BDソフトも再生できるAVノートは、サイズが大きいことが難点。高度なAV機能を手軽に持ち運んで使いたいという人におすすめなのが「VAIO T VGN-TT71JB」だ。B5サイズのコンパクトなボディにBlu-rayディスク(以下、BD)ドライブまで搭載した。モバイルAVを考える人には待望といえるこのモデルの実力をじっくりチェックしてみよう。
小型で軽量。持ち運びに最適なサイズにAV機能を凝縮した
気軽に持ち運べるサイズに、Intel Core 2 Duo SU9300を内蔵した高性能B5ノートのVAIO TのBDドライブ搭載モデル。ハイビジョン動画再生はもちろん、ワンセグ放送の視聴や音楽再生などの充実したAV機能を備える。ノイズキャンセルヘッドホンも付属するため、外出先など騒音の多い環境でも快適なAV視聴ができるのも魅力。
また、簡単なムービー作成ソフトやBD作成ソフトなども備えているので、ハイビジョンビデオカメラの映像をその場で手軽に編集するといったこともできる。最新モデルではOSが64bit版となり、メモリの増量と合わせてより性能が向上している。このほか、店頭モデルのブラックのほか、ソニースタイル限定で5種類のカラー/柄が選択できるのもユニークだ。
操作性:モバイル用ということもあり、AV操作ボタンは最小限
評価★★★☆☆
AVノートPCでは定番と言えるAV操作用ボタンだが、B5ノートサイズのtype Tにこれを求めるのは辛い。本機では、消音、音量調整、EJECTと任意の操作を割り当てられるS1ボタンを備えるのみ。十分といえば十分な装備だが、ボタンのサイズが小さいのであまり使い勝手はよくない。混雑した電車内など、カバンから出すこともできないような場所で音楽を聴くといった最小限の操作をするためのものと言えそう。サイズが小さいこともあり、AV再生ソフトの操作などを行うなら手元で開いて普通に操作する方が使いやすいだろう。
付属するソフトは、VAIO共通の簡単な操作で使える「VAIO Media plus」などが揃っているので快適にAV再生を楽しめる。音楽再生用としては、独自の12音解析技術により、HDD内の楽曲を気分に合わせて自動選曲できる「VAIO MusicBox」が楽しかった。
レスポンス:ソフトウェアの動作とワンセグ視聴は快適
評価★★★★☆
BDソフトの再生をはじめ、各種ソフトウェアの動作はもっさり感はなく、快適に操作できた。B5ノートPCということで多少動作が重くなるかと思ったのだが、操作のレスポンスに不満を感じることはなかった。4GBに増加したメモリの強化なども効いているのかもしれない。
BD再生ソフトはVAIO標準の「WinDVD BD for VAIO」。ファンクションキーを持たないため、操作はすべて画面上のメニューで行うことになるが、レスポンスが良いので使い勝手は悪くない。ディスクの読み込みは速く、再生の乱れなどもなく快適に再生できた。
また、ワンセグ視聴は、標準状態では画面の右端にデータ放送も含めて表示される。内蔵アンテナは室内では窓際でないと良好な受信が難しかったが、受信感度自体は携帯電話のワンセグ受信と同等クラス。B5サイズでありながら、外部アンテナ接続用の端子も備えているのは立派だ。これならば当然ながら安定した受信ができる。データ放送の表示なども快適で使い勝手は悪くない。とはいうものの、これだけ高機能だと、全画面表示でも美しい映像が楽しめるフルセグ放送の受信にも対応して欲しいと思ってしまう。
BD/DVD再生用の「WinDVD BD for VAIO」。ポップアップメニューの表示などはマウス操作で快適に行える |
ワンセグ放送の表示画面。字幕放送やデータ放送などもまとめて表示できるのは便利。チャンネル切り替えの速度も十分に速く、快適に視聴ができた |
画質:映り込みの少ない半光沢パネルで、メリハリの効いた映像
評価★★★★☆
11.1型のワイド液晶はWXGA解像度で1366×768ドット。フルHDではないものの画面サイズが小さいので解像感に不足はない。画質はノイズを抑えた見やすい画質で、くっきりとした色でメリハリを効かせたもの。ディテールや奥行き感などは少々もの足りない部分もあるが、このサイズで気軽に見るなら問題はない。
ディテールをじっくりと楽しむなら、HDMI出力で薄型テレビに接続するといい。こちらはディテールの再現なども十分でBDソフトらしい高精細さを大きな画面で楽しめる。DVD再生は映像の甘さが気になることもなく、メリハリの効いた映像で楽しめた。
ノイズ感の少なさはBDと共通で、長時間見ていても目が疲れない。また、映り込みの少ない半光沢パネルなので、屋外などで使っていても外光の影響を受けにくいのはどこでも気軽にAV視聴できるメリットを最大限に生かせるポイントだろう。
音質:内蔵スピーカーはやや非力。ノイズキャンセルヘッドホンが主体か
評価★★★☆☆
モバイルマシンということもあり、内蔵スピーカーははっきり言って非力。音量的にもキーボードを打てるくらいの距離ならば不満はないが、映画などの迫力を感じるには、最大音量でも物足りない。だが、ノイズキャンセルヘッドホンが付属するので、視聴はヘッドホンが主体になるだろう。
このヘッドホンは、カナル部分にマイクを持っており、PC側の設定でノイズキャンセル機能をオン/オフできる。ノイズキャンセルの効果も調整できるので、電車内や喫茶店などの暗騒音の多い場所でも快適なサウンドを楽しめた。ヘッドホンの音質もややメリハリ重視型ながら、低音まで素直に伸びるタイプで聴き心地も良好。こちらは音量不足を感じることもなく、アクション映画の迫力ある音もしっかり楽しめる。
拡張性:B5サイズモデルながらも、HDMI出力端子などを装備
評価★★★★★
サイズに制約の大きいB5サイズモデルながらHDMI出力端子を装備しているのはありがたい。自宅では薄型テレビとつないで、外出先ではポータブルプレーヤーとして使えるのはうれしいポイント。HDMIならAVアンプと接続してサラウンドも楽しめるので、基本的にはAV出力としてはこれだけ十分だ。
このほか、ノイズキャンセル対応のヘッドホン出力やi.LINK端子、USB端子なども備えているので、接続端子は十分だろう。このサイズにBDドライブを搭載するだけでも驚きだが、HDMI出力まで備えるのは立派だ。一般的なAVプレーヤーとしてはまったく不満を感じることはない。
総評:十分以上の機能性と手軽に持ち運べるサイズの両立で満点
評価★★★★★
まず、このサイズでBD再生というのは、インパクトが大きい。携帯できるポータブルプレーヤーを求める人には最適と言えるモデルだ。そのうえ、ハイビジョンビデオカメラとの接続や簡単な動画編集までこなすパワーを秘めているのだから、恐れ入る。
VAIOシリーズの名に恥じない高機能に比べると、絶対的な画質や音質は多少見劣りするが、携帯性という魅力を考えればなんの不足もない。これまで紹介してきた高級AVノートPCとはひと味違う「モバイルAV」という新スタイルを提案するモデルとしてはかなり完成度が高いと感じた。
ソニー VAIO type T VGN-TT71JB |
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操作性 | ★★★☆☆ | |
レスポンス | ★★★★☆ | |
画質 | ★★★★☆ | |
音質 | ★★★★☆ | |
拡張性 | ★★★★★ | |
総合評価 | ★★★★★ |
■仕様 | |
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CPU | Intel Core 2 Duo SU9300(1.20GHz) |
チップセット | Mobile Intel GS45 Express |
メモリ | 4GB(最大4GB) |
HDD | 160GB |
光学ドライブ | Blu-rayディスク |
グラフィックスチップ | Intel GMA 4500MHD |
ディスプレイ | 11.1型ワイド(1,366×768ドット) |
テレビ機能 | ワンセグチューナー |
ネットワーク | IEEE802.11a/b/g/n、10/100/1000BASE-T |
インタフェース | USB2.0×2、D-Sub15ピン×1、iLINK×1、HDMI出力端子×1、ExpressCard/34×1、メモリースティックスロット×1、SDメモリーカードスロット、Bluetoothほか |
OS | Windows Vista Home Premium |
約10時間 | |
サイズ | 約W279×D199.8×H23.5~30.7mm |
重量 | 約1.310kg |
直販価格 | 299,800円 |
ライタープロフィール
鳥居一豊 : モノ雑誌やWeb媒体で活躍するAV系フリーライター。発売されるありとあらゆるAV機器に触れており、その機能を熟知している。この連載ではAVという観点からノートPCをレビューする。