九州フィナンシャルグループの設立

「お客様にとって九州トップの総合金融グループの実現を目指す」、肥後銀行と鹿児島銀行は平成27年10月に経営統合し、九州フィナンシャルグループを発足させました。

  • 九州フィナンシャルグループ 編

両行の融合を進めていくうえで、熊本県・鹿児島県の基幹産業である「観光」や「農業」という分野において、地方創生のために様々な取組みを進めてまいりました。

執筆者プロフィール : 鶴田 司(つるた つかさ)

(株) 九州フィナンシャルグループ 取締役執行役員グループ戦略部長
鹿児島銀行審査部長、取締役営業支援部長等を経て、2016年、株式会社九州フィナンシャルグループ取締役グループ戦略部長に就任、アグリビジネスをはじめ地元企業の発展に注力し、地域活性化に貢献。九州FG証券(株)取締役兼務

台湾からのインバウンド(外国人観光客)

第一弾の取組みとして、九州フィナンシャルグループ・肥後銀行・鹿児島銀行(以下、当グループ)は、平成28年3月にJCB様、J&J事業創造様と「訪日観光客誘致に関する協定」を、同年8月には当グループ、熊本県・鹿児島県との間で「地域観光振興に関する協定」を締結し、両県への外国人観光客拡大に関する施策を進めてまいりました。

それら協定に基づき平成28年度は、JCBの台湾会員で、特に富裕層を対象にモニターツアーを実施し、「まだあまり知られていない観光資源はないか? 」「訪日外国人に人気のスポットがどこなのか? 」などの調査を実施しました。また、これと並行し訪日外国人に求められている「キャッシュレス化」や「多言語対応」などの受入環境整備を積極的に推進しました。

そしてこの調査結果をもとに、平成29年度は団体客だけでないFIT(個人手配の海外旅行)向けに、モニターツアーで人気の高かった天草でのイルカクルージングなどの体験型イベントを旅行商品化しました。現在、海外向け訪日情報発信サイトで告知をし、旅行商品として販売しています。

こうしたインバウンドの取組みにとどまらず、熊本・鹿児島を更に盛り上げていくために肥後銀行・鹿児島銀行は様々な取り組みを実施しています。

震災からの創造的復興 -くまもとDMCの設立-

肥後銀行は、平成28年12月に熊本県と協働で「株式会社くまもとDMC(以下、DMC)」を設立しました。DMCは、平成28年4月に発生した熊本地震からの創造的復興を目指すべく、観光の司令塔的存在として、熊本県の「食」と「観光」を盛り上げるために様々な取組みを進めています。体験型のオプショナルツアーの造成や、「おるとくまもと」という熊本県の情報発信サイトを立ち上げ運営するなどの取組が認められ、DMCは平成30年3月30日に地域連携DMO(Destination Management Organization)の中で唯一の株式会社として、日本版DMOの認定を受けました。

熊本県の農産物輸出を拡大させる

他国では日本から農産物を輸出する際の検疫が厳しく、旅行者が来ても地元の農産物をお土産として購入するのは難しいという課題がありました。また、輸出が可能であっても検疫手続きの煩雑さから熊本県産の農産物等の輸出拡大は図れていませんでした。この点について、二つの取組みをご紹介します。

ひとつ目は、前述のくまもとDMCによる外国人観光客に対する取組みです。J&J事業創造様と連携し、外国人観光客に対する検疫代行サービスの提供による農産物持ち帰り促進と、帰国後も農産物を取り寄せることができるEC販売機会を提供し、輸出拡大を図りました。

また、あまり知られていないかもしれませんが、香港は農産物輸出の検疫に関するハードルがアジアの中で他国と比べると低いという環境にあります。そこで、肥後銀行は、熊本県の香港事務所や現地の企業と連携し、農産物流通に関するコスト構造調査や現地食文化の多面的な検証を行い、熊本PRショップとして日本の鍋料理を主体とした「櫓杏(ろあん)」を平成29年4月に出店いたしました。

このDMCと櫓杏の取組みは、「平成29年度地方創生に資する金融機関等の特徴的な取組事例」として地方創生担当大臣表彰を受けました。

基幹産業である農業の発展に向けて -鹿児島銀行の取組み-

農産物の取組みはインバウンド対策だけにとどまりません。鹿児島銀行では、大手畜産会社や青果卸市場へ行員を研修派遣し、農業分野における専門性の高い人材育成に力を入れることで、農業を支援する取組みを継続的に実施しています。平成28年9月には、「農業従事者の高齢化や減少」「耕作放棄地の増加」といった地域が抱える農業の課題解決に向け、農業法人「春一番」をパートナー企業とともに共同設立しました。

「春一番」は、現役支店長を代表に据え、社員も全員銀行からの出向者で組織されています。始まったばかりの取り組みですが、銀行員が農産物の生産から販売まで直接関わることで、これまで見えていなかった課題解決を目指しています。

また、畜産牛農家向けのサービスとして畜産牛ABL管理システム「Agri Pro(アグリプロ)」を開発し、お客様との間でインターネットを通じて飼育情報などを共有することで、在庫管理や収支予想など業務効率性向上を図っています。

今後、資金面のみならず、6次産業化の取組みや商流構築の支援などを含め、さらなる農業の発展に向けた事業支援を継続してまいります。

以上、いくつかの取組事例をご紹介させていただきましたが、当グループでは、今後も地域の課題解決に積極的に取組み、地域住民の皆様と協力し、観光や農業で地方創生を実現してまいります。