稟議書を早く通すための大前提は、決裁者に時間的・精神的負担がかからない、しっかりとした文書を用意することです。その上で、より確実性を高めるために必要なこと、できることがあるのですが、それは何だと思いますか。

  • 事前相談である根回しが有効なことを知っていますか?(写真:マイナビニュース)

    事前相談である根回しが有効なことを知っていますか?

今回は、稟議書を早く確実に通すためのもう一つのポイントについて、ビジネススキル研修事業の責任者である、リクルートマネジメントソリューションズの河野洋士(こうの・ひろし)氏に監修いただきながら、解説したいと思います。

上司を驚かせてはいけない

稟議書を少しでも早く通したい。そんな時に意外と重要になってくるのが事前相談、いわゆる根回しです。ネガティブなイメージを持たれがちですが、「健全な根回し」は、稟議書を通すことに留まらず、ビジネスを円滑に、そしてスピーディーに進める上でのカギとなる大事な行動といえます。

"Don’t surprise your boss."という言葉があります。「上司を驚かせるな」これはつまり、「上司に不意打ちを食らわしてはいけない」という意味です。

上司は、まったく知らない内容の稟議書がいきなり回ってきたらびっくりしますが、あらかじめ話を聞いていれば、「あの件だな」と安心して承認できるもの。稟議書を回す前に、決裁者に、承認してもらいたい内容について少しでも話をしておくことで、その後の流れは大きく変わるでしょう。

また、稟議書の書面上でも上司を安心させるためにできることがあります。

例えば、承認依頼内容が「事前の計画内である」「予算内で実行できる」とか、「法務・コンプライアンス部には確認済み」など、決裁者にとっての安心材料を備考欄などにしっかりと記しておくこと。その一言があるかないかで、承認の可能性は大きく変わるものです。

スピード優先だからこそ健全な根回しが重要

稟議書は、会議の代わりに行う承認プロセス。いかに早く、確実に通すかが命です。より事業の実行スピードが求められている今、その電子化もどんどん進んでいます。

一方で近年は、人々の働き方が変わり、フリーアドレスやリモートワークなどを導入する企業が増え、職場における対面でのコミュニケーションの機会が減少してきています。だからこそ、スピーディーに決裁までこぎつけるためには、事前相談である根回しが重要なのです。矛盾しているようですが、合議制を好む日本の社会で生きていくには、とても大事なことです。

根回し力は、想定されるリスクに先回りして手を打つ行動力ともいえます。その力は、ビジネスのあらゆる場面で生きてくるでしょう。不確実性の高い世の中を生き抜くため、競争を勝ち抜くため、そしてもちろん、稟議書を早く確実に通すためにも、健全な根回し力は身に付けたいものです。

監修者

河野洋士(こうの・ひろし)
リクルートマネジメントソリューションズ
事業開発部 スキルデザイングループ
マネジャー
米国ビジネススクールにて経営学修士(MBA)を取得。卒業後、大手経営コンサルティング会社を経てリクルートマネジメントソリューションズに入社。営業担当として数々の営業表彰をうけ、そのかたわら、「営業モデルの構築」や「中途入社者の育成モデルの構築」などをプロジェクトとして経験し、大きな成果をあげる。2014年、東日本支社長に就任。2016年4月より現職。