最近よく聞く「アンガ―マネジメント」という言葉。自分の怒りを管理するには、何が必要なのだろうか? 日本アンガーマネジメント協会 代表理事の安藤俊介さんにお話を伺った短期連載の最終回。

自分の「べき」が裏切られると、怒ってしまう

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事 安藤俊介さん

――最近は「アンガーマネジメント」のニーズが高まっていると感じますか?

多いですね。理由としては、前回話に出た「褒める文化」の反動が一つ。もう一つは価値観の多様化です。価値観とは、言葉を変えると「べき」なんです。

昔は、なんとなくみんなが共有する大きな「べき」がありました。会社に行ったら新人が早く来るべきだし、上司より早く帰るべきではないし、一生そこで働くべきだ。ところが今は社会として色々な働き方を許容しようと努力しているところなんですね。だけど現実的には全然ついていけていない人が多い。だから「べき」同士がぶつかり、イライラする機会が多いのでしょう。

社会が多様化していくのはいいことですが、同時に進めなければいけないのは、多様性を受け入れるメンタルをつくる努力。みんなで努力していかないと、どうしようもないですね。

「多様化を受け入れるべき!」と思ったら、今度は受け入れない人に怒ってしまう気も…

「受け入れるべき」と言う人と「受け入れないべき」と言う人は同じレベルにしかいないですね(笑)。受け入れられない人もいるよね、でもどういう努力をしたらいいかな、と考えていけばいいんです。

すぐ怒る人は怒られ弱い!?

――努力の方向性をつかむ方法はあるんですか?

自分がどういう「べき」を持っているのか書き出してみましょう。僕がよくやるのは、白いごはんのおかずとしての三重丸です。

三重丸の図。(1)「価値観が同じ」(2)「受け入れられるもの」(3)「受け入れられないもの」という構成になっている

例えば、お好み焼きってどれですか? ぼくは(3)です。関西だと「お好み焼き定食」があるらしいですが、許せませんね(笑)。クリームシチューは(1)、おでんは(3)です。おでんはおつまみですから、ごはんのおかずとして出されちゃうと……。小籠包も(3)です。点心ですから! ……これを人と一緒にやると、けっこう違うものだなと理解できるんですよ。

そういうものを自分で知っておくことが大切です。良い悪いではありません。ただ、人と違うってことなんです。ごはんのおかずの「べき」は小さいことですが、恋人や夫婦間では意外と大きな問題となることがありますよね。我々がよく「こんなの普通でしょ」と言うのは、自分の(1)(2)(3)を主張しているだけなんですよ。

――マジョリティ、マイノリティかは関係なく、誰もが自分の「べき」を主張しているだけなんですね

会社では、1回の研修でみんなだいぶ楽になるんですよ。チームビルディングでも使えます。どうしたら(3)を(2)に、(2)を(1)にするか考えていくことができるわけです。

――これは一人ひとりがいつも考えていないと、方法論だけを知っていても役立てられないかもしれないですね

アンガーマネジメントって、スポーツと似ています。やり方を教われば理解はできるんですが、上達するかは練習次第なんです。サッカーで言えば、誰もがボールを蹴ることはできます。それがプロ級まで行く人もいれば、蹴るだけの人もいる。それと同じですね。日々ちょっとずつ考えてもらえればいいかな、と思っています。

――ありがとうございました


<プロフィール>
日本アンガ―マネジメント協会
日本アンガーマネジメント協会は、ニューヨークに本部をおく「ナショナルアンガーマネジメント協会」の日本支部。教育現場から企業まで幅広く講演、企業研修、セミナー、コーチングなどに日々奮闘している。また、アンガーマネジメントのトレーナーの育成にも力をいれている。