旅と食は欠かせないつながりを持っている。あちこちロケに行く度にそう思っている。その食を育てているのが豊かな山や川、そして海。この天からの恵みに感謝する心を持って、祭りとしている。子々孫々まで伝えなければならない教え。これが祭りの礎になり、それが土地に根付いて文化と呼ぶものになるのだろう。

  • 毎年7月31日~8月4日に青森県八戸市で行われる「八戸三社大祭」。豪華絢爛な山車が舞う華やかな祭りだが、八戸の祭りはこれだけではない!

    毎年7月31日~8月4日に青森県八戸市で行われる「八戸三社大祭」。豪華絢爛な山車が舞う華やかな祭りだが、八戸の祭りはこれだけではない!

祭りという一大行事の前では、老いも若きも男も女も心はひとつ。みんなで汗をかいてみんなで笑い、みんなでおなかいっぱいになれば、これ以上に幸せなことはないだろう。そんな祭りと食をテーマに、青森・八戸の祭りをイチオシグルメたちと紹介しよう。

1杯一律500円! さらに祭りへ支援もできる!?

何の祭りからか……というところだが、まずは祭りと相性が良さそうな「神社エール」を提供している洋酒喫茶「プリンス」にうかがった。

  • 洋酒喫茶「プリンス」は地元の人々の社交場だ

    洋酒喫茶「プリンス」は地元の人々の社交場だ

こちらのお店は、八戸通のライターさんから仕入れた情報で、一度お邪魔してみたいお店だった。長横町れんさ街に昭和32(1957)年に開業、先代のお父さんの代から引き継ぎ61年。もはや八戸の夜の番人だ。どのドリンクもほぼ一律一杯500円。

  • 「神社エール」(500円)。100円は八戸三社大祭に寄付される

    「神社エール」(500円)。100円は八戸三社大祭に寄付される

前出の神社エールも、もちろん500円だ。神社エールは、毎年7月31日~8月4日に八戸市中心街で開催される「八戸三社大祭」を応援する目的で作ったカクテルで、この1杯500円という激安な価格から、更に100円をお祭りに寄付する仕組みになっている。

筆者も例に漏れず、神社エールを頼んでカウンターに座った。そのネーミングからして、ジンジャー(生姜)が入っているのかなと思ったが、ベースはジンで、その中にレモンと炭酸の刺激が生きた、スッキリした飲み口だった。神社エールはノンアルコール版もある。

ここで知り合ったのが、八戸三社大祭山車祭行事保存会会長と八戸山車振興会会長(山車を作る27の組の会長)を兼任している小笠原修さんだ。筆者たちが取材で青森に来ていることを伝えると、「今ちょうど山車作りの最盛期なんだ、見に行こう!」と、立ち上がり、内丸山車組に案内してくれた。

  • 左中央が、八戸三社大祭山車祭行事保存会会長と八戸山車振興会会長を兼任している小笠原修さん

    左中央が、八戸三社大祭山車祭行事保存会会長と八戸山車振興会会長を兼任している小笠原修さん

●information
洋酒喫茶「プリンス」
住所: 青森県八戸市長横町18れんさ街
アクセス: JR八戸線「本八戸駅」から徒歩12分
営業時間: 17:00~24:00
定休日: 不定休

毎年毎年、1番を目指して作りこむ

突然の訪問にも関わらず、会長の下村豊さんをはじめ、内丸山車組の人たちは温かく迎えてくれた。

  • 右端が内丸親睦会会長の下村豊さん

    右端が内丸親睦会会長の下村豊さん

著者: 「急に押しかけてすみません! ……これは、想像よりすごい大きい! みなさん業者の方なんですか?」

下村会長: 「はっはっはっは。何言ってるんだよ、みんな町の青年だよ。夜集まってコツコツ作っているんだよ、みんな普段は全然違う仕事をしているんだよ! 幅8m×高さ10mぐらいになるんだよ」

  • 夜に集まって、幅8m×高さ10mの山車をコツコツ作る

    夜に集まって、幅8m×高さ10mの山車をコツコツ作る

著者: 「嘘でしょ!? すごいクオリティなんですけど」

下村会長: 「毎年作ってるからね~。だんだん上手になるんだよ」

著者: 「え? 毎年? 毎年変えてるの? 一度作ったら10年ぐらい使わないともったいないじゃないですか」

下村会長: 「人形を動かしたり、山車を高く上げたりするからくりを付けて、山車を生き生きと動かす工夫を盛り込んで、その年の一番を決めるんだよ。負けると悔しいから、毎年負けないぞ~ってみんなすごいの作るから、結局毎年作ることになっちゃったんじゃないかなぁ」

  • 1番を目指し、毎年毎年、新しい山車に作り変える

小笠原会長: 「ちなみに、去年はこの『内丸山車組』が秀作を受賞したんだよ」

著者: 「え~~~~!? すごいじゃないですか」

そんな話をしていると、内丸山車組のメンバーは東京から来た私たちに、祭りで歌われる祭り音頭を披露してくれた。こうやって歌い継がれているんだと思ったら目頭が熱くなる思いだった。

小笠原会長: 「伝統を引き継いでいかないといけないんだよ。地域が元気になれば、経済もまわっていく。子どもにもたくさん参加してもらって、地域の人にももっと大事にしてもらって応援してもらいたい文化なんだよ。ユネスコに登録されて、やっと自分たちの祭りのすごさに気がついた。地域の人が大事に思うようになった」

小笠原会長と下村会長の祭りにかける熱い気持ちを聞き、筆者は八戸三社大祭の時期に再び八戸に戻ることを心に決めた。

※記事中の情報は2017年6月取材時のもの
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