアスなキャラクターとして描かれています。彼の演じたバットマンは、心理的な深みと独自のカリスマ性で多くのファンに支持されました。

マイケル・キートンは、『バットマン』(1989年)と続編『バットマン・リターンズ』(1992年)でバットマンを演じました。当時、『ビートルジュース』で人気を博していたキートンのキャスティングは「コメディ俳優」というイメージから議論を呼びましたが、結果としてその演技力が高く評価されました。

その後、キャリアは低迷したように見えましたが、2014年のアレハンドロ・G・イニャリトゥ作『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』では、過去のスーパーヒーロー俳優という自らのキャリアを彷彿とさせる役柄で熱演を見せ、高い評価を受けました。2023年の映画『ザ・フラッシュ』では、ふたたびバットマン役を演じています。

マイケル・キートンの主な出演作 『ビートルジュース』(1988年)/『ゴスフォード・パーク』(2001年)/『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014年)/『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年)など

2代目バットマン:ヴァル・キルマー

登場作品:『バットマン フォーエヴァー』

ヴァル・キルマーは1995年公開のジョエル・シューマカー『バットマン フォーエヴァー』でバットマンを演じています。彼のバットマンは、精神的な葛藤を抱えつつも、軽快さを持ち合わせたキャラクターとして描かれました。ブルース・ウェインとしては知性と優雅さが強調される一方、バットマンとしては、孤独と使命感を織り交ぜた演技が印象的です。前2作とは異なる新しいアプローチを試みたものの、反応は賛否両論でした。

ヴァル・キルマーは1986年の『トップガン』のアイスマン役で注目を集めました。その後も1991年の『ドアーズ』ではミュージシャンのジム・モリソンを演じて評価を得て、『バットマン フォーエヴァー』でバットマン役に抜擢されました。

ヴァル・キルマーの主な出演作 『トップガン』(1986年)/『トゥルー・ロマンス』(1993年)/『アレキサンダー』(2004年)/『トップガン マーヴェリック』(2022年)など

3代目バットマン:ジョージ・クルーニー

登場作品:『バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲』

ジョエル・シューマカー監督による1997年の続編『バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲』でバットマンを演じたのが、ジョージ・クルーニーです。ブルース・ウェインとしての華やかさが強調される一方、バットマンとしての深みがやや薄れているとの意見もあるようです。クルーニー版のバットマンは軽妙でユーモアを交えたキャラクターとして描かれており、作品全体もコメディ色が強い印象です。

ジョージ・クルーニーは1994年から医療ドラマの『ER 緊急救命室』に出演し、ブレイクしました。その後、俳優だけでなく、プロデューサーや監督としても活躍。「オーシャンズ」シリーズなどのエンターテインメント作品から、『スーパー・チューズデー ~正義を売った日~』といった社会的なテーマを扱った作品まで、さまざまな作品を制作しています。2023年の映画『ザ・フラッシュ』では、彼もバットマン役としてノンクレジットで参加しています。

ジョージ・クルーニーの主な出演作 『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(1996年)/『オー・ブラザー!』(2001年)/『グッドナイト&グッドラック』(2005年)/『ゼロ・グラビティ』(2013年)など

4代目バットマン:クリスチャン・ベール

登場作品:『バットマン ビギンズ』 / 『ダークナイト』 / 『ダークナイト ライジング』

クリスチャン・ベールは、2005年の『バットマン ビギンズ』から始まるクリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト」三部作でバットマンを演じています。ベール版のバットマンは、ヒーローの苦悩や葛藤を深く掘り下げられており、より現実的で複雑な性格を持つキャラクターとして描かれています。

演じるクリスチャン・ベールは、役柄に合わせて肉体改造することでも知られています。2004年の『マシニスト』では不眠症の男性を演じるため、60ポンド以上減量して役に臨んでいます。役柄によっては増量したり髪を抜いたりと、肉体を変化させることで、徹底的に役柄に入り込む俳優です。

1987年のスティーヴン・スピルバーグ監督作品『太陽の帝国』にて13歳で映画デビューした彼は、2000年の『アメリカン・サイコ』で高い評価を得ました。その後、『バットマン ビギンズ』(2005年)、『ダークナイト』(2008年)、『ダークナイト ライジング』(2012年)からなる「ダークナイト」三部作のすべてに出演。実在のボクサーを演じた2010年の『ザ・ファイター』ではアカデミー賞男優賞を受賞しています。

クリスチャン・ベールの主な出演作 『リベリオン』(2002年)/『ターミネーター4』(2009年)/『アメリカン・ハッスル』(2013年)/『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2015年)など

5代目バットマン:ベン・アフレック

登場作品:『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』 / 『ジャスティス・リーグ』 / 『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』 / 『ザ・フラッシュ』

2016年の『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』から「DCエクステンディッド・ユニバース(DC Extended Universe / DCEU)」のバットマンを演じたのがベン・アフレックです。DCEUのバットマンは、財力と権力を手にした中年男性として描かれています。無情な現実に怒りと失望を感じ、自らの正義を貫こうとするキャラクターです。

アフレック版バットマンは2017年の『ジャスティス・リーグ』、2021年の『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』、2023年の『ザ・フラッシュ』にも登場しています。

ベン・アフレックは1997年の『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』の脚本・出演で注目を浴び、アカデミー賞脚本賞を受賞しました。俳優として『パール・ハーバー』(2001年)などのビッグバジェット作品や『そんな彼なら捨てちゃえば?』(2009年)といったラブコメディ作品など、幅広い分野の作品に出演しています。さらに脚本・製作・監督などでも活躍しており、監督・主演を務めた2012年の『アルゴ』ではアカデミー賞作品賞を受賞しました。

ベン・アフレックの主な出演作 『アルマゲドン』(1998年)/『デアデビル』(2003年)/『ゴーン・ガール』(2014年)/『最後の決闘裁判』(2021年)など

6代目バットマン:ロバート・パティンソン

登場作品:『THE BATMAN-ザ・バットマン-』

2022年のマット・リーブス監督作『THE BATMAN-ザ・バットマン-』でバットマンを演じたのは、ロバート・パティンソンです。この作品のバットマンはまだ30歳という若さで、バットマンとして自警団活動を始めて2年目の青年として描かれています。内省的で家に閉じこもりがちな、荒削りなヒーローです。

ロバート・パティンソンは2008年から始まった「トワイライト」シリーズでヴァンパイアのエドワード役でブレイク。その後、『グッド・タイム』(2017年)や『ライトハウス』(2019年)といったインディペンデント映画でも新たな才能を開花させています。

ロバート・パティンソンの主な出演作 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(2005年)/『トワイライト~初恋~』(2008年)/『ディーン、君がいた瞬間』(2015年)/『TENET テネット』(2020年)など

バットマン人気が続いている理由

バットマンが長年にわたり愛され続ける理由は、その多面的なキャラクター性にあります。

夜な夜な黒のバットスーツに身を包み、ゴッサムシティを守るバットマン。その正体は、ウェイン産業のオーナーである大富豪で、豪邸に有能な執事、アルフレッド・ペニーワースと2人で暮らす孤独な男。私財を投げ打ってバットスーツ、バットモービルなどを開発し、バットケイブで作戦を練っている……。

少年時代に父と母を悪漢に殺されて以来、悪を憎んでゴッサムシティの悪を倒す活動を始めたという彼は、スーパーヒーローでありながら、特別な超能力を持っていません。パワードスーツに身を包んではいるものの、基本的にはただの人間であるため、観客が共感しやすいと言えるでしょう。また、暗い過去や内面の葛藤と向き合いながら戦う姿は、人間の弱さと強さの両方を象徴しています。

さらに、歴代の俳優やクリエイターがそれぞれの個性で、時代ごとに新しい解釈を加えてきたことも、バットマンというキャラクターやその世界観に大きな魅力をプラスしています。それぞれのバットマンが見る人に異なる感情を与えるため、映画シリーズを通じて新鮮な体験を提供し続けています。

歴代の「バットマン俳優」を紹介しました

この記事では、映画でバットマンを演じてきた歴代俳優の演技や特徴、そして彼らがどのようにキャラクターを解釈したのかを紹介しました。

どの俳優が演じたバットマンにも、それぞれの魅力があります。今後も新たな俳優がバットマンを演じ、さらなる進化を遂げることでしょう。ぜひ歴代の作品を見直し、それぞれのバットマン像を楽しんでみてください。

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