もうすぐ春、新緑の季節がやってきます。学生は進級・進学、社会人は新年度のタイミングですから、パソコンやスマートフォンの更新を考えている方も多いのではないでしょうか。「Apple製品のある便利な生活」を目指すこの連載、今回はiPhone 5とMacをセットで使う人のために、外出先で便利な「テザリング」を紹介します。
モバイルの友「テザリング」
いまどき、喫茶店やカジュアルなレストランでノートパソコンを使うことはごく普通。それが目的で適当な飲食店に入る、という人も珍しくありません。かつては屋外でパソコンを使うことを「モバイル」などと言いましたが、ここまで日常に溶け込んでしまうと、使い方を呼び分けることに違和感を覚えてしまいますね。
でも、屋内利用とモバイルとでは決定的な違いがいくつかあります。その1つが「インターネット接続の確保」。入ったお店にWi-Fiアクセスポイントがあればラッキーなほうで、あったとしても有料だったり通信速度が遅かったり。せっかく快適なMacBook Proも、インターネットアクセスで躓いては台無しです。
そんなとき検討したいのが「テザリング」。国内向けには昨年登場したこの機能、早い話が「iPhone 5が即席モバイルルータになる」通信サービスです。基本的に有償オプションですが、ソフトバンクとau/KDDIのどちらも月額使用料が実質2年間無料になるキャンペーンを実施中ですから、iPhone 5を購入する計画があれば、公衆無線LANに新規加入するより安上がりです。なにより、携帯電話回線が通じる場所であれば、どこでもインターネット回線に接続できるわけですから、公衆無線LANより使い勝手は上です。
テザリング中のiPhone 5には、「インターネット共有:○台接続中」と表示されます(同時接続数は最大5台)。パソコン以外にも、ゲーム機やAV家電がiPhone 5を経由してインターネットに接続できます |
3種類ある接続方法、どれがいい?
テザリングの準備はかんたん。iPhone 5で「設定」を起動し、「インターネット共有」画面を開いて「インターネット共有」スイッチをオンにすれば準備完了です。あとは、Mac側でiPhone 5にWi-Fi接続する作業を行えば、iPhone 5経由でインターネットに接続できるようになります。
なお、テザリングはWi-Fi以外にBluetoothかUSBケーブル(Lightning)でも利用できます。3種類ある接続方法のうち最速はUSBケーブルで、ケーブルを持ち歩かなければならないデメリットはありますが、有線接続なだけに安定して通信できます。次に速いのがWi-Fiで、MacBookであれば「IEEE 802.11n」という高速無線LAN規格に対応していますから、USBケーブルとあまり変わらない速度で通信できます。面倒のないワイヤレスですから、通常はWi-Fiを選択すればいいでしょう。
Bluetooth接続は、Wi-FiとUSBケーブルに比べると通信速度は劣ります。しかも最初に「ペアリング」と呼ばれる登録作業をしなければならないので、少々手間取るかもしれません。しかし、いちどペアリングしてしまえば、必要なときすぐにiPhone 5が検出されるのでラクに使えます。Wi-Fiはテザリングを開始するとき接続がうまくいかない -- iPhone 5をアクセスポイントとしてすばやく検出できない -- ことがあるため、スピードは犠牲になるけれど"すぐつながるワイヤレス"のBluetoothを好む人も少なくありません。
3種類あるテザリングの接続方法 | ||
---|---|---|
接続経路 | ワイヤレス | 速度 |
Wi-Fi | ○ | ○ |
Bluetooth | ○ | △ |
USBケーブル | × | ◎ |
テザリングのここに注意!
iPhone 5で携帯電話回線(3G/LTE)を利用できる状況にあれば、いつでもMacからインターネット接続できる便利なテザリング機能ですが、利用にあたり注意点が3つあります。
ひとつは、「使いたい放題ではない」ことです。iPhone 5向けにテザリングサービスを提供しているソフトバンクとau/KDDIのどちらも、1ヶ月の通信量(パケット量)が7GBを超えた場合、その月末まで通信速度を最大128kbpsに制限します。128kbpsといえば、3G回線で一般的な速度(めやすとして下り1Mbps以上)の10分の1程度ですから、かなりのダメージと言っていいでしょう。
このペナルティは、テザリング時だけでなくiPhone 5単独でインターネット接続しているときにも適用されるため、メールの送受信などいろいろな場面に影響します。いまどき1ページあたり数MBというWebサイトは少なくありませんし、ファイルのダウンロードやメールで添付ファイルを送信すれば、あっという間に7GBに到達しますから、まめに通信量をチェックしましょう。
2つめは、テザリング中の電力消費量が増えることです。iPhone 5単独のときより飛び交うパケット量が増えますから、それだけよぶんに電力がかかります。インターネットとパケットをやり取りしていない間も、パソコンからの指示を待たなければならないため、待機電力も発生します。
3つめは、au版iPhone 5はテザリング中の音声通話ができないことです。テザリング中に着信があった場合は通話が優先され、通話終了までデータ通信は途切れます(その後自動的に再開されます)。これはau/KDDIが採用している通信規格の仕様によるもので、そもそも通話しながらのデータ通信には対応していません。ソフトバンク版iPhoneは、異なる規格(W-CDMA)を採用していますから、通話の間も途切れることなくテザリングを続けることができます。