35歳以上の結婚・出産が増えています。人生の持ち時間は長くなったけれど、生涯収入の手取りは減少傾向、社会の変化も激しい時代です。常識にとらわれ過ぎないお金との向き合い方を考えます。
"お金センス"は違う方がいい
子育て仲間で議論になったことがありました。「似ているから夫婦になったのか、夫婦になったから似てしまったのか?」。長男がまだ2歳の頃ですから、集まっていたのは結婚して3~5年の女性たちです。「夫婦ってどこか似ている」という共通の感覚があり、あれこれ話が発展したものの、「ニワトリと卵のどちらが先か」にも似たこの議論の結論はでませんでした。
アラフォーまでシングルで生きてきた人が結婚を決意するということは、当然、相手と共感する部分があるからですよね。気が合う、趣味が同じ、考え方が似ているなど。これは夫婦としてうまくいくための大事な要素です。しかし、ことお金のセンスに関しては、違う方が家計運営の安定感が高まると、私は最近思うようになりました。
コツコツ貯蓄タイプか、リスクを取って投資をするタイプか。心配性か、楽観的か。こまめに家計簿をつけるか、大雑把か。自分に投資するのが好きか、もったいないと思うか。老後のことがとても心配か、気にしていないか…。
お金センスや考え方が違うと、ぶつかって喧嘩になりそうですが、むしろ、別の考え方、方法をもっているから、リスクに強い、いざというときも乗り越えられるというプラス面につながります。2人が同じ考えをもち、同じ行動をとる必要はありません。考え方の違う2人がうまくやっていくには、とにかく感情的にならないことです。仲良くピッタリ100%一致したいなんて思わないことです。ただし、相手の考えや行動が受け入れられず離婚にまで至るような最悪の事態を避けるためには、お金に対する「いい加減さ」、あるいは「神経質さ」があまりに度を超しているなら改善する必要があるでしょう。
2人ともに金融リテラシーが高く、しっかりしているのであれば、言うことはありません。ファイナンシャル・プランナーの出番はなくなりそうです。もっとも心配なのは、2人ともが「まあ、なんとかなるんじゃない」とお金に無頓着なタイプ。
物事を悲観的にばかり考えていては、毎日が楽しくありません。とはいえ、お金の管理については、「最悪の事態が起こることも想定しつつ、その備えを自分に可能な範囲で行い、うまくいくことを信じて、楽観的に過ごすこと」だと私は考えています。
一人の人間がこれを実現するのは、なかなかしんどいので、違う考えを持つ2人がいることでバランスが取れてくると思っています。
「自分とは違う人だからこそ一緒にやって行きたい」、そんな考えで相手を選べる人がいるとしたら、とても賢いなあと結婚生活ン十年を経て、つくづく思います。
お金のこと以外にも、食べ物、住む場所、インテリアの趣味、ファッションなど、擦り合わせが必要なことがたくさんありますが、相手と自分がどんなお金センスをもっているのか、結婚生活が始まったら、しっかり確認したいものです。どうも、どちらもいい加減のようだと気付いたなら、先に気付いた方がしっかりすることを肝に銘じてください。特にアラフォーでの授かり婚の場合には、家計管理はとても重要です。
そして、うまくやっていくためのコツは、2人が同じになることではなく、それぞれの得意分野を担当することです。片方がしっかり定期預金で貯めるなら、片方は余裕資金の一部を将来のための投資に回していくなど。
その際、忘れてならないのが、お金に関する情報開示です。
最低限、知らせるべき"お金項目"は?
アラフォーでの結婚は、自分で稼いだお金を自分の好きなように使ってきた2人が一緒になるケースが多いと思います。収入や貯蓄額を知らせるのは構わないけど、使い道について、うるさく言われるとしたら嫌だなあ、そう思いますよね。
人生の後半を2人で一緒に生きる覚悟なら、次のことは情報公開が必要です。
額面の収入
手取りの収入
資産の内訳と時価
借金があるならその理由と金額
細かいことはいろいろありますが、まずはこの4項目。リストにまとめて渡してもいいし、源泉徴収票や預金通帳を直接、見せても構いません。お金の使い道に関しては、当初はお互いにあまりうるさく詮索しないことです。これからの予定を一緒に立てる中で、使い道をしっかり考えられるようになるのが理想。
まあ、人間ですから、ときには喧嘩もしながら、出会ってよかったね、一緒に過ごせてよかったねと思えるとしたら、ほんとに幸せです。そのためには、お金について知っておいてほしいことが、まだまだあります。ではまた、次回。
(※画像は本文とは関係ありません)
<著者プロフィール>
ファイナンシャルプランナー 坂本綾子
20年を超える取材記者としての経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナー講師を行っている。著書『お金の教科書』全7巻(学研教育出版)、セミナー『子育て力のあるお金の貯め方、使い方』『小さな消費者へのお金の教育』など。