自分の怒りを管理する……「アンガ―マネジメント」が今、注目を受けている。日本アンガーマネジメント協会 代表理事の安藤俊介さんにお話を伺った。

怒ると、エラーの確率があがる!

――怒る人の方が、得をしているような時もありませんか? 「ごね得」といったような…

たしかに、いますね(笑)。ただ、怒る機会が増えてしまうと、失敗する確率が高くなります。

――怒ると失敗の確率はあがるんですか?

高くなりますね。余計なことを言ってしまったりしてしまったり、やっぱりエラーをする確率はあがりますよ。

――まわりのひとも敬遠してしまいますね

例えば昨年話題になった野々村竜太郎議員、あきらかに(1)(2)が小さい。これは報道ベースで見た話ですが、過去に"ごね得"をしているようです。それで成功経験があるからとやってしまうと……もう取り返しつかないですよね。

三重丸の図。(1)「価値観が同じ」(2)「受け入れられるもの」(3)「受け入れられないもの」という構成になっている

――いつ怒ればいいのか、わからなくなってきました…

それはやっぱり、三重丸を越えたときですね。

――共通の「怒っていい」ときはなくて、個人個人によって違うのでしょうか?

正直なところ、「自分の怒りの感情とどうつきあうか」だけが我々の論点なんです。例えばそれによって会社の中ですごい不利になる状況が想像できるとして、それでも「どうしても言いたい」と思うならば、言ってみればいいと考えています。だから、道徳とは違いますね。

自分が生きやすくなるのであれば怒ればいいし、怒ることでプラスになるなら、やればいい。ただ、生きにくくなるんだったらやめた方がいいんじゃない、と常々言っています。

1秒ごとに世界で自分が1番優秀だと証明しなければいけないわけではない

――「怒る」「怒らない」を選択しなければ行けない場面は無数に出てくると思いますが、どうしたら…

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事 安藤俊介さん

自分のなかの優先順位づけなんですよね。本当に譲っていけないものは戦わなければいけないし、譲っていいなら譲ろうと決めればいい。すべての場面で勝ち負けを決めようと思うと辛くなるわけですよね。1秒ごとに世界で自分が1番優秀だと証明しなければいけないわけではないでしょう。

――優劣ゲームをしなくてもいいじゃないかと。怒ったり怒られたりするときは、勝ち負けを決める感じになっているんでしょうか?

怒る時って、本当は相手に何かを伝えたいだけなのではないでしょうか。何かを伝えるためのターボエンジンみたいなものなんですよ。

例えば「机の上を片付けてほしい」と伝えたかったら、そう言えばいいんですよね。でも、たいていの人はそのときに喜怒哀楽のどれかを乗せています。"喜"は「机の上をかたづけてくれたらすごいうれしいんだけど」、"怒"は「机を片付けろよ」、"哀"は「なんで机の上散らかってるの、すごいいやだな」、"楽"は「一緒にかたづけようよ」……そのなかで、1番通じると思うものを選びとっているんですね。

――自分が怒られて伝えられたから「やっぱり怒るのがいい、そうやって成長したんだ」という人は多い気がします

その通りです。だからどれを使うかは、自分の生活の中でどれが1番使われているかの裏返しですね。いまどきの若い子達は基本的にほめられることで成長して来た。だからほめられないと不満なわけです。ところが社会は違います。

なぜ今アンガーマネジメントに注目が集まっているかというと、この10年、日本はほめる文化だったんです。ところが10年ほめてきてわかったのが「統率がとれない」ことでした。やっぱり叱った方がいいんじゃないかと、揺り戻しがきていますね。

ところが、人というのは、実はほめても怒っても言うこときかないんですよ。なぜかというと、三重丸が動いているから。機嫌で怒ってる上司を見て思うのは「いま機嫌が悪いんだな」でスルーです(笑)。そして、機嫌で褒めてるのを見てもスルーなんです。だから、三重丸を安定させることが本当に大切なんですね。

※第4回「アンガーマネジメントとは、多様性を受け入れる努力」は1月28日更新予定です。


<プロフィール>
日本アンガ―マネジメント協会
日本アンガーマネジメント協会は、ニューヨークに本部をおく「ナショナルアンガーマネジメント協会」の日本支部。教育現場から企業まで幅広く講演、企業研修、セミナー、コーチングなどに日々奮闘している。また、アンガーマネジメントのトレーナーの育成にも力をいれている。