稟議書を効率的かつ効果的に通すためには、読み手に負担をかけない文章、つまり、相手に伝わる文章を書くことが重要です。
そこで必要になってくるのが表現力と構成力。こうしたスキルの有無は、稟議書のみならず、日常のビジネスシーンのあらゆる場面に影響してくることでしょう。
そこで、ビジネススキル研修事業の責任者である、リクルートマネジメントソリューションズの河野洋士(こうの・ひろし)氏の監修の下、稟議書作成を例に挙げながら、文章力を上げるためのコツやポイントについて解説します。
伝わる文章を書くためのルール
稟議書がよく手戻りしてしまう……、内容についてのフォローを求められる……、なぜそうしたことが起こってしまうのか。それは、相手に伝わる文章表現ができていないからです。
稟議書を早く通すためには、承認してもらいたいことを、すべての決裁者に正確に分かりやすく伝えなければなりません。そこで大事になってくるのが、文章表現におけるルールです。押さえておきたいポイントは5つあります。
伝わる文章を書くためのルール
1.一文を短くする(50文字以内)
2.主語と述語を近づける
3.修飾語と被修飾語を近づける
4.専門用語をそのまま使わない
5.「単語のみ」「体言止め」を使わず、正確に表現する
特に気をつけたいのが一文を短くすること。一文を50文字以内にすることによって、必然的に主語と述語の位置も近くなり、伝えたいことが明確になります。
また、修飾語と被修飾語を近づけることも重要です。離れてしまうと言葉の修飾関係がわかりにくくなるため、人によって捉え方が変わり、物事が誤って伝わる可能性があります。
頭に思い浮かんだことをそのままダラダラと文章に書き連ねるのではなく、まずは伝えたいこと、稟議書においては承認してもらいたいことを明確にし、整理してから書き始めることが重要です。
構成の組み立て方
また、その整理の仕方=構成の組み立て方にも手順があります。
構成の組み立て方のステップ
1.話を大きく分ける
2.項目をつける
3.項目の順番を考える
こうして、稟議内容を一つのストーリーに仕立てるのです。
その際に注意したいのが、ロジカルシンキングの縦の論理と横の論理です。前提から結論までが飛躍していないか(縦の論理)。抜け漏れはないか(横の論理)。ここがきちんと押さえられていれば、決裁者からの「本当にそうなの?」「ほかにないの?」という手戻りはなくなるでしょう。
文章力の不足は、時間と労力の浪費につながります。一方で、ビジネスパーソンとしての評価を下げることにもつながりかねません。
文章力は、鍛えれば身につくスキルです。稟議書を書くときはもちろん、メールや資料を作成するときも、常にルールを意識して書くように心がけてみてください。
監修者
河野洋士(こうの・ひろし)
リクルートマネジメントソリューションズ
事業開発部 スキルデザイングループ
マネジャー
米国ビジネススクールにて経営学修士(MBA)を取得。卒業後、大手経営コンサルティング会社を経てリクルートマネジメントソリューションズに入社。営業担当として数々の営業表彰をうけ、そのかたわら、「営業モデルの構築」や「中途入社者の育成モデルの構築」などをプロジェクトとして経験し、大きな成果をあげる。2014年、東日本支社長に就任。2016年4月より現職。