本連載を参考にマンション購入を検討している方は、物件のパンフレットを取り寄せたり、ネットでいろいろ情報を収集したりして、次第に自分たちに最適な物件や地域が絞りこめたと思います。数件の具体的な候補が浮かび上がっているでしょう。

次は、いよいよ詳細にチェックする段階です。これまでに検討すべき項目を広く浅く眺めてきたと同時に、大きなトラブルに極力合わないための重要なポイントを押さえてきたと思います。具体的な物件の検討に入る前に、それらが整理されて頭に入っていることが大切です。

価格の妥当性をチェック

マンションの建設には多くの職種と多くの人の手が必要です。多くの資材も使われます。住宅産業は関連分野のすそ野が広いのです。そのために政府はいつの時代も住宅政策を経済活性化のかなめとして活用してきました。設備の一部は大量生産品かもしれませんが工事費の大部分はその都度作り上げていくものが占めています。販売価格はその積み重ねです。他のマンションと比較して極端に差は生じにくいのです。

従って割安感があると何かしらに問題がある可能性があるのです。本連載の2回目「自分でできる事前調査」で述べた"崖の下"のマンションのようなケースや耐震偽造マンションのように価格の割には広い間取りが魅力だった例もあります。割安物件だと感じれば、その理由を納得いくまで確認ください。

マンションの販売価格は土地と建物価格の合算ですので、土地代と建築費を分けて考えるとわかりやすくなります。土地の販売には消費税はかかりませんので、消費税から建築費を把握できます。比率はある程度販売会社の裁量部分もあるので正確ではないかもしれませんが、建築費が極端に安いとやや不安です。

基本性能を比較する

東京都や横浜市などではマンションの性能表示制度があります。下記は東京都の表示マークの例ですが、5つの項目があります。ポイントは建物の長寿命化の部分です。他の項目よりも長寿命化の方が重要なのは明らかです。星マークが1つのところもあれば3つのところもあります。コストがかかるので、3つ星は少ないと思います。1つ星マークのマンションが問題というわけではありませんが、それぞれどのような性能になっているかは把握する必要があります。そのほかに国の性能評価制度を利用したマンションもあります。

利便性のチェック

自分たちのニーズに合わせてチェックリストを作ってみましょう。下記の表は1例で、項目は自分たちのニーズに合わせて増減してください。ポイントは現在のニーズだけでなく、老後のことも考える点です。高齢になってもできるだけ自立した生活を行うためには、いろいろな施設が近くにあることはとても重要です。

共用部分・住戸内の設備のチェック

環境のチェックとともに建物の設備や仕様もチェックしましょう。自分たちが気になる設備等を表にして評価します。下記の表はその1例です。環境と同時に建物や住戸のチェックも先々のことを考えて項目を拾い出してください。高齢になると自室に長くいるのでコンセント等がベッド周りにたくさん必要です。また、在宅で仕事をする場合はデスク周りにコンセントがいろいろ必要です。打ち合わせを自宅で行うことも想定する必要があります。玄関近くにワークスペースとトイレなどがある間取りだと、生活感のあるスペースと分けられます。また、マンションのエントランスにソファ等が設置されていると、来客者が時間調整に使ったりできます。

環境や設備をチェックするときは、そのものではなく、それを通じた生活をイメージして考えるのがポイントです。チェック項目はできるだけ多くリストアップするほうが良いのですが、個々の設備の有無や性能ではなく、生活シーンを思い浮かべて選択することが大切です。できれば高齢化した時もイメージすれば、長く快適に暮らしていけるはずです。

<著者プロフィール>

佐藤 章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。

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