本連載では、20代~30代の方に「今読んでおくべき」資産形成に関する情報をご紹介しています。前回は"将来に向けた資産形成の方法論"について記載しました。今回は働き盛りの死亡保障と長期の資産形成を目的とした人生の基本財産保険としてのユニットリンクタイプの生命保険(以下、ユニットリンク)について解説します。
ユニットリンクとは
わかりやすく言うと、死亡保障が確定していて、保険期間が満了すると満期保険金が戻ってくるタイプの生命保険。ただし、運用実績によって積立部分は変動し、満期時に戻ってくる金額も変動する。
積立部分は、契約者の判断で株式や債券等に投資できる。契約時に「死亡保険金額」「満期保険金額」の両方が確定する生命保険は定額保険だが、ユニットリンクは特別勘定資産の運用実績に応じて「積立金額」や「満期保険金額」が変動(増減)する変額保険に分類される。
一般的な変額保険との違いは、積立金の運用実績が良い場合でも死亡保障を買い増しすることがなく、基本(死亡)保険金額が確定している点。つまり、運用実績が良い場合は将来の満期保険金に回る積立部分に充当されることになり、資産形成機能を重視する方にとっては使い勝手がよいという評価を受けている。※ 参考資料:図表(1)
ユニットリンクは海外では主力商品のひとつ
ユニットリンクはヨーロッパではポピュラーな商品で、統計データでは個人保険のうち約19%(保険料ベース)がユニットリンクを含む変額保険が占めている。一方、日本においては変額保険のシェアは約2%(保険金ベース)程度に止まっている。※ 参考資料:図表(2)
しかしながら日本では長引く超低金利の影響を受けて、資産形成に着目して生命保険を選ぶ際に、定額保険の選択肢の幅が一段と狭まってきている。このような市場に供給される生命保険商品の動向を反映して、今、ユニットリンクのような変額タイプの商品性が注目されるようになってきており、変額保険のシェアも今後徐々に増加することが予想される。
ユニットリンクの使い方
連載 第3回で触れたが、男性が10人に1人の確率で亡くなる年齢は63歳である(女性は72歳)。読者は性別・年齢・職業・婚姻の有無等、属性は様々であり、また、ライフプランも各々異なるが、守るべき家族がいる方にとっては、契約時から死亡保障のあるユニットリンクは他の金融商品にない"安心感"がある。特に20代・30代などこれから資産形成を始める世代にとっては、「預金は三角、保険は四角」という言葉を思い出していただきたい。
また、保障は死亡保障だけではない。例えば、両眼の視力が完全に失われる等、所定の障害状態に該当した場合には「高度障害保険金」が支払われる。こういった保障があれば、高度な治療を受ける際の経済的なサポートが確保され、治療に専念できる可能性もある。
資産形成機能として積立部分に着目した場合、ユニットリンクはまとまった資金を一括で払い込む「一時払」ではなく、毎月、所定の金額をコツコツと払い込む「平準払」の保険である。「一時払」で運用する場合、一度にまとまったお金を動かすため、「投資するタイミングは今で良いのか? 」また、「将来、値下がりしたらどうしよう…… 」といった悩みや不安がつきまとうこともある。しかし、「平準払」であれば時間分散の効果が働く「ドルコスト平均法」を活用することができて、リスクをコントロールしながら資産の成長を目指すことができる。一般的に投資の基本は「長期・分散」と言われるが、ユニットリンクはまさにこの基本をおさえた商品だ。
ユニットリンクは、リスクとリターンの特性の異なる複数の特別勘定(ファンド)が用意されており、契約時に自身のニーズに合ったファンドを組み合わせて選択することができる。
長期間運用する場合では、加入後年数が経過し、年齢とともに変化するライフプランに応じて、「積極的な運用から安定的な運用へ切り替えたい」、「積立部分の運用方法を見直したい」といったケースも出てくる。この場合、例えば投資信託の場合はいったん売却し、再投資するため売却益に対して課税されるが、ユニットリンクであれ保険契約を継続する中で、保険の枠組みの中でファンドの組み替えを行うことになるため、その時点では課税関係は発生しない。このような税務取扱いの特徴も保険を活用したメリットのひとつである。
なお、積立金の運用実績については最低保証がないこと、早期で解約した場合には「払いもどし金」が殆ど支払われない場合があること、また、死亡保障にまわる保険料はコストとなり、積み立てにはまわらないといった点は十分に理解したうえで加入することが重要である。
将来ライフプランが変っても……
ユニットリンクで「満期保険金をいつもらうか」、つまり保険期間は顧客が想定している就労期間や公的年金の支給開始時期などのライフプランに応じて多様に設定できるが、満期保険金を受け取る際に「一時金」以外に「年金」で受け取ることも可能である。
若い読者の場合、退職後の生活を迎える際に、「果たして自分は退職後も収入を確保するために仕事をしているか否か? 」先が読めないケースがほとんどであると想定されるが、ユニットリンクであれば、満期保険金を「一時金」で受け取って、大きな支出を伴うライフイベントに振り向けることもできるし、公的年金を上乗せする生活資金として「年金」で受け取ることもできるという柔軟性がある。
仮に、満期が到来した時点で、他に十分な金融資産があり、ユニットリンクの満期保険金の使いみちがなく、死亡保障がほしいといった場合は、「終身保険」に変更する選択肢もある。生命保険は一般的に健康状態の告知が必要あり、新規加入だと年齢の経過とともに加入が難しくなるケースも多いが、「終身保険」への変更が可能であれば、こういった不安も解消される。
このようにユニットリンクは満期保険金の受取り方法の選択肢にも多様性があり、将来ライフプランに変化があっても死亡保険金や満期保険金という「人生の基本財産」を柔軟に活用できるというメリットがあるのだ。
※写真と本文は関係ありません
執筆者プロフィール:アクサ『若者の資産形成を考える』プロジェクト
アクサは世界最大級の保険・資産運用グループ。日本ではアクサ生命等の生命保険事業、アクサダイレクトの自動車保険で知られる損害保険事業、資産運用事業、アシスタンスサービス事業を展開している。保険を活用した資産形成の分野ではユニット・リンク保険のパイオニア的存在。