最近、シングル女性のマンション購入が増えている―― みなさんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。いまいち実感の湧かない方もいらっしゃるかもしれませんが、一部のキャリアウーマンに限った話ではありません。私が代表を務める「女性のための快適住まいづくり研究会」への入会人数も年々増加しています。
女性のマンション購入を後押しする要因としては、住宅ローン金利が1%以下と非常に低いことが主な要因です。また、ディベロッパーも女性を意識した1LDK~2LDKのいわゆる「コンパクトマンション」を相次いで企画・分譲していることが挙げられます。また、部屋の専有面積が30平米以上でフラット35などの住宅ローンが使えるようになったことなども相まってのことでしょう。
さらに金融機関は女性に対して「無理な計画を立てない」「購入後にきっちり返済する」と判断し、積極的な傾向も見られるのです。りそな銀行の「凛next」や三井住友信託銀行の「エグゼリーナ」など女性のための住宅ローンや特典のついた商品も登場し、女性がローンを安心して組みやすくなっています。
ただ「マンションを購入したい」という願望自体は、ここ数年で女性たちに芽生えたものではない、というのが私の考えです。
私は女性のマンション購入のノウハウを教えるセミナーやマンションコンサルティングを手掛ける一般社団法人を26年前に立ち上げました。初めて私がマンションを購入した33年前、シングル女性がマンションを購入することはかなり珍しく、周囲からの理解を得られない時代でした。一方で、「私と同じように苦い思いをする女性を減らしたい!」と始めた女性向けセミナーは初回から会場には100人が詰めかける盛況ぶり。当時から、購入の夢はみんなが持っているのだと実感し、大変うれしく思いました。現在も途切れることなく毎月約400~500人がセミナーを訪れています。こうした経験を踏まえると「やっと制度や商品が女性のニーズに追いついてきた」という印象です。
そして、私が大学を卒業して働き始めた37年前とは女性に対する世の中の考え方が変わったことも購入の追い風となっているのでしょう。女性活躍が叫ばれ、女性が働くことへの理解も進んでいます。女性も男性と同じように活躍できるポジションを与えられ、以前は潜在的に持っていた、「いつまで働けるのだろうか」という不安がなくなり、産休や育休などの制度も充実し、長く安定的に働ける環境が整ったことが女性に「マンション購入」という新たな選択肢をもたらしているのです。
ここで、2016年5月に実施したマンションを購入した女性へのアンケートを少し紹介させていただきます。
マンションを購入する女性の年収のボリュームゾーンは500万前後、また年収200万円台の女性でも購入に至っています。つまり、マンション購入は一部の特別な女性のみが持つ夢ではなく、現代の自立した女性によるひとつの選択であり、価値観の変化が分かります。また、マンションを購入した理由を見ても、2人に1人は「資産として残せる」、4人に1人は「将来的に貸して家賃収入を得たいと思った」との回答。将来を見越したマンション投資を考えている女性が多いことも見て取れ、かつて誰かの家に入ることが主流だった日本女性の感覚も、ずいぶん変わってきました。2017年下期は、コンパクトマンションの発売も増えさらに魅力的な市場になることでしょう。
いまやマンションを購入することは男性だけの特権ではありません。自宅での時間を有意義に過ごすことで、明日への活力もわいてくると思います。男性も、女性も、25歳になったら自分にとって一番快適な住まいとは何か、いつが自身の買い時なのか、一度考えてみてはいかがでしょうか。
次回は、マンション購入時に見落としがちな視点や簡単にできる資金計画の方法、購入までの6つのステップを具体的にご紹介していきます。
執筆者プロフィール : 小島ひろ美
一般社団法人 女性のための快適住まいづくり研究会 代表。1957年福岡県生まれ。関西学院大学商学部卒 ライフスタイル・コーディネーター、宅地建物取引士、相続診断士。26歳の時にマンション購入で苦労した経験をいかし、"女性がマンション購入の夢を実現できる世の中にしたい”と1991年に研究会を設立。
以降、「女性のためのかしこいマンション購入術講座」で、今までに8万6,000人以上の女性たちに800回以上の講演を行いながら、27年間に渡り女性のマンション購入を応援し、第一線で活躍中。著書「シングル女性の(特)マンション選び」(講談社)、「元気になる!幸せマンション購入術」(アスコム)、他多数。
・『女性のための快適住まいづくり研究会』 https://kaiteki.gr.jp/
・「女性のためのかしこいマンション購入術講座 https://kaiteki.gr.jp/seminar/lp.php