こんにちは。ファイナンシャルプランナーの中山浩明です。近年、結婚や出産時の年齢が高くなる傾向にあります。連載『晩婚者のためのマネー術』では、そうした"晩婚化時代"に応じる形で、晩婚の方々を対象にした"マネー術"について解説したいと思います。
ファイナンシャルプランナーの中山です。第1回で、「結婚年齢が高くなるほど、老後資金を準備するタイミングを失う」といった主旨のコラムを書きましたが、読者から「40歳前後で結婚したのだが、住宅購入やあきらめたほうがよいか?」という質問がありました。そこで今回は、この疑問にお答えすることにします。結論からいいますと、住宅購入に「年齢」はほとんど関係がありません。むしろ、40歳を過ぎて購入したほうが有利になることもあります。ただし、「それまでにしっかり貯金をしておく」ことが重要です。
家はいつ買う?
若いうちに住宅購入したほうが、住宅ローンを長期で組みやすくなるので、有利なように思えます。しかし、一般的には30歳より40歳のほうが年収は高いので、毎月のローン返済額も高く設定できるでしょうし、早く結婚した人より、遅く結婚した人のほうが、独身のうちに貯金も多くしているはずです。ですから、住宅購入に関しては、「晩婚のほうが不利」とは言えません。
では、30歳で住宅取得した場合(Aさん)と、40歳で住宅取得した場合(Bさん)で比較をしてみましょう。
Aさんは30歳で住宅購入、借入額は2000万円で60歳まで毎月返済をします。住宅ローンは「フラット35」を使用、元金均等返済とします。フラット35の金利は取り扱い金融機関によって違いますが今回は、りそな銀行を例にとってみます。りそな銀行のフラット35金利は1.69%(2014年8月5日現在)です。この1.69%の金利で2,000万円を30年返済で借りますと、月々の返済額は70,862円になります。
次に40歳で住宅購入したBさんのケースをみます。
月々の返済額をAさんと同額にするため、Bさんは自己資金(頭金)を558万円を準備し、借入額を1,442万円とします。すると、毎月の返済金額は70,850円となり、Aさんと月々の返済額はほぼ同じ額となりますので、比較がしやすくなります。
賢くローンを使う!
つまり、Bさんは30歳から40歳までの10年間で、住宅購入資金として558万円貯められるかどうかで、Aさんに比べて不利か有利かが決まります。558万円以上貯められるならBさんが有利、貯められないならBさんは不利になります(もちろん、住宅価格の上昇、ローン金利の上昇など、不確定要素はあります)。
10年で558万円を貯めるには、月々4.65万円の積立額で達成できます(預金金利はゼロとする)。人によって違うでしょうが、決して無理な金額ではなさそうです。さらに、賞与を貯蓄に回せるなら、月々の積立額はもっと少なくてもOKです。
話はこれだけでは終わりません。AさんとBさんの住宅ローンの利息を比較してみましょう。Aさんは70,862円を30年返済すると、総返済額2,551万円、利息551万円です。一方、Bさんは70,850円を20年返済すると、総返済額1,700万円、利息258万円です。利息を比較してみてください。Bさんのほうが293万円も払った利息が少ないことがわかります。
筆者(45歳)の親の世代の中には、「家賃を払うぐらいなら、ローンを使っても早く住宅を購入したほうが得」とおっしゃる方がいらっしゃいますが、それは「嘘」です。数字で検証したわけでもなく、単なる思い込みにすぎません。住宅購入の本質は、「十分にお金を貯め、借入金を減らし、短い期間で返済する」のが正解です。
ちなみに、Bさんは「ローン金利が低くなる」メリットも受けられます。返済期間が20年以下の場合、フラット35の金利は優遇されます。りそな銀行を例にとると、返済期間20年超だと1.69%、20年以下なら1.41%です(2014年8月5日現在)。1.41%の金利が適用されますと、返済期間を1年短縮し、59歳までの返済期間としても、月々の返済額は72,132円です。総返済額1,645万円、利息202万円となり、さらなる節約効果が生まれます。
また、当初借入額を小さく、返済期間を短縮することのメリットは、金利の節約だけではありません。通常、ローンと同時に加入する「団体信用生命保険」(※注) の費用が安くなります。機構団信の場合、Aさんの特約料の総額は1,187,500円、Bさんは552,900円となり、Bさんのほうが63万円安くなります。
※注 : 団体信用生命保険(通称「団信」)とは、住宅ローンの契約者が返済途中で死亡、高度障害になった場合に、本人に代わって生命保険会社が住宅ローン残高を支払う保険です。
子供の教育費は?
ここまでは「住宅購入に関しては、晩婚化は全く問題ではないが、貯金をしていることが前提」ということをお伝えしました。次に、「子の教育費」について考察しておきましょう。こちらはもっと話がシンプルです。Aさんは30歳で子が誕生、Bさんは40歳で子が誕生するとします。するとBさんは単純に子が0歳~10歳までにかかる教育費を事前に貯めておけば、Aさんと同じ条件ということになります。ここでは、「最低限貯めておきたいお金」を考察することとし、子の教育費については学校に納入するお金(入学金や授業料)とし、塾代や習い事代は考慮しません。また、子を通わせる教育機関は、すべて公立として計算します。
0歳~10歳を公立の幼稚園、小学校に通わせた場合、学校納入金の合計は平均80.7万円となります。10年で80.7万円を準備するには、月々7,000円程度の積立で達成できます。これも、楽々と達成できそうな金額であることがわかります。
子の教育費は高額なイメージがありますが、実際には小学校卒業までは高額ではありませんので、晩婚化の影響もほとんどありません。ただし、世帯主の退職後に子の大学費用がかかる場合もありますので注意してください。退職後は給与収入から教育費をまわすことができませんので、貯金などで事前に準備しておく必要があります。
また、第1回でもお話したように、結婚年齢が晩婚化するほど、自分たちの老後資金を貯める期間が短くなりますので、住宅や教育への「お金をかけすぎ」には注意です。第2回でお話したように、まずライフプラン表を作成し、貯蓄残高の推移を確認しましょう。どこかの時点で貯蓄残高が底をつくことがあれば、それは住宅や教育への「お金をかけすぎ」が原因の可能性があります。
執筆者プロフィール : 中山 浩明(なかやま ひろあき)
株式会社アイリックコーポレーション『保険クリニック』ファイナンシャルプランナー(CFP認定者/DCプランナー) マネー関係 セミナー講師。大学卒業後、ゴルフクラブの職人、パン屋経営と異色の経歴を持つ。2000年にファイナンシャルプランナーとして活動開始、マネー関係のセミナー講師として活躍、これまで500回以上のセミナーを開催。現在『保険クリニック』教育部に所属、保険コンサルタント指導とマネーセミナーの講師担当。専門分野は年金、保険、資産運用、ライフプラン。セミナーでは、お客様の立場で「お金の使い方を知ること」の重要性を唱える。
セミナーHP→http://www.hoken-clinic.com/seminar/
『保険クリニック』HP→http://www.hoken-clinic.com/