こんにちは。ファイナンシャルプランナーの中山浩明です。近年、結婚や出産時の年齢が高くなる傾向にあります。連載『晩婚者のためのマネー術』では、そうした"晩婚化時代"に応じる形で、晩婚の方々を対象にした"マネー術"について解説したいと思います。


結婚年齢が高くなるにつれ、計画的なマネープランが必要になります。前回は「ライフプラン表」を作成し、将来の課題を認識することの重要性をお話ししました。今回は、「貯蓄をふやすコツ」についてお話をします。

家計簿をつける意味は?

皆さんは、家計簿をつけていらっしゃいますか。中には「つけたことはあるが、長く続いたためしがない」という方も多いのではないでしょうか。家計簿をつけずに家計を把握するのは困難ですが、家計簿をつけ続けるのは、相当に根気もいるものです。ここで考えてみたいのは、「家計簿は何のためにつけるのか?」ということです。

家計簿は、「お金の使い方を分析し、無駄をなくして貯蓄額をふやす」、これが目的であると私は解釈しています。つまり、「貯蓄額をふやす」という目的が達成できているのであれば、家計簿はつけなくてよいでしょう。反対に、どんなに一生懸命に詳細な家計簿をつけたとしても、家計簿をつける前と後で、貯蓄できる額に変化がないのなら、家計簿をつける意味がありません。

財産を把握しよう!

では、どのように家計簿をつけたら貯蓄額がふえるのでしょうか。家計簿をつける前に、質問があります。「あなたは今、いくらの財産をお持ちですか?」。これは「お財布の中身」の額を聞いているのではなく、預貯金等を含めたあなたの全財産の額です。今の時点の財産額を即答できる人は、少ないのではないでしょうか。

しかし、「自分の財産額を把握していない」ということは、そもそも「自分の財産額に興味がない」もっといえば「貯蓄に興味がない」のです。貯蓄に興味がない人の貯蓄がふえることはまずありません。ですから、自分の財産額にもっと関心をもちましょう。

実は、お金を貯めるヒントはここに隠されています。「今、私の財産額は○○円で、今これを買うと財産額は〇〇円に減る」という認識を持つ習慣をつけることが、貯蓄をふやす上でとても重要です。

例えば、あなたのある時点での財産額が501万円だったとしましょう。友達から「今晩飲みにいこう」と誘われたら、あなたは今晩の飲み会に「いくらまで使っていい」と考えるでしょうか。もちろん人によって違うでしょうが、「今晩の飲み代は1万円以内におさえたい」という心理が働けば、貯蓄をふやせる素質があります。もし、飲み代に2万円を使ってしまうと、財産額が499万円になります。500万円台か400万円台か、この心理的なハードルは意外に大きいものです。お金を貯める原理原則は「収入より支出を少なく生活すること」です。それ以外に方法はないことを肝に銘じておきましょう。

口座を調べよう!

そこで、家計簿をつけ始める前に、まずは「自分の財産額の把握」から始めてみましょう。紙に預金口座、証券口座、貯蓄保険など、金融機関名と支店名を思い出せるだけ全て書き出してみてください。

さて、口座数はいくつありましたか? 実は、財産額が多い人ほど口座数も多いという統計データもあります。1つの口座に多くのお金をまとめて預けるより、複数の口座に分けて預けた方が、大きな出費の抑制につながります。例えば、1つの口座に500万円預けた場合と、10の口座に50万円ずつ預けた場合を考えてみてください。50万円以上の出費に対して慎重になるのはどちらでしょうか。一つの口座の残高が大きいと、大きな金額のお買い物に対して、財布のヒモが緩みがちになりませんか?

口座をすべて書き出したら、次に金額を記入してみましょう。預金口座だけでなく、証券口座や貯蓄保険もあわせて記入しておきます。株式や投資信託を保有されている方は、現時点の時価で記入します。貯蓄保険は現在の解約返戻金額を記入しましょう。保険会社に問い合わせれば教えてくれます。これらの合計額が、現時点のあなたの「財産額」となります。今日、あなたがお昼ご飯を食べた、カフェでコーヒーを飲んだ、同僚と飲みにいった、帰りにコンビニで雑誌を買った…そのたびに、あなたの財産額は少しずつ減少していきます。その感覚を持つことで支出が抑制されるのです。

ぜひ、毎月末の貯蓄残高を時系列で書き出してみましょう。貯蓄残高は順調に増えていくでしょうか、それとも減っていくでしょうか。もしかしたら、毎月は赤字で、その赤字分をボーナスで埋めている…という構造になっているかもしれません。

「このままではお金は貯まらないぞ…」ということが認識できれば、いよいよ家計を分析する必要があります。この時に始めて「家計を分析するまえに、家計簿をつける必要性がある」と気づき、家計簿をつけることに対して「動機付け」ができるようになります。多くの方が「家計簿が続かない」というのは、家計簿をつけることに対する「動機付け」があいまいだからです。

執筆者プロフィール : 中山 浩明(なかやま ひろあき)

株式会社アイリックコーポレーション『保険クリニック』ファイナンシャルプランナー(CFP認定者/DCプランナー) マネー関係 セミナー講師。大学卒業後、ゴルフクラブの職人、パン屋経営と異色の経歴を持つ。2000年にファイナンシャルプランナーとして活動開始、マネー関係のセミナー講師として活躍、これまで500回以上のセミナーを開催。現在『保険クリニック』教育部に所属、保険コンサルタント指導とマネーセミナーの講師担当。専門分野は年金、保険、資産運用、ライフプラン。セミナーでは、お客様の立場で「お金の使い方を知ること」の重要性を唱える。

セミナーHP→http://www.hoken-clinic.com/seminar/

『保険クリニック』HP→http://www.hoken-clinic.com/