住まいは一生の財産です。頭金として相当の金額を準備しなければなりませんし、多額の住宅ローンを数10年間にわたって返済していかなければなりません。それだけに、慎重に自分たちに最適なマンションを選び取るには相当のエネルギーが必要です。
大切な財産のためには自ら労力を費やすことが大切です。幸いにも現在は多くの情報がネット上にあふれています。現地に出向くまでもなく確認できることが多くあります。ネットをフル活用して労力を少なく、かつ多くの情報を集めましょう。
ネットで環境チェック(地盤・環境) - Google mapで周辺チェック
横浜市のマンションで裏山が崩れ3階まで埋まった事故がありました。敷地の裏は高さ53mのほぼ絶壁に近い崖です。8階建てのマンションの2.5倍の高さです。このような敷地のため、横浜市は当初建築を許可しませんでした。その後建物の位置を修正したり、建物の裏側の構造を補強したりしてようやく確認申請が許可されました。
結局崖は崩れてマンションの一部は3階まで埋まりました。幸いに誰もけがはしませんでしたし、崖側の構造を補強したためにさほど建物の損傷もなかったようですが、リスクの大きなマンションと言わざるを得ません。死傷者がいなかったのは、その時その場に人がいなかったという偶然です。そうした敷地条件が悪かったので、相場よりも安く販売され、多くの若い夫婦が購入したそうですが、このようなところで子育てするリスクをどう考えているのでしょうか。
現地を出向くまでもなく、ネットを検索すれば、このようなリスクの存在は簡単にわかります。戸建中古住宅や土地などの相談をよく受けますが、ネットを検索するだけで、「隣の敷地は危険なコンクリートブロックで高くかさ上げされていて危険」などの状況は簡単にチェックできます。
土盛りは鉄筋コンクリートの擁壁か間知石などの所定のもので作られていなければならず、原則コンクリートブロックでは土留めはできないのです。鉄筋コンクリートの擁壁も構造計算書とともに水抜き穴など詳細の仕様が決められています。水抜き穴のない違法な擁壁もたくさん存在します。水抜き穴がないこともわかるかもしれません。
ハザードマップをチェックしよう
全国どの地域でも、自治体はその地域に発生するかもしれない災害に対するハザードマップを作成し、ネットで公開しています。地震、津波、延焼、河川の氾濫、崖崩れ、土砂崩れ、津波、下水の氾濫、液状化など様々です。
住まいは安全でも地域が安全でなければ、登下校中や公園などで遊んでいる子供たちに被害が及ばないとも限りません。そうした地域を避けるか、万一の時の行動について日ごろから徹底的に訓練する必要があります。
釜石市では子供たちへの徹底した防災教育を行い、その結果、東日本大震災では99.8%の子供たちが助かり「釜石の奇跡」と言われています。災害の状況は住まい選びには重要な要素です。東日本大震災では沿岸部の土地には住めなくなり、高台の造成地に移転せざるを得なくなっている地域もあります。これから住むところを考えるのであれば、初めから防災面を考えて安全なところを選ぶべきだと思います。
下記は東京の新宿区の都庁付近の洪水ハザードマップです。都庁エリアはもともと淀橋浄水場だったので本来の地盤は低かったのです。現在は立体構造となっていますが、都庁と新宿中央公園の間の水色の部分は1階の軒下まで浸水となっています。新宿区にはそのほかに地震と土砂災害のハザードマップがあります。マンションでも1・2階は洪水面では要注意なのです。東京都の沿岸部と河川流域は最大2.5m程度の津波高と推測されています。首都圏も沿岸部に多くの高層マンションが林立していますが、1階は要注意です。
地盤をチェックしよう
マンションはよほど地盤がよく低層マンションでない限り、杭が支持地盤まで打たれています。杭が支持地盤まで到達していない欠陥マンションが報告されましたが、見えなくなっている不部分の施工ミスは誰も見つけることはできません。 不具合が生じて初めて判明するのです。そのために土地や戸建て住宅を購入するときは別ですが、マンションを購入する際は地盤のチェックはあまり意味がないかもしれませんが、自分たちがどのような地域に住むのかを知ることは大切です。マンションは損傷がなくても、周辺は大きな被害が発生するかもしれません・その時にそれに巻き込まれるリスクもあるのです。地盤の情報は専門的な部分もありますが、住宅地盤情報提供システム(GEODAS)の無料の情報でもかなりのことがわかります。
またネットに掲載されている地図サービスの中には古地図を掲示しているものもあります。昔はどんな地域だったかもわかります。
地域の防犯上の安全性や学校・病院・スーパー・公園などの利便性なども調べておきましょう。老後までそのまま住み続ける計画であるなら、病院や日常の施設が近いことは大切なことです。この段階ではあまり神経質にならず、広く浅く眺め、見極める力を養うことがポイントです。
<著者プロフィール>
佐藤 章子
一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
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