MacBook Airを使わないときは、液晶パネルを閉じるだけでOK。システムは電力消費量の少ない「スリープ」に入るので、いちいちシステムを終了する必要がありません。しかし、そこにはディスク容量が乏しいMacBook Air特有のデメリットも……今回は、MacBook Airのディスクスペースを増やす"おまじない"を紹介します。
ディスクスペースを4GB増やす方法がある?
現行のMacBook Air(Mid 2012)11インチの最廉価モデルは、内蔵ストレージに64GBのSSDを採用しています。読み書きのスピードはHDDに比べ圧倒的に高速ですから、電源オンからシステムの起動完了までは30秒かからない程度、アプリの起動時間も大幅に短縮されます。電力消費量もHDDより少ないとくれば、モバイル用記憶装置としてまさにうってつけです。
けれど、64GBある容量のうち約9GBはシステム(OS X)の領域として確保済です。アプリをいくつかインストールすれば、さらに数GBは覚悟しなければなりません。iTunesやiPhotoを使いはじめれば、データが増えて数百MB、数GBはあっという間に消費されます。ファイルサイズの大きい動画を取り込めばなおのこと。64GBというディスク容量には"自制心"が必要なのです。
でも、ちょっとした"おまじない"を唱えるだけで約4GB空きが増えるとしたらどうでしょう? 4GBといえば、iPhone 5と同等の8メガピクセルカメラで撮影した写真(約2.4MB)が1400枚ほど保存できる容量。音楽も、圧縮率次第では1000曲近く保存できそうです。貴重なディスクスペースが約6%増えるのですから、取り組まねばなりませんよ、多少の困難が伴うとしても。
そう、今回紹介する作業は少しばかり難易度が高いのです。「ターミナル」というアプリを使い、呪文のような「UNIXコマンド」を実行しなければなりません……しかし効果はてきめん、いちど実行してしまえばメンテナンス不要です。ひとつ注意点があるのですが、それは後ほど説明します。
「セーフスリープ」から「スリープ」へ
これから「ターミナル」を利用して行うのは、MacBook Airの「スリープ」を変更する作業です。スリープとは、システムが一時的に停止し節電状態となる動作モードのことで、MacBook Airの場合液晶パネルを閉じるとスリープ開始、開けるとスリープから復帰します。Macのスリープには3種類あり(表1)、MacBook Airの初期設定では「セーフスリープ」が適用されています。
セーフスリープは、メモリの内容(スリープ時点におけるMacのシステム状態そのもの)をまるごとディスクへ保存します。MacBook Air 11インチモデルのメモリ容量は4GBですから、SSDに4GBのファイル(スリープイメージ)が作成されるのです。スリープから復帰するときには、SSDから読み出されたスリープイメージがメモリに復元されスリープ時点の状態に戻ることができる、というしくみです。液晶パネルを閉じた直後に開くと画面が表示するまで少し待たされるのは、スリープイメージを作成しているからにほかなりません。
表1:Macのスリープの種類 | ||
0 | スリープ |
スリープ開始時はメモリ内容をディスクへ書き込まないが※、バッテリーが続くかぎり保持する。復帰時はメモリから読み込むだけなので高速、ただしバッテリーが切れた場合はシステムの再起動になる |
3 | セーフスリープ |
スリープ開始時はメモリ内容をディスクへ書き込み、メモリ内容もバッテリーが続くかぎり保持する。復帰時はメモリから読み込むだけなので高速、バッテリーが切れた場合はディスクに書き込んだ内容を読み出しメモリに復元する |
25 | ディープスリープ |
スリープ開始時はメモリ内容をディスクへ書き込み、メモリ内容は保持しない。復帰時はディスクに書き込んだ内容を読み出しメモリに復元する |
※:2012年モデル以降、Macによって動作が異なります。MacBook Airでは書き込む設定になっています(読み込まれません)。 |
Macが現在どのスリープを利用しているかを確認するには、『ターミナル』で「pmset」というパワーマネジメント関連のUNIXコマンドを利用します。pmsetコマンドにはいくつかのオプション(実行時の動作バリエーション)があり、「-g」というオプションを付けて実行することで、現在の設定を一覧できます。そのうち「hibernatemode」行に表示された値がスリープの種類を意味し、MacBook Airの場合セーフスリープの「3」が設定されているはずです。
つまり、pmsetコマンドを利用し「hibernatemode」の値を3から0に変更すれば、以降スリープしたときにはスリープイメージを作成しない「スリープ」が適用されます。実行するコマンドは以下のとおり、「sudo」以下をスペースを含め正確に入力し、行末で「return」キーを押します。すると、「Password:」と表示されるので、Mac購入時に登録したユーザ(管理者権限を持つユーザ、おそらく現在作業中のユーザです)のパスワードを入力し、「return」を押せばコマンドが実行されます。
$ sudo pmset -a hibernatemode 0
Password:
※:元に戻す場合は「sudo pmset -a hibernatemode 3」を実行します。
最後に、以下のとおりコマンドを実行し、不要となったスリープイメージを削除します。「sudo pmset~」から5分以上経過したあとに実行すると、再びパスワードの入力を促されるので注意しましょう。そのあと、スリープイメージが作成されないよう設定を変更すると、セーフスリープに比べ約4GBもSSDを広く利用できます。スリープイメージを必要としないぶん、スリープ復帰からの速度も向上します。
$ sudo rm /private/var/vm/sleepimage
$ sudo pmset -a hibernatefile /dev/null/sleepimage
※:元に戻す場合は「sudo pmset -a hibernatefile /var/vm/sleepimage」を実行します。
最後に、注意点を。「スリープ」は「セーフスリープ」とは異なり、SSDにスリープイメージを作成しませんから、スリープ中にバッテリーが切れるとメモリ上の情報が失われます。具体的には、起動中のアプリで開いている文書の状態がクリアされ、Macはシステムの再起動が必要になります。バッテリーを切らさないよう、充電のタイミングに注意しましょう。