前回の記事では、本来の投資の意義についてご説明しました。そのうえで、まだ投資はむずかしい、何をしてよいかわからないと感じている読者の方も多いのではないでしょうか。 今回は、投資の意義はわかるけれどもどう行動してよいかわからないという方に向けて、最低限、押さえておいていただきたい知識をお伝えします。

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まず取り組むべきは、王道の「長期・積立・分散」

個人が投資をする際にまず取り組むべき王道は、「長期・積立・分散」です。長い時間をかけて(長期)、定期的に一定の金額を(積立)、幅広い国・地域・資産の種類に分けて投資をする(分散)、という方法です。この方法によって、リスクを抑えながら、長期的には資産を大きく増やすことを目指せます。

他にも、時間をかけて勉強や情報収集をしたうえで、投資対象の企業や国などを選んだり、タイミングを見極めて投資したりする方法もあります。しかし、銘柄やタイミングを見極める投資では、投資以外を本業とする普通の人が勝ち続けるのは非常に難しい(実際にはプロであっても難しい)ですし、そもそも時間や労力がかかりすぎてしまうので現実的ではありません。

「長期・積立・分散」の資産運用は、中長期的に安定した資産形成を目指すうえで有効な考え方だと、金融庁のレポートなどでも繰り返し述べられています。どのような投資を行うのがよいかお悩みの方は、「長期・積立・分散」の考え方に合った投資を中心に行うことをおすすめします。

非課税制度も有効に活用したい

「長期・積立・分散」の資産運用をより多くの人が利用できるように、現在では、税金の支払いで優遇が受けられる制度が用意されています。NISA(少額投資非課税制度)や、iDeCo(個人型確定拠出年金)といった単語を耳にしたことはないでしょうか。

NISAは、一定の要件のもと、投資して得た利益が非課税になる制度です。通常は、投資によって利益を得ると、約20%の税金がかかります。この税金をかからなくすることで、より投資によって資産を増やしやすくなったといえるでしょう。

NISAの中でも、2023年までは、一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAといった、対象商品や年間の投資可能額などが異なる複数の制度に分かれています。これまでのNISAは、投資可能期間が決まっている時限的な制度でしたが、2024年以降、生涯にわたって利用できる恒久的な制度に変更となる予定です(年間の投資可能額も増加する見込みですが、通算で投資できる金額には上限が設けられる予定です)。

もう一つのiDeCoは、投資して得た利益に税金がかからないうえ、掛金(投資した金額)が所得控除の対象となるお得な制度です(ただし受け取り時に、受け取り方法に応じて一部課税される可能性があります)。年金のため、原則として60歳までは引き出せないことに注意が必要となります。

NISAやiDeCoを上手に活用することは、長期の資産形成において非常に有効といえます。投資を始める際には、これらの制度の利用をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

まずは少額から、一歩踏み出してみる

投資の経験がない方は、投資に対して不安や怖さを感じることも当然だと思います。そのうえで、実際に自分でやってみてはじめてわかること、身に付くことが多いので、一歩を踏み出してみることをおすすめしたいです。始める際、いきなり大きな金額を投資にまわすのではなく、まずはご自身にとって無理のない金額で始めて、積立で少しずつ金額を増やしてみることではいかがでしょうか。

覚えておいていただきたいのは、投資は預貯金と異なり、マイナスになることもあり得ること、そして、「長期・積立・分散」の資産運用においては、始めたばかりの時期にマイナスになることは、決して失敗ではないことです。

長期投資は、5年、10年、20年と続けていく中で大きなプラスを狙うものであり、一時的にマイナスの時期があっても、腰を据えて投資を続けることが大切です。長期投資で大きく資産を増やした方もずっとプラスだったわけではなく、特に最初の1~2年にマイナスを経験した方が多くいらっしゃいます。資産形成において特別な裏技のようなものはないと考え、世界経済全体が成長する前提でコツコツと続けていきましょう。

「長期・積立・分散」を始めようと思っても、どの商品を選んでよいかわからない、続けられる自信がないという方には、投資をおまかせできるサービスもあります。プロにまかせる際、冒頭でご説明した「長期・積立・分散」の原則に従って、投資対象がしっかり分散されているか確認することをおすすめします。

「長期・積立・分散」の資産運用は、多くの人から多額のお金を預かる年金基金などのプロの投資家も実践しています。初心者・上級者を問わず安定的な資産の成長を目指せる方法ですので、無理のない範囲で、まずは行動に移してみてはいかがでしょうか。