皆さんも、上司との評価面談を行っていると思います。企業に属する人間として避けては通れない評価との付き合い方について解説します。

評価は、会社側、経営者側にとっても永遠の課題です。各社試行錯誤して、定量評価、定性評価、成果主義とインセンティブ評価など、様々な評価方法を模索しています。

人事評価のためには「個人の成果」を測定しなければなりませんが、これは非常に難しいことです。

大半の会社はチーム単位で仕事を進めますし、所属部署や所属チームによって役割も異なるからです。その成果が個人の努力によるものなのか、外的な要因によって得られたもの(得られなかったもの)なのかを正確に測って評価をすることには限界があります。

  • 会社からの評価は適切?

評価のゴールは「納得感」

社会人経験28年、会社経営を16年やってきた僕の現時点でのファイナルアンサーは、「良いときはみんなで喜ぶ、ダメだったときはみんなで反省する」という極めて集団主義的な評価思想です。

もちろん、個人の成果はちゃんと評価します。学歴、年齢、性別、職歴、社歴にかかわらず、ちゃんと努力し、成果を出した個人には抜擢人事をするし、昇給させます。

でも、その成果とは、あくまでチーム、組織、全社に対してポジティブフィードバックを与えたか、会社のパーパスを具現化する成果を上げたかどうかであり、単に個人の目標達成率○%というものだけではありません。

そして、全社の年間予算目標を達成したときの賞与の分配も、部署間やチーム間の傾斜はほとんどつけません。理由は、先に述べた通り、部署間による事業ポートフォリオ(売りやすさ、売りにくさ、既存サービス、新規サービス)に違いがあるからです。これも、「良いときはみんなで喜ぶ、ダメなときはみんなで反省する」という思想によるものです。

評価システムに正解はありません。100の会社があれば、100人の経営者がいて、100通りの思想があり、それが評価システムと連動します 。

評価の妥当性や納得感もとても大切ですが、そもそもその根底にある思想に共感ができているのかを考えてみることも重要です。もし、大きなギャップがあるならば、それは評価システムの問題ではなく、今いる会社そのものと合っていない可能性もあるということです。

何だかんだ言って、今いる会社を信頼しているか、今いる会社が好きかどうか。結局、最後はそこなのかな、と思うのです。

短期的な損得ではなく人生の生涯所得で考える

評価は重要です。なぜなら、会社や他者から見て、自分ができているのか、できていないのかを客観的に把握することができる貴重な機会だからです。

しかし、多くの人はその評価に不満を抱いてしまう。人によっては、健全な状態に返って来られないほど、ダークサイドに堕ちてしまう。とてももったいないことです。

今まで多くの人を見てきましたが、生涯所得が大きくなっている人は、ほぼ例外なく(評価に不満は持ったとしても)過度に憤らない、根に持たない、グチグチ言わないという共通項があります。

「いつか必ず評価される」という確信があるのでしょう。そのため、会社や上司との関係が修復不能なほど悪くはならず、仮に転職する際、リファレンスチェック(前職での働きぶりがどうだったのか、内定を出す前などに前職の会社へヒアリングを行うこと)が入っても良好な回答が得られています。

生涯所得を最大にすることが「1つのゴール」ならば、今期評価の結果は単なる手段です。その手段(評価の結果)にこだわりすぎて、ネガティブなオーラを出していると、昇給のチャンスが逃げていくというパラドックスが発生するのです。評価にこだわりすぎる人は、注意してください。

つらくてもダークサイドに堕ちるな

評価の結果だけでなく、仕事をしていれば辛いことは少なからず発生します。でも、決してダークサイドには堕ちないでください。

会社や上司にネガティブな感情を抱いている人は、特有の臭いを発します。その臭いは、同様の臭いを発している人を近づけ、群れていきます。仕事中に会社や上司の悪口をチャットしたり、飲みにいっては噂話やグチで盛り上がったり。

でも、このグループに入ったら、一巻の終わりです。会社や上司の目は節穴ではありません。誰がそんな人に重要な仕事をまかせるでしょうか。誰がそんな人を昇進・昇格・昇給させるでしょうか。

かくして、ダークサイドに堕ちた人たちは徐々に居心地が悪くなり、その会社を去ることになります。しかし問題はここからです。会社や上司の悪口を言っていたダークサイドに堕ちた人たちは、次の会社で健全に活躍すると思いますか。

そうです。多くの人は、また同じことを繰り返してしまうのです。

ダークサイドに堕ちるのは、会社や上司のせいもあるのでしょうが、大半は「その人の思考」に問題があるのです。

不満は「自分が変わる」か「自分で動く」か「辞めるか」でしか解消しない

「人は変えられない。だから自分が変わるしかない」という言葉があります。会社や上司に不満があるとき、取れる手段は3つしかありません。「自分が変わる」か、「自分で(改善のために)動く」か、「辞めるか」です。

現状を改善するために自分が動くほどこの会社に価値があるとは思えないのであれば、ダークサイドに堕ちるまでもなく、辞めれば良いのです。あなたが優秀であれば、この売り手市場の環境下、行き先はたくさんあるでしょう。

「会社や仲間は好きだから辞めたいわけではない」のであれば、自分が変わるか、改善のために行動するしかありません。不満を持っているときは、「悩んでいるとき」と似ています。「悩むな、考えろ」という言葉がありますが、人は悩んでいるとき、「悩むために悩む」ループにとらわれがちです。

「考えることなく、思考停止の状態で、悩みつづける」 これでは悩みはいつまでも解消することはありません。

「何が不満なのか?」「なぜ不満なのか?」「では、どうするか?」と考えるのです。すると、先ほど紹介した3つしか、不満を解消する方法がないことに気づきます。不満がある人は、「考えて」みましょう。

最後に。「辛いから会社を辞める」場合は、逃げるように辞めないでください。その辞め方はクセになります。ゲームのリセットボタンを押すように、イヤなら辞める。これは当人にとってよくありません。辞めるときも、自身と、会社と、しっかり向き合って辞めるようにしてください。

もちろん、ブラックな会社、ハラスメントに苦しめられた会社の場合は別です。一刻も早く逃げてください。

著者プロフィール:池田紀行(いけだ・のりゆき)

株式会社トライバルメディアハウス 代表取締役社長。300社を超える大手企業の広告宣伝・PR・マーケティング部に対するデジタルマーケティングやソーシャルメディアマーケティングの支援実績を持つ。『自分を育てる「働き方」ノート』(WAVE出版)など著書多数。