キャッシュレスは学生から
最近、メディアから「キャッシュレス」というキーワードを聞かない日はないと思います。私ども広島銀行は、キャッシュレス推進に向け平成17年4月からキャッシュカードとクレジットカード、ローンカードが一体となった「<ひろぎん>バリューワン」の取り扱いを開始しています。
執筆者プロフィール:野上武志(のがみ たけし)
昭和62年3月 山口大学経済学部卒業
昭和62年4月 株式会社広島銀行広島駅前支店 入行
平成17年4月 営業統括部ビジネスローンセンター担当課長
22年4月 岡山支店次長
23年4月 伊予西条支店長
26年4月 営業統括部営業推進室担当部長
29年4月 営業統括部営業推進室長
30年4月 個人ローン部長(現職)
ただ、商品性はどの銀行で取り扱うカードとも同じであったことから、常々「お客さまに選んでいただけるカードとは」を考え続けていました。 そこで、カードの魅力を高め、他行との差別化を図ることを目的に、「<ひろぎん>バリューワン」に紐づけて発行していた後払い式電子マネー「QUICPay」カードに「学生証」機能搭載の検討を開始しました。
学生証との一体型カードを作るまで
「学生証と一緒にしよう!」と考えたきっかけは、「日常的に肌身離さず携行するカードとは何か?」を考え続けた結果です。学生証に広島銀行が提供するサービスを一体化することで、日常的に持ち歩いていただくことができ、カードの利用促進に繋げられるのではないかと考えました。
広島銀行では、平成26年3月から、学生証や社員証へQUICPay機能を搭載したカードの取り扱いを開始しました。それ以降、広島のさまざまな大学・企業と連携し、地域のキャッシュレス化推進に向け取り組んでいます。
半信半疑から確信へ
当行が「学生証」と「QUICPay」の一体化の検討を開始した時点では、広島においてもすでに相当数の大学が単独でIC学生証を導入済みでした。はたして大学側に「電子マネーを搭載したIC学生証の導入ニーズがあるのか」は正直わかりませんでした。
そこで、広島の様々な企業が加盟し、ICカードを通じて地域の課題を解決することを目指している「ひろしま地域カード連携コンソーシアム」を通じて、県内の各大学へアンケートを行ったところ、複数の大学から興味をもっていただきました。
エリザベト音楽大学との出会い
検討を開始してから、最初に声をかけていただいたのはエリザベト音楽大学(広島市中区)でした。導入を目指して、様々な課題に対し相互に協力し乗り越えていきましたが、なかでもひとつ、大きな課題にぶつかりました。
それは「未成年の学生にクレジットカード契約をしていただくことに保護者の理解が得られるか」という課題です。
慎重に対応策を検討した結果、クレジットの利用可能枠を少なくし、ローンカード機能はつけないなど、少しでも抵抗感を和らげる方法を採用しました。
これらの課題解決を経て、エリザベト音楽大学と最初のQUICPay搭載学生証の取扱を開始することができ、これを皮切りに約1年間で5先と学生証・社員証との一体型カードを発行する提携が実現しました。
前払い式電子マネー「HIROCA(ヒロカ)」の登場
その後順調に提携先が増えていくと思っていましたが、やはりクレジットカード契約が必要な点がネックとなり、思うように提携先が広がらない状況が続きます。そのような中、当行は全国の銀行でも珍しい前払い式地域電子マネー「HIROCA(ヒロカ)」の取り扱いを開始しました。
これにより、QUICPay以外の電子マネーを搭載する学生証・社員証の発行も可能となりました。さらには学生さん・社員さんの希望によって、親カードを「クレジットカード」と「キャッシュカード」のいずれにするかの選択が可能となったことで、地域の企業により興味を示していただけるようになり、平成30年4月時点で15先との提携が実現しました。今後もさらなる拡大を目指しています。
キャッシュレス化の加速
学生証・社員証のカードを発行するだけでなく、大学・企業の食堂や売店で積極的に電子マネーを活用してもらえるような取り組みも同時に進めています。食堂や売店の昼食時の混雑解消や、企業においては、工場や医療現場など勤務中の現金持ち歩きが困難なケースでのキャッシュレス決済ニーズがあります。当行がQUICPayやHIROCAの決済端末普及も行い、電子マネー利用環境の整備に取り組んでいます。現在はHIROCA対応の自販機も準備中です。
これからは学校や職場での電子マネー利用が当たり前になっていきます。当行のカードが普段使い慣れたカードとなり、当行に親しみと信頼を持っていただき、様々な相談をしてもらえる銀行になることを目指しています。