前回の記事では、「最低限押さえておいてほしい投資の知識」をお伝えしました。その中でも触れた「NISA(少額投資非課税制度)」は、最近ニュースで目にする機会が増えた方も多いのではないでしょうか。
NISAは運用した利益に税金がかからない、つまり「非課税になる」お得な制度です。その制度が来年から大きく変わります。より長期目線で使いやすくなりました。何が変わるのか、使う人にとってどういうメリットがあるのか、そしてどう使えばよいのかを、今回から2回にわたって解説していきます。
これまでのNISAが一つになる
NISAの最大の特徴は「投資で得た利益に税金がかからないこと」です。通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、NISAで投資をするとこの税金がかからなくなります。
現在のNISA制度では、「つみたてNISA」と「一般NISA」の2種類があります。どちらも非課税制度という点は共通ですが、違いを簡単にご説明すると、手数料が低いなど一定の要件を満たす投資信託に長期で積立投資をするのが「つみたてNISA」で、より幅広い金融商品に柔軟に投資できるのが「一般NISA」です。一般NISAとつみたてNISAは同時に併用することはできず、年ごとにどちらかを選ぶ必要があります。
来年からの新しいNISA制度では、つみたてNISAは「つみたて投資枠」へ、一般NISAは「成長投資枠」へと衣替えし、一つのNISA口座の中で「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の両方の枠を持つことができるようになります。自分のニーズに合わせて、どちらか1つの枠だけを使うことも、併用することもできます。
生涯で1,800万円まで投資できる
二つ目のポイントは、生涯で投資できる金額が1,800万円に拡大された点です。
この1,800万円というのはつみたて投資枠と成長投資枠の合計金額ですが、そのうち成長投資枠で使えるのは1,200万円までで、1,800万円の枠を使い切るためには少なくとも600万円はつみたて投資枠で使う必要があります。つみたて投資枠にはそのような制限はなく、つみたて投資枠だけで1,800万円使い切ることもできます。
1年間に投資できる金額について、つみたて投資枠では120万円、成長投資枠では240万円という上限がありますが、その範囲内であれば、自分のペースで非課税で資産形成を進めていくことができます。
何年か前に「老後に2,000万円が足りなくなる」という試算が話題になりました。昨今は年金の給付水準も下がり、かつてのように年金と退職金では豊かな老後を過ごすことが難しくなっていくと言われています。
そこで「NISAの非課税の枠の中で、豊かな老後に向けた資産形成を、じっくりと時間をかけて行う」といったプランも考えられるようになります。
いつまでも利用できる
現在の制度では非課税で保有できる期間が一般NISAは最大5年、つみたてNISAは最大20年と決まっており、この期間を超えると税金がかかってしまいます。さらに、期間限定の制度であるという課題もありました。
来年からは、非課税期間が無期限になるほか、制度自体が恒久化されます。老後に向けた積み立てはずっと続けられるのが理想ですが、ライフプランの中では家を買う時、子供の教育費がかさむ時もあり、投資に回すお金に余裕がないこともあると思います。
新しいNISAは恒久的な制度であるため、お金に余裕がない時は一時的に積み立てを停止し、余裕ができたら再開する、といったことも可能になります。
まとめ
非課税で投資できる枠が最大1,800万円に拡大され、いつまでも利用できる制度となったことで、多くの方にとっては、NISAだけで資産形成が完結することになりそうです。
これまでのNISAは期限のある制度で、使わなかった今年の枠は翌年には消えてしまうので、「今年の枠は今年のうちに使い切らないと」など、「制度に自分を合わせなければいけない」と感じる面もあったかもしれません。新しいNISAでは、自分に合わせて投資ができるようになります。
例えば1,800万円の生涯枠は、毎月5万円(年間60万円)を投資に回せば30年間で使い切る計算ですが、いつも一定のペースで、とはいかない方も多いでしょう。
時間の制約がなくなったことで、積み立てを途中で少し休んだりもしながら、自分のペースで投資ができるようになります。より多くの人にとって使いやすい制度になるのではないでしょうか。
そして、前回ご説明した「長期・積立・分散」の資産運用に適した制度です。
「長期・積立・分散」は、長い時間をかけて(長期)、定期的に一定の金額を(積立)、幅広い国・地域・資産の種類に分けて(分散)投資をし、資産を大きく増やすことを目指す方法です。その中で「分散」については、資産形成を始めた頃と、蓄えた資産を使っていく頃では、少し違ったことを考える必要があります。
次回は、NISAを使う上での「分散投資」の考え方を、お伝えしたいと思います。