Macを買って、Macを学べる量販店

東京・大井町のJR京浜東北線の大井町駅中央東口から、高架で直結しているヤマダ電機 LABI品川大井町店。

ヤマダ電機 LABI品川大井町店

デジタル館と生活館を擁する、LABI店舗としては初の2棟構成として、2007年11月にオープン。約5,500坪の売り場面積に、約100万点の製品が展示されている、同社店舗としては首都圏最大級の規模となっている。大井町駅前にあること、さらに生活館4階にはギフト商品や生活雑貨を扱う「ELENTA」を展開しているといったことも、ヤマダ電機 LABI品川大井町店の特徴だ。そのため、他の家電量販店に比べて、家族連れや女性の来店が比較的多いという特徴もある。

JR大井町駅からデジタル館に向かうと、2階フロアに直接入ることができる。

Mac売り場があるのは、デジタル館4階のパソコンフロアだ。売り場奥の壁面スペースを利用。MacBook/MacBook Proシリーズで10製品、デスクトップで4製品を展示。どれもが、自由に操作できるようにしている。

法人カウンターに設置されているMacのBTOコーナー

一部の展示製品では、イー・モバイルを接続してインターネットを利用できるようにしているほか、デスクトップではマイクロソフトのOffice 2008をインストールして、これも自由に体験できるようになっている。また、純正周辺機器群を、Mac本体展示場所の延長線上となる壁面に配置して、これら周辺機器をセットで購入しやすくしている。

一方で、5階の法人カウンター前には、BTO対応可能なMacを展示しており、この売り場におけるMacの展示スペースを開店以来拡張したという。

「ライブネット方式」で学べるパソコン教室を店内に設置

店内に設置されているパソコン教室

ヤマダ電機の取り組みの中で見逃せないのが、パソコン教室の展開だ。これまでにも多くの販売店で、店内にパソコン教室を設置した例があったが、今でも本格的に展開しているのは、大手量販店のなかではヤマダ電機だけだといっていい。

現在、ヤマダ電機では約100店舗でパソコン教室を店内に設置。1教室あたり、6台の実習用パソコンを置いて学べるようになっている。月間の受講者数は、全国で3,000人規模となっている。

「店舗内に設置していることから、気軽に教室を覗くことができる。専門でやっているパソコン教室よりも敷居が低いのが特徴。ほぼすべての都道府県にパソコン教室を設置し、また郊外店舗にもパソコン教室を設置をしている。パソコンを学びたいが、そうした機会がないという地方都市の購入者にも好評」(ヤマダ電機IT事業本部セミナー開発室・小暮功室長)という。パソコンを見に来たついでに、あるいは他の買い物のついでに受講するといった気軽な使い方もあるようだ。

ヤマダ電機IT事業本部セミナー開発室・小暮功室長

入会金などは必要なく、1講座あたり90分で3,150円という料金設定も敷居を低くすることに効果を発揮している。もちろん、購入した際に得たポイントを、パソコン教室の受講費用に利用することもできる。「パソコンを購入して、そこで得たポイントを使って、パソコンの使い方を学習するという使い方も少なくない。購入、サポート、学習といったセット提案ができるのがヤマダ電機のパソコン販売の特徴」となっている。

ヤマダ電機 LABI品川大井町店では、他の店舗に比べてパソコン教室のスペースがやや大きく、8台の実習用パソコンを設置している。

LABI品川大井町店では8台の実習用パソコンが設置されている

カリキュラムは、ヤマダ電機が独自に開発した教材を利用。パソコンの初歩的な使い方や、Excel、WORDといったオフィス製品の使い方のほか、弥生会計やホームページビルダーといったユニークな製品群の講座も用意されている。基本的には、DVDを使用し、それを見ながら自分のペースにあわせて受講できるという仕組みだが、Macに関しては、ライブネット方式の講座方法を導入しているのが特徴だ。

ライブネット方式とは、全国のヤマダ電機の店舗にある教室のパソコンをネットで結び、全国各地の受講生が同時に受講するというものだ。

「Macや弥生会計、ホームページビルダーといった分野では、専門知識を持った講師が、全国を結んで講座を行うようにすることで、高い指導レベル、知識レベルを持つ講師による授業を、生徒が受講できるようにした。地方都市の受講者も、その場にいながら、専門知識を持った講師の指導をリアルタイムの環境で受けることができる。カリキュラムにあわせて、授業を進めるとともに、わからないところがあればチャットで質問できるようにしているのもライブネットならではの特徴」。

ライブネットでは、講師の顔が画面に映し出される

自分のペースでできるように、紙によるテキストも手渡される

1講座あたりの講師は、メインとサブの2人担当制としており、音声での説明とともに、随時チャットで受講者からの質問に回答するといったことが行われる。「教室では手をあげて質問しにくい場合でも、チャットであれば質問しやすいというメリットがある。また、質問内容や、講師の回答はすべての受講生が見られるため、受講者同士が授業中にチャットで意見を交換して、問題を解決するといったことも行われている」という。

今年4月から開始したMacを対象にしたライブネット方式のパソコン教室では、「一からはじめるMac~Windowsユーザーも必見~」「Macで写真を最大限に楽しもう!~iPhoto編」の2つの講座を用意しており、Mac初心者が操作の基礎を学んだり、デジタルカメラで撮影した画像をMacで管理するといった使い方を習得することができる。

ニューシークエンスサプライ。同社の柿岡歩氏

カリキュラムを制作したのは、東京・世田谷に本社を持つニューシークエンスサプライ。同社の柿岡歩氏は、「Macの受講者は、Windowsの講座に比べて若い人が多く、女性も多い。各センテンスごとの展開が速くなりがちだが、高齢者でも安心して受けられるようにそのバランスを取るように工夫している。より最適なカリキュラムになるよう、講師の意見や受講者の声を反映して、常に改善を加えている」と語る。

DVDによる教材作成が1講座100万円以上かかるのに対して、ライブネットによる講座の場合、より安価な投資で講座を開始できるという点も見逃せない。カリキュラム自体も随時改善が加えられること、年賀状ソフトのように毎年バージョンアップする寿命が短いソフトの講座にも適しているというメリットもある。

Macの講座も、新たな領域の講座開設の可能性として、また、今後のカリュキュラム改善などを見据えて、まずは比較的投資額が少ない、ライブネット方式を採用したという側面もあるようだ。

現在、ライブネットの受講が可能なパソコンは、ヤマダ電機 LABI品川大井町店の場合は3台。他店舗で展開している標準型のパソコン教室の場合には2台がライブネット用となっている。

「同時に受講が可能なのは全国45人まで。ただ、チャットへの返答などを考えると、効果的な受講者数は20人から30人までが目安となる」(柿岡氏)。取材した日には、「Macで写真を最大限に楽しもう!~iPhoto編」を開講しており、全国で12人が参加。自分が所有するMacを持ち込んで、受講するユーザーの姿も見られた。

この日のセミナーは「Macで写真を最大限に楽しもう!~iPhoto編」

セミナーを受講している様子

将来的には、店舗ごとに講座を企画して、ひとつの店舗の教室向けのライブネット講座を用意するといったことも行われることになりそうだ。

ヤマダ電機が、Macを題材にライブネットを活用したセミナーを企画した背景には、店頭でのMacの販売が増加していることが挙げられる。「Windowsを利用していたユーザーが、買い換えでMacを購入する例も増えている。すでにiPodを所有しているユーザーが、Macの使いやすさを求めて購入する例もある」(小暮室長)という。

ヤマダ電機全体においても、Macの売り場拡充や、専門知識を持った店員の育成には余念がない。そして、拡大するMacの販売にあわせて、Macを題材にした講座を増やしているというわけだ。「購入者からもMacの教室を用意してほしいという声が上がっていたほか、今後も、さらにMacを使ったオフィスアプリケーションの活用方法などの講座開設を求める声もある。要望を見ながら、講座内容を広げていきたい」(小暮氏)という。

パソコン教室の設置は、Macの販売においても重要な差別化要因となっている。