この4月に運営体制を刷新し、“らしさ”を取り戻すという至上命題に取り組んでいるホンダ。新型コロナウイルス感染拡大の影響下で発表した2020年3月期(2019年度)の決算では、合理的な算定が困難であるとし、今期の業績見通しを未定とした。

  • ホンダの新型「フィット」

    主力の四輪事業で構造改革を進めるホンダだが、新体制は厳しい事業環境に直面している(写真は2020年2月に発売となったホンダの新型「フィット」)

四輪事業の営業利益率は1.5%に

5月12日の決算発表会見でホンダの八郷隆弘社長は、「新型コロナウイルス感染拡大の先行き」が見通せない中で、「人々の価値観」の変化に対応し、「チームホンダ一丸となってこの難局を乗り越えていく」と述べた。同社の2019年度連結業績は、純利益が前期比25.3%減の4,557億円に。コロナの影響と為替差損により、減益幅を拡大させた格好だ。今期の連結業績見通しは未定とする。

ホンダは主力の四輪事業で構造改革を進めているが、2019年度の四輪事業における営業利益は1,533億円にとどまり、営業利益率は1.5%と前期の1.9%からさらに低下している。

今期の業績予想について同日に決算発表を行ったトヨタ自動車は、コロナの影響で世界販売が20%減少するとしつつも、営業利益5,000億円と黒字確保を明示した。ただ、トヨタですら大幅減益を予想しているところ見ると、ホンダは赤字転落もありうる危機的な状況である。

八郷体制の最終課題はコロナでどうなる

八郷体制は2020年6月で6年目を迎え、最終段階に入る。この間のホンダでは、主力の四輪事業のグローバル拡大路線を修正し、四輪事業の収益低下を二輪事業でカバーする状況が続いてきた。

四輪事業の構造改革に本腰を入れる大きな動きとしてホンダは、この4月にホンダ本体の四輪事業部門と本田技術研究所を統合し、新たな組織運営をスタートさせたばかり。ホンダの本家ともいうべき本田技術研究所の四輪開発にメスを入れたのは、“ホンダらしさ”を取り戻す最後の手段ともいえる。八郷社長は「四輪事業の領域統合と一体運営で即断即決体制」を構築する一方、「研究所は革新技術に特化することで強化する」と強調する。

  • ホンダの新型「フィット」

    ホンダの四輪開発は本田技術研究所が主導してきたが、本体との統合で即断即決体制を強化するとのこと

四輪事業ではグローバル生産の最適化を進め、2022年をメドに年産能力を100万台縮小し、500万台とする方針。北米の生産拠点でオペレーションをシンプルにしていくことなど、生産調整の課題については道半ばだ。2022年から2025年にかけて構造改革の成果を上げていく計画だが、「今回のコロナ危機で新たな課題も出た。もう一度見直し、スピード感を持って四輪事業の万全化を進めたい」と八郷社長は話す。コロナの影響でホンダの構造改革に遅れが出るようでは、八郷体制のバトンタッチも流動的になりそうだ。